7
ケイから見ればバケモノである。
「おい、おい、おい。」
そんなバケモノが口を開けた。
「まさか、まさか。」
バケモノが口を開けたままケイへと突進をした。いや補食である。なんとか転がって難を逃れたケイであるが、恐怖のため震えが治まらない。
「クソが。俺はエサじゃないって!!」
ケイは選択肢がない分、行動は速かった。『英雄憑依』。これ以外に戦う方法はないのだ。
ただ誤算であったのは以前開いていた「わからない」フォルダの一番上を選択した事であった。
「ちょっ、待てよ。」
勿論スキルは待ってくれない。頭の中にアナウンスが響く。
「『虎殺しの勇士』鮑隆、憑依を実行します。」
ケイがオッサンに変化するわけではない。しかし鎧が鱗鎧へと、肩には矢筒、手には弓、腰には山刀が。憑依させた英雄に相応しい装備品が現れている。
「これは面妖な!」
ケイの口からケイの意図しない言葉が漏れた。
(え?憑依ってこうなるの?)
「頭の中で喚くな!狩りの邪魔だ!!」
会話も不自由だが可能なようだ。矢が2本放たれた。ケイにはいつ、どのように放たれたか理解ができない。放ったのはケイの体だというのに。2本の矢は的を外す事なくバケモノへと当たる。だが体表を覆う粘液によって体へと突き刺さる事はなかった。
「ぬう!!」
バケモノは再び口を開けて突撃を開始した。鮑隆は大山椒魚から目を離さぬまま木を蹴り、樹上へと登る。
キリキリキリ
足をひろげて腰を落とし、体を斜にして弓を引き絞る。ハッと放たれた矢はケイを探していたバケモノの右目を貫く。
「相手が悪いと知るがいい。桂陽の鮑隆。貴様を狩る者の名よ。」
バケモノは右目を貫かれた痛みでのたうち回っている。声なき声。口を開けて叫んでいるようでもあった。そこへ充分に引き絞った矢が吸い込まれ、命を奪った。
ビクン!ビクン!!
痙攣をしている巨大なバケモノが横たわっている。
「まだだ。ケモノは最後が恐ろしい。確実に死ぬまでは油断してはならぬ。」
樹上から降りる事なく、目を逸らさず。冷徹に死を看取る狩人。それはバケモノが動かなくなるまで続いた。
「レベルがアップしました。体力が2上がりました。筋力が2上がりました。速度が2上がりました。魔力が2上がりました。精神が2上がりました。運が2上がりました。成長促進スキルにより加算されます。レベルが上がり・・・。」
頭の中にアナウンスが流れる。こうして何もしないままケイの初戦闘は終わりを告げた。
名前:ケイ
性別:男
年齢:16
レベル:8
HP:695
MP:655
体力 39
筋力 39
速度 40
魔力 31
精神 31
運 31
限界突破
成長促進
魔の核
降魔の支配
英雄憑依
薬草の知識
薬学の知識
手当て
修復魔法