マーフィーの法則だっけ?
今日も間に合わなかったなぁ。こういう時不定期にしておいて良かったと思います。
石油のおかげで石炭でベンゼンを作らなくて良かった。周囲で取れるとは言え、乾燥にも時間をかけないと木は薪にならないからな。今回伐採した分は運んで、溝を入れて天日干しだ。干し終えたら切り分けてしまっておこう。
ひとまず運び終えて、次の日溝を入れる作業をした。数のせいで一日かかったけど、こんなもんか。
だがしかし、手持ちの指向性地雷も半分ほど仕掛けてしまった。罠追加しておこう。
もう燃料は十分な量があるので、罠の追加と柵を設けよう。両方とも材料は丸太と蔓でいいや。
罠は蔓で丸太を吊り上げ、狭いところは杭のように、広さがあればバーのようにして設置する。こういう地味な作業がきついんだよ。最近レベルが上がったせいか、持ち上げるのも若干楽になったんだが。まあ、こうやって力加減を知っておくのはいいことだ。レベルアップによる加減の間違いはこれで程度が分かるから大丈夫じゃないかな。
柵は丸太を突きたて、等間隔に配置して鳥居のように蔓を巻く。牧場って感じだ。
街へは依頼を受けなくても顔を出しておかないと、顔見知りや知人に心配されるので物資を買いに行く。特に一緒に戦ったギルドの連中が心配する。それと最近は野菜がなくなってきたからな。こっちの保存食は味気ないから残っている缶詰とかあまり食べ過ぎたくないし。
そうそう、街に出ている間もゲートは開いてみた。距離による魔力の増加は無いらしい。ついでにペンほどの太さではないが、片手でも軽々と持てる短杖を買った。やっぱり増幅器だったよ。おかげでゲートで家に帰れるが、埋め込まれている魔石に魔力を溜め込まないと発動できないため、移動は徒歩だ。チャージしておけば少ない魔力で発動できるけど、ビリーは素手だったっけ。いや、指輪を嵌めていたからあれが増幅器だったのかもしれない。棍を持たずに回避重視だったのかな?
終わったら魔法陣の本を買って勉強だ。これを買うためにギルドで稼いだ金だけで無く、さらに金の延べ棒を売り払うハメになった。やっぱり便利な分高い。
魔法陣の勉強をして要約すると、「どんな文字でも発動するが、その分魔力を食う」と言うものであった。今回は火薬に魔法薬を混ぜ込むので関係ないけど。
しかし薬莢に「In the 1st ammo box transference the cartridge 3 seconds after.」は入らない。なので「IT1ABTTC3SA」と底の部分に刻んだ。底はリムとも言うんだけど、オートマチック式の弾薬はリムレスとも言うから大雑把に底と呼んでいる。
何故3秒後なのかと言うと、発射直後に転移してしまうと銃がどうなるのか分からないからだ。2秒でも良かったが、念のため3秒にしてみた。
試しに一つ刻んで、火薬と魔法薬を装薬し、弾頭を詰める。今回はIMI UZIと言う銃を使ってみた。小型化されるに連れて反動で命中率が悪くなった不憫な奴だが、銃床と銃剣が付いている。MP5などよりメンテが楽で済むので俺は気に入っている。これの45口径モデルだ。
アクセサリに銃口制退器か消音機を選択できるようネジ切りもしてある。だけど45口径モデルは10発か16発のマガジンしか販売されていなかったため、21発の延長マガジンを自作した。上手く行ったらマガジンにも転移陣刻もう。
まずは一発、森の木に向けて発砲。
「タンッ!」と言う軽い音と共に薬莢が排出される。今回は経過を見るために薬莢受けは付けていない。
下が土なので俺が好きな薬莢の落ちる音が聞こえないが、排出される空薬莢。地面に落ちるのに1秒前後、次いで2秒ほど経ち、薬莢が消えた。
きちんと弾薬箱に転移しているか確認する。よしよし、ちゃんと転移しているな。
検証を続けるために20発ほど弾薬の生産を続ける。いわゆる「*いしのなかにいる*」状態を避けるためだ。
再び木に向かって発砲。今度は盛大にばら撒く。さて、どうなっているかな。
お、いいね。全て箱に収まっている。これならなんとかなるか。
箱の中の空薬莢が全てくっ付いていない事を確認し、今回の検証を終了した。これでゲートで取り出した弾薬が行方不明となることは無いだろう。
木々を伐採し道を作り、薬莢の心配もなくなったのでバイクで街で出ようと思う。荷物は最低限でいいか。ゲートがあるし。
いつものショットガンにリボルバー、それと鉈、後腰にはワンドを装備し、バイクを走らせた。
森の中では罠で自滅しない為バイクを押し、ゆっくり慎重に歩く。
途中ゴブリンが出たがリボルバーで射殺し、耳を削いでから道からどけ、再びバイクを押す。
街道に出た。ふう、何かを守りながらの移動は心臓に悪い。俺は護衛依頼に向いてなさそうだ。
そしてレッドクリフの街が手前に見えてくるまでバイクを走らせ、門番を刺激しないように途中で降りる。
「やあ、なんか聴いた事の無いうなり声がしたけど、それかい?」
案の定門番が寄ってきた。
「ええ、移動用のからくりで、燃料を燃やして動きます。馬屋に寄せると馬が怯えると思うので、詰め所の手前で停めてもいいですか?」
「そうだな。ちょっと上司が喉が渇いたって言っているんだよ。上司のお気に召すものをくれたら私が見ててあげよう」
最近はここの門番にも慣れてきたからか、多少の融通を利かせてくれる。
「それなら・・・・・・開門。これがいいですね。冷やした赤です。温まらないうちに届けてあげてください」
俺はゲートから冷蔵庫で保存してあるワインを出した。
「ああ、ありがとう。持って行く前に私もちょっと味見してみようかな」
「どうぞどうぞ」
「うん、美味い。もうちょっと味見したくなるけど、あまり飲みすぎるとどやされるからね。持って行くとするよ。それは停めておいてくれて構わないよ」
「ありがとうございます」
問題も解決したので久しぶりに依頼でも受けてみようか。
護衛依頼を受けたくないと思っていたのがフラグだったのか、指名されてしまった。もうちょっと失敗しておくべきだったか。
「では、ユキトさん。今回はレイラさんとシャーロットさんもご一緒の指名です。頑張ってください」
「分かりました。リースさん」
ここで断っても良かったんだが、別の町や村にも興味があったので受けることにした。
「あら、ユキトじゃない。久しぶりね。どう?ランクは上がった?」
「はい、おかげさまでEランクになりました。レイラさんの調子はどうですか?」
「んっふっふー。私はこの依頼を終えて試験を合格したらBになるの。それの関係もあってレッドクリフからは離れてたんだけど、おねーさんの顔が見れなくて寂しくなかった?」
「少し」
「そこはすごくって言っておきなさいよ」
レイラとのやりとりもいつもの調子だ。
「ユキト、久しぶ・・・・・・レイラさん、レッドクリフに戻ってたんですか?」
「あら、シャーロットじゃない。久しぶり。どう?前衛は見つかった?」
「臨時でなら組んでくれる人が居るんですが、しっくり来るパーティが無いんです。そこのユキトは面白い話が聞けるし相性もいいけど、ユキトだけの火力で足りてしまうのであまり面白みが無いですし」
顔見知りだったようだ。
「確かに面白みは必要よね。効率も大事だけど、冒険者なんだから刺激が無いと」
「お二人とも知り合いで?」
「ええ、シャーロットもユキトみたいに声をかけられてた時期があったの。そのときはちょっと可哀想に思ったから追い払ってやったけど、今思えば追い払わないとあいつらの方が消し炭になってたわ」
「私も入会前に出入り禁止にならなくて良かったです。あの時期は魔術ギルドだけでは辛かったですから」
シャーロットは魔法の火力がちょーっとばかり高い。誤差の範囲が上半身が残るか下半身が残るかくらいの違いだ。それとシャーロット。君自身が苦学生だったのか。
「消し炭にしたら出入り禁止じゃ済まない気がしますが、まあいいでしょう。改めて、久しぶりです。シャーロット。二人とも、今回はよろしくお願いします」
「ええ、よろしくユキト」
「こちらこそ、ユキト」
そこから4人組のパーティと合流して、キャラバンを護衛する手はずとなった。
4人組の名前は順にトム、ヘンリー、ゴードン、ティナだ。おしい、トーマスだったらアレだったんだが。
と、思っていたらキャラバンのリーダーの名前がトマスだった。紛らわしいよお前ら。
「今回は俺達「疾風の牙」とレイラさんたちの臨時パーティだ。人数の多い俺達が偵察を行うがいいか?」
「ええ、構わないわ」
俺達も異論が無かったので頷く。
「よし、万が一はお嬢ちゃんの乗ってる奇妙なモンで加勢してくれ。獣なら音だけでも驚くからな」
「なら、後ろにはどちらが乗りますか?進行速度を緩めたくないならシャーロットの方が適任だと思いますが」
大雑把に撃って当たるからな。
「構わないわよ。あたしは魔法を補助程度にしか使っていないもの。達人になると剣の間合いが伸びるらしいけど、それに乗ったままだと踏み込みも出来ないし何本分も伸ばせないわ」
「それなら馬が怯えちまうから少し離れて護衛してくれ。万が一のときは追いつけるんだろ?」
トマスが口を挟む。
「ええ、大丈夫です。ならシャーロット、大雑把でいいなら棍無しでもいけますか?」
「大丈夫よ」
「なら、制御は視線か手を向ける程度でお願いします。片手は俺の肩か腹に回してください」
「わかったわ」
「あたしは一番後ろの馬車にくっついておくわ。E2人だとまだ心配だし」
レイラがそう言って今回の方針が決定した。
「でも不思議よね。これってどんなからくり?」
今俺はノロノロとした運転でキャラバンとは付かず離れずで行動している。
「内部で燃料を燃やして、その爆発力で車輪を回しているんですよ。今の冶金技術だとミスリルやアダマンタイト辺りを使わないと出来ないと思います」
「高価なのね」
俺とシャーロットは時折こんな会話を挟みながら護衛していた。もちろん警戒は怠らない。
「あ、あっちにハウンドドッグです。シャーロット、お願いします」
「分かったわ。凍りつけ」
ここら辺は草原地帯なので火の魔法は使えない。あまりじめじめとした季候じゃないので燃やすと大変なのだ。
「よし、手ごたえあり。でもちょっと冷えたわね。土属性にしておけば良かったわ」
そう言いながら俺にくっついてくるシャーロット。腋はくすぐったいからやめろ。
「くすぐったいので肩にしてください」
「けち」
何がだ。
そんなゆるい空気で護衛しながらも、たまに俺が探査の魔法を飛ばし索敵していた。日本語に直したのとレベルアップによる自然回復力が上がっているのか、くらっと来ることも無く護衛できている。
でも、それならシャーロットに探査を使ってもらえばいいのでは?と言う話なのだが、個人のフィーリングによって微妙に捉え方が違うので即席では使えないそうだ。参考にはするらしいけど。
そうしながら3日後。中継点のロンドの村に着いた。
「ん~!着いたー。暇なのは順調な証拠だけど面白味が無いのはねぇ。キャラバンの人からクロスボウ借りたから、今度はあたしを乗せてよ」
レイラは退屈が嫌いなようだ。
「いいですよ。シャーロットもそれでいいですか?」
「構わないわ。それより湯浴みがしたいわね。でも、私の火力だと桶が無くなるし、どうしようかしら」
そう言いながらチラチラとこっちを見てくるシャーロット。
「分かりました。温めておいてあげますから、レイラさんと一緒にでも入っておいてください」
「なんか催促したようで悪いわね」
「ありがと、愛してるわユキト!」
まったく調子のいい人たちだ。
「俺はバイクと銃の調子を見てから入りますので、終わったら声をかけてください」
「分かったわ」
「ええ」
3人分のお湯だから火の玉何個突っ込めばいいかな?と考えながら、どこで湯浴みが出来るかキャラバンと交渉している村の人々に聞きに行くのであった。
ファンタジー金属の強度でごり押しすれば後はドワーフ辺りがエンジンを作れると思うんですよ。