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3

走り出した少年を見て、女騎士カノン・ビールは安心した。騎士たる者、弱き者を護らねばならない。護るべき者を目の前で殺されては無念だった。

「曰く付きの者と若輩者で新設された50の連合騎士団、私と国は意地を見せれただろうか。」

没落した騎士家であるビール家は、カノンが任務に志願した事で借金を完済した。後は幼い弟に任せるしかない。


ヒノモトのシノクニで行われた戦闘は無惨だった。移動中の遭遇戦で不意をつかれたのもあった。第37騎士団単独という不幸もあった。多くの者が死に、殿(しんがり)を残して敗走。いや、逃げたのだ。追い付かれた者が殿になったにすぎない。

ただ、カノンの名誉のために言えばカノンは戦っていたのだ。初陣の者達が恐怖で逃げ出し、集団での戦闘が不可能となったために逃げざるえなかった。カノン自身も初陣でありながら見事に戦ったと言える。


草を踏む音が聞こえる。小枝が折れる音がする。近付いてくる。近付いてくる。

「死にたくない、死にたくない・・・。」

今なら解る。無様な自分を他人に見せたくなかったのだ。死に怯える自分に気付きたくなかったのだ。

「死にたくない、死にたくない・・。」

戦闘の恐怖に耐えたカノンであったが、死の足音に失禁をしてしまう。涙が溢れる。ガサガサという音は更に近付いてくる。

「死にたくない!死にたくない!!」

現れたのは逃げたはずの少年であった。



「服を脱いで!!」

オトギリソウとヨモギを揉み、液が染み出すまで捏ねる。

「早く脱いで!!」

止血の作用がある草花だ。殺菌作用もある。

「わ、私は騎士だ!力には屈しない!それに体は傷だらけで、欲情など・・。」

「止血するから服ぬげや!」

「へ?」

「時間がないだろ!!」

「え?いや、あの、その。心の準備が。」

鎮静作用のある薬草を騎士の口の中に投げ込む。

「それを噛んどけ。苦みがあるけど吐き出すなよ?鎮静薬だ。」

モゴモゴ言っているが聞き取れるはずがない。血を失った上に疲労も重なり、女騎士の抵抗はない。金属鎧の脱がし方など知らないケイは悪戦苦闘しつつも鎧と鎖帷子を脱がせる。

その下にはゴムのように弾力性のあるスポーツブラ、スパッツのような格好であった。その生地は見たこともない。

止血・殺菌用の薬草を揉み、傷口に塗布して布地で覆う。ここまでだ。乾燥させた薬草や必要な道具、時間があるわけではない。その場で出来る事など限られていた。


薬草を探している時に見つけた蔭へと女騎士を運び、鎧や剣も移す。治療した箇所に手を当て、『手当て』を行う。効果としては痛みの緩和や治癒の促進程度。MPが少しずつ減っていくのが分かる。夜を徹しての看病が始まろうとしていた。

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