第4話 お顔を拝見!将来は凛々しく、逞しく?
フィリアが持ってきた大きな布包みの中身は姿見だった。
鏡な左右に翼を広げた龍の銀細工が向かい合う様に施されており、女の子に贈る物にしては格好良すぎるデザインでして、嫌いじゃ無いけど、寧ろ好きだけど、施されている装飾が何故、向かい合う龍なのかがすごく気になるかも?
いや、装飾のデザインが気になると言うより、龍そのものが気になる感じかな?
何で此処まで気になるのか知りたいけど、深く考えても仕方がない。
(人生、まだ先が永いし、そのうち解るかな?)
「わぁ…!!おっきな鏡だね!」
「ふふふ♪国王様が城の錬金術師に造らせた特注品なんですよ!」
「特注品?」
(わざわざ錬金術師に鏡を造らせたって事は、ただの鏡じゃなくて魔法道具の類いに違いない)
「ええ…、この鏡には面白い機能が在りまして、鏡の右側に装飾されている龍翼へ手を触れていただくと、触れた者の魔力を読み取り、自身の成長した姿を見る事が出来るのですよ」
「へぇ…、面白そうじゃねえか!」
「うんうん♪面白そうだね♪」
私とリアンは興味津々に目を輝かせながら、鏡へ視線を向け、早速、使ってみる事にした。
でも、その前に魔力を読み取らせず、そのままの状態で自分の姿を観て見よう。
「ふ~ん、私ってこんな顔してたのね」
「んん?、姫様は自分の顔を見たことがねえのかよ」
「うん!、今日が初めてだよ」
「それは仕方がありません、鏡はバルトス様、カティア様お二人の寝室に一つ、城の使用人達が使う大浴場に男湯と女湯で一つずつしか在りませんでしたから…、この鏡は姫様がお生まれになった日に贈られるはずでしたがバルトス様の提案により魔法道具に改造される事になり、お渡しするのに時間がかかってしまったのです」
(私の部屋に鏡が無かった理由が父さまにあったとは意外だ、面白い機能を付けてくれたから怒りは無いけど、もっと早く理由を知りたかったよ…)
「父さまはいったい何を考えてそんな機能を付けたのかな?」
「きっと姫様が成長した姿を少しでも早く見てみたかったのでしょうね」
「バルトス様もせっかちなもんだよな!」
「そうだね…、ちょっとせっかちすぎるよね…」
(それは置いとくとして、自分の顔をよく観察して見ようかね!)
順番に上から見ていこうか、髪は薄紅色の白金で肩より少し長く伸びている、私の髪は今世でも赤に縁があるのか。
次に目だね、なんと目の色が左右で違っている、いわゆるオッドアイだ、右目は紅玉みたいな真紅で、左目は紫水晶みたいな紫紺だね、両目とも宝石のように透き通っていてとても綺麗で、自分の目なのに思わず見とれてしまった。
相変わらず目つきは鋭いままだけど…、って、何で生まれ変わったのに鋭いままなのよ!
(あ、悪意を感じずにはいられない!!)
後は、鼻と唇だね!
鼻は普通かな?高くも無く、低くもない、ちょうどいい形と大きさ!
唇は血色のいいピンクで、リップも付けてないのにプルプルしてる、まだ2歳だし当たり前か。
顔全体を見ると、輪郭も整っていて、将来は美人さんに成長するのは間違いないだろうね!
さてと、次は鏡に触れて私が成長した姿を拝見しましょうかねぇ!
「あれ?私、魔法とか使えないけど大丈夫なのかな、魔力を根こそぎ吸い取られたりしないよね?」
「それは大丈夫ですよ、バルトス様が信頼出来る錬金術師に依頼して造らせた物ですから、万が一そのような事になっても姫様の魔力に耐えられず鏡が割れるだけですから」
「割れるだけって…」
(せっかく父さまが私の為に造らせた鏡なのにもったいないじゃない!)
「ん?、なんだ、姫様は自分の魔力が人より高く膨大なのに気ずいてねえのか?」
「リアン、それは仕方ないでしょう…、姫様はまだ2歳なのですよ、魔法に対する知識もありませんし、魔力を感じ取る感覚もわからないのも当然です」
自分が高い魔力を持っているのは転生前に女神様から聞いているだけで実感がない、魔法を学べるなら今すぐ学びたいところだ、年齢的にさせてもらえないだろうけどね!
「ねえねぇ、2人って魔法を使えるの?」
「おう、使えるぜ!俺達は姫様の護衛役だからな!」
「ええ、使えますよ!私達は姫様の護衛役ですから!」
私の質問に2人は声を揃えて答えてくれた、さすが双子、言い方が違うけど息がぴったりだね。
「じゃあ、アステルも魔法が使えるの?最近見ないんだけど」
「ああ、アステルさんは魔法を使えるが最低限の初級魔法しか使えねえぞ、魔力があんまり高くねえからな!」
「アステルですが、今は姫様の世話役から外れておられます」
「え?、何で?」
「姫様の魔力が強すぎてアステルは世話役を続けることが困難になってしまい、今はカティア様の従者をしております」
「魔力が強すぎて?」
「はい、魔力が強すぎると無自覚に周囲へ威圧感を与えてしまい、気の弱い者や神経質な者だとストレスで体調を崩し、日々の仕事に支障をきたしてしまうのです、訓練すれば抑えられるようになりますのでご安心ください」
(うわ、知らなかった、無自覚にそんな事してたんだ、私って!)
「リアン達は平気なの?」
「俺達は訓練して耐性付けてるからな!」
「平気ですよ!」
(良かった…、リアン達が居なくなったら寂しくて、私、死んじゃうかもしんない)
話が脱線してしまった、改めて鏡に触れて将来の自分を見てみよう。
「よし、改めて鏡を使ってみようか!」
私は鏡の右側に装飾されている龍翼へ手を伸ばした、次の瞬間、バチッと電気が走る感覚を手に感じ、鏡が眩い光を発した。
あまりの眩しさに思わず目を閉じてしまった。
光はすぐに収まり、フィリアが私が無事かどうか声をかけて来たところ、リアンが驚きを含んだ声で鏡を指差しながら私達に鏡を見るように言って来た。
「姫様、無事ですか?」
「うん!、ビックリしたけど大丈夫だよ」
「お、おい!、姫様、フィリア、鏡を見てみろよ!」
「これは…!?」
「なっ!」
(何コレーー!)
鏡に映っていたのは全身を鎧に包まれた、いかにも姫騎士とか姫将軍と呼ばれていそうな、成長した私だった。