第5話 騎士王の伝説?その1
激しい光が収まり、鏡に映っていたのは全身を鎧に包まれた私だった。
(え、コレが私?、何で鎧なんて着てるの?)
今、私が着ているのは誕生祭用に設えられた蒼を基調としたドレスであって、けっして鎧なんかじゃない。
(あ、焦らず落ち着いて観察しよう!)
鏡に映った私が着ている鎧は両腕と胸部に龍の装飾が施されていて、背中には蒼空色のマントがはためき、籠手の右手側に真紅、左手側に紫紺の宝玉がそれぞれはめ込まれ、宝玉の中には魔法陣が刻まれていた。
いかにも魔法道具です、と主張した鎧だ!
次は容姿を確認しよう、顔は凛々しい美人さんだね、髪は腰までの長さで先の方を束ねている、一番重要な胸の大きさは鎧に隠れててよく分からないけど貧乳ではないようだ。
鎧を押し上げて主張するぐらいの大きさがある。
(ヨッシャー!胸がある、板じゃない、確かな膨らみが存在してるよ…、でも、安心はできないかな?)
生活習慣によっては多少は変化する可能性がある。鏡に映っている姿はこうなりますよと言う可能性でしかないし、絶対じゃない、胸のために生活習慣には気を使おう。
(せっかく転生したのだから、貧乳にはサヨナラを告げたい、絶対に告げてやる!)
胸の大きさがそんなに重要なのかと思う輩も居るだろうが、大きさにコンプレックスを持っている女子からすればとても重要なのである。
よく小説やマンガの転生物だと、元の容姿のまま転生するか、生まれ変わったとしても、顔は変わっているのにスタイルが元のままで、怒って神さまに苦情を訴えたりするものが多々在るが。
私の場合は目つき以外は変わっているから、特に気にしていない。イナイカラネ?
「コレは、どういうことなのかな?」
「わかりません、ですがこの鎧はまさか…、いえ、そんなはずは…」
「何か知ってるの?」
「はい、この鎧は…」
「こりゃあ、伝説の騎士王の鎧じゃねえか!!」
フィリアが私の質問に答えようとした瞬間、それを遮るかのように興奮した声でリアンが質問の答えを教えれくれた、この鎧は伝説の騎士王の鎧だと。
(騎士王の鎧?、何故そんな物が父様より贈られた鏡に映っているのかな?)
騎士王で思い出すのは、前世の日本で見たアニメに登場する食いしん坊な騎士王ぐらいで、よくは知らないし、実際の騎士王がどのような人だったのか、伝説とは何かを詳しく聞く必要がありそうだ。
「その伝説って、どんな物なの?」
「それはなぁ!、俺の憧れ、二頭の龍を従えた騎士、初代エルテイシア国王の伝説だぜ!」
興奮したリアンが鼻息も荒く、私の肩をつかみ、鼻がくっつきそうな距離まで顔を近ずけて来た。
「り、リアン、顔が近いよ、落ち着いて話そう、ちゃんと聞くから離れて、お願い」
「リアン落ち着いて、姫様がお困りでしょう、は~な~れ~なぁ…、さい!」
そう言いながらフィリアは興奮したリアンにデコピンを炸裂させ軽く吹き飛ばした!
パァァン!
「ふぎゃん!」
(えーっ!何今の、デコピンってあんなふうに人を吹き飛ばすようなもんじゃないよね!)
「何すんだよ!、痛いじゃねえか!」
「リアンが姫様を困らせるから悪いのです!」
(ああ、あれ、痛いで済ませられるんだ…)
「姫様、リアンに変わり私が説明いたしますね」
「何でおめぇが説明すんだよ!」
「あなただと自分の主観を織り交ぜて説明するでしょう?」
「いいじゃねえかよ、その方がおもしれえだろ!」
「よくありません、初代様の伝説は正しくお伝えしなければ、姫様が変に伝説を解釈してしまわれるでしょ!」
(なんか2人で喧嘩を始めちゃったよ!)
言い争いで収まっている内に止めなければ、その内、殴り合いになるかもしれない。
「2人とも落ち着いて、喧嘩しちゃ駄目だよ?」
「「す、すみません」」
私が上目遣いで目を潤ませながらお願いしたらあっさりと止めてくれた。
(あれあれ?、思ったよりあっさりと止めてくれたけど何でかな?)
気にはなるが喧嘩を止めてくれたからいいよね!
自分のワガママを通す為に密かに練習していた仕草の一つが役立って良かった。