第10話 ほんの少し前
一週間の壁は厚かった(ToT)
普段の仕事が忙し過ぎる!!
システィが厩舎の近くで目覚めるほんの少し前、厩舎内での様子。
「おっ!、どうやら収まった見てぇだな!」
「収まった、って、何がです~?」
「見てみな、ヒッポ達の様子を!」
キョロ、キョロ、ハムハム!
ドルケに促され、ミサツミがヒッポグリフ達の様子を見回して、観察してみると。
少し警戒しながらもヒッポグリフ達が餌を食べ始めていた。
「ドルケさん、ドルケさん、ヒッポちゃん達が餌を食べ始めてますよ~♪」
「此処に向けられてた魔圧が収まったようだぜ、ふぅ~、姫様程の魔力持ちが此処に来たらヒッポ達はパニックを起こしてヤバかったぜ!」
「姫様の魔力って、そんなにスゴいんです~?」
「ああ、誕生なされた時点で城の魔術師、特に魔力感知の優れている奴等が少しの間、突如城内に顕れた強力な魔力の持ち主が姫様だと判るまで、怯えて使い物にならなかったらしい」
「う、嘘ですよね!そうですよね!お城に勤める魔術師の方々って中級~上級の魔力を保有してて、なおかつ、国内屈指の魔力の持ち主である国王様の魔圧を受けながらの厳しい入隊訓練を乗り越えた猛者達の筈ですよ~?」
城に勤める騎士、魔術師の訓練は国王の強力な魔圧を間近に受けながら入隊訓練を2週間行う。
いうなれば、猛獣に睨まれながら訓練を行っている状態だ!
そんな状態での訓練は体力、精神力を激しく消耗する。
訓練に耐えられず、城を去る者もそれなりの数が居るし、体を壊す者も居る、それを乗り越えた者達が怯えるなどの魔力とはいかほどの物であろうか?
「それがな、姫様の魔力量が国王様の魔力よりも多いからだそうだ、しかも日々増え続けているって、噂らしいぜ!」
「エエ!?国王様よりも多いのですか、しかも、日々魔力が増え続けて居て姫様のお体は平気なのです~?」
「いや、流石に増え続けるってのは嘘だと思うぜ、なんせ姫様は毎日元気に過ごして居られるからな、だが、国王様よりも多いのは確からしい」
実際、システィの保有魔力は国王であるバルトスよりも多く、将来は優秀な魔術師にと、期待されている。
しかし、日々魔力が増え続けて居るのは噂ではなく事実だったのだが、普通であれば日々魔力が増え続ける事はない、魔力を増やすには数ヶ月もしくは数年間単位の修行が必要で、元々の素養以上に増やすことは出来ない。
日々増え続けているのであればリアン達が気が付く筈であるが、毎日の様にシスティの魔圧を受けて居るため多少の違和感は在っても、馴れてしまって居て気が付いてはいなかった。
もし、急激に魔力を増やそうとすれば暴走し、死に至る。
何故、システィの魔力は日々増え続け、暴走せず、体に異常が無いのか判明するのは少し先の事である。
ガタッ!ガタタタ……!
「「グギュエエッ!!」」
二人が話し込んで居ると突然、ヒッポグリフ達が慌てた様子で騒ぎ始めた。
「ひぃ…!突然なんなんです~?」
「まさか!?、近くに来てるのか!」
「来てるって、何がですか~?」
「ヒッポ達の様子を見れば分かるだろう、姫様だよ!」
ドルケは慌てて厩舎の入り口へと走り出し、その後を追いミサツミも走り、入り口へと向かった
「何で気付けなかったんだ!!」
「待って下さいよ~!」
元騎士で、魔力感知も多少出来るドルケが気が付く事が出来なかったのには訳がある。
常に魔圧を放って居るシスティでは在るが、眠って居る間は収まるので仕方がない。
ズッ、バァァアン!!
「居た!居やがった!」
ドルケは厩舎の入り口を勢いよく開け放ち、素早くシスティ達を見付けると、厩舎から遠ざけるために走り出した。
「ちょっと待って下さいって、言って居るじゃないですかー!!」
文句を言いつつも後ろから、ミサツミも走って行くのであった。