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ASeSiN0〜刺客〜  作者: くらしかる
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Focus aim to the Target

タイトルの読み方は"アセシノ"です^^

モノクロの世界が広がるウラル山脈。私はそこに独り。


目標捕捉、距離200。マガジンセット、コッキング。

カチッカチンと冷たい音がする。

"目標停止、敵影目標のみ。"


引き金を引く。


サイレンサーで弱音された"スパンッ"という音が周囲に響く。


目標頭部着弾確認。


"101人目、狙撃および殺害完了。"


この仕事において「殺した人数は正確に把握しているのか、カウントしているのか」という質問はあまりにありきたりだ。この野暮な質問に回答するなれば、答えは"YES"だ。全員というわけでもないが、どうやって殺したかもほとんど覚えている。例え千人殺そうと、それは変わらないだろう。いや、変えるわけにはいかない。


2016年、突然訪れた恐慌に世界は絶望のどん底に突き落とされた。人々は互いに騙し、蹴落とし、憎みあった。そして、挙句の果てには互いに殺しあった。政府は権力を失い、最初は使命感のままに動いていた警察も汚職に手を染め、一部は武装組織になり果てた。ライフラインは辛うじて機能してるが、それもいつ切れてもおかしくない。というか、なぜ機能してるのかが都市伝説級なのだ。

こんな世界で信用できるもの....?金?そんなちり紙に価値なんてない。人?こんなもの信用している奴から死んでいく。

この世界で信用できるもの、価値のあるもの。それは、武器だ。今や一家に一丁銃がある時代だ。10歳の少女が銃の撃ち方を知っている。9歳にして人を殺した奴もいる。こんな荒廃....いや死んだ世界に生きる人々にとって命とは賭け甲斐すらないものであり、他人の命はむしろ障害だ。

死んだ世界において、暗躍しているのは私達。殺し屋、暗殺者と言った連中だ。人を生かし、人を殺すことで食っている点では、不在の神の代理人と言ったところかもしれん。いや、悪魔の使いかな?


私の名は....いや、もう自分の名前すら忘れてしまった。ただ、一つ私の固有名詞としてこの世界にあるのはコードネームRafaga(ラファーガ)だけだ。これが唯一の私の存在である。


スナイパーライフル、L118A1をゴルフバッグに隠し、旧式の赤いミニに乗る。ここからは、運転の苦手な若い女の子だ。灰色のニット帽とピンク色のダウンに身を包み日常の生活を演じる。表情には何も出さず、ただひたすら走る。ゴーストタウンが不気味な雰囲気と共に現れる。かつての栄華は単なるコンクリートの塊にすぎなくなっていた。

パトカーとすれ違う。この交通量と人口密度を考えれば15分はバレないハズだ。

"カチン"

試しにラジオをつけてみる。ザーという無機質な音が聞こえる。

チューニングするにつれこの国で唯一活動しているラジオ局に周波数があった。

"大統領暗殺事件の首謀者が確保されました。尚、実行犯は未だ逃走中です。"

実行犯は巷では知れているプロの暗殺者だ。捕まる訳が無い。

"速報です。先ほどウラル山脈の麓の街で男性が射殺されているのが見つかりました。警察は身元の確認を急いでいます。"

身の毛がよだった。目撃者....?いや、確認した限りあそこに人はいなかった

じゃあなぜ?偶然の通行人?いや、でもいくらなんでもラジオ局に流れるのが早すぎる。それとも別件か?

膨大な量の憶測が脳裏を駆け巡る。予想外の非常事態に摩耗する精神的余裕。警察の捜査網が展開されるのも時間の問題だ。あの口径の銃なんてスナイパーライフルかマグナムくらいなのだから、ゴルフバッグを持った人間がまず疑われる。そして、警察に逮捕されてから待ち受けるのは「法的処罰」などという優しいものではない。そこにあるのは「復讐」の名のもとの地獄だ。実際、ウチの連中もそうなってきた。連中は指を一本ずつ切り落とし、膝をショットガンで撃ち抜き、(はらわた)に凝血成分の塗られたナイフを数本突き立てる。

そして、死ぬまで下水道に放置され鼠にかじられ、生きながらに死体と化すのである。


そうだ、逃げるんだ。真夏のスペインに吹く乾いた突風のように速く!


たしか、凍った川の橋のたもとに数年前の大きな派閥同士の抗争で地下鉄につながる大きな風穴が開いたハズだ。このまま東へ3ブロック先。この人のいないゴーストタウンを駆け抜ければ、私の勝ちだ。

ミニにムチを入れ加速する。凍った道路を駆け抜けて直角に折れ曲がり角を曲がる。警察の影はない。目的の橋が見えた!錆びて脆くなったガードレールを突き破り、凍った川へ飛び降りる。こんなマネができるのは軽くて小さな"ミニ"のお陰だということはまず間違いない。まだ穴は塞がれてはいなかった。ぽっかりと口を開けた暗闇にひた走る。凍った川が何度も足をすくったが、必死の思いでアクセルを右足で踏みつける。

「しまった!」

そんな声をあげるハメになったのは、穴に近づいたときだった。穴に入るにはガレキを乗り越えなければならなかった。本格SUVならまだしも、この華奢なミニにそんなマネができるはずがなかった。そして、凍結した川はミニを止めるには余りに力不足だった。

"ガシャン"

あえなくガレキに刺さる。ボンネットは隆起し、エンジンは煙を吹く。右フロントタイヤに至っては独り歩きしている。ミニは再起不能なことは明確だった。

「仕方ない....歩くか....」

ゴルフバッグから出したスナイパーを背負い、サブのハンドガンを構える。多機能ゴーグル"NOVA"のライトを使い吸い込まれそうな暗闇を照らす。手元のM93Rハンドガンがライトに照らされて鈍く光っていた。

慎重に一歩ずつ歩みを進める。小石だらけの足場はカラカラと音を立てている。


"Prrrrrr"

身体中を緊張が走る。NOVAの通信機能だった。旧くの電話というところだ。

"ラファーガ、大変だ!ナイトが殺された!"

身体中を悪寒が襲う。身の毛はよだち、足が竦む。

ナイト、ウチのトゥルム最強にして大統領を暗殺した暗殺者だ。どんな任務でも完遂するプロの暗殺者。この業界ではカリスマとされている。

そんな人が殺された....?そして先の情報の早さ....


考えられるのは....カウンター・アサシン....!!

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