今朝の夢「廃墟とトンネル」
特に目的もないまま、知らない女の子と知らない土地にやって来た。彼女は薄桃色の袴のような、チマチョゴリのような奇妙ないでだちをしており、私の手を引きながらどこか楽しげに歩いていた。
私たちが歩くのは、今はもう誰も居なくなったシャッター街だった。どの店の外観もぼろぼろで、所々色褪せ、錆び付いていた。
洋服屋、クリーニング屋、写真屋、どれもどこかで見たことがあるような、奇妙な既視感が頭の隅に張り付いていた。
ここに、来たことがあるのだろうか?
そう思っていると、私たちの後ろからやって来た男女二人組が、雑草の生えた空き地を指差して言った。
「イブキ、見てごらん。ここがあの■■のお屋敷があったところだよ」
「立派だったのにもう跡形もないじゃない。焼け跡すら……」
どうやらこの二人は私たちと知り合いか、それ以上の関係にあるようだったが、誰なのかは良くわからなかった。ただ、彼らの声を聞いて、私は妙に安心していた。
そのまま通りを真っ直ぐに歩いていくと、じきに深緑の木々に覆われた薄暗い下り坂が姿を現した。葉の生い茂った枝がアーチ状に曲がっており、まるでトンネルのようだった。
まず、女の子が先に坂を降りた。危ないと思ったので、私もすぐさま後に続いた。
すると、辺りは一瞬にして不気味な地下トンネルに姿を変えた。緑色の木々は苔の生えた生白い蛍光灯に変わり、出口すら見えない道の先は、闇に閉ざされていた。
「■■、もう戻ろう」
私は女の子に言った。女の子は素直に「うん」と頷き、もと来た道を戻り始めた。
地面にも苔がびっしり生えており、坂を登ろうと足を踏み出す度にずるずると滑り、背後からは何か恐ろしいものが迫ってくるような感覚があった。このままだと死ぬ。直感的にそれがわかった。
「はやく出ておいで!」
外で声がした。やっとの思いで元の世界に戻ってきた私たちは、その後何事もなかったかのように、元来た道を引き返した。