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突撃!隣のコボルトの巣

 今日は油断せず仕上げました。

 一度家に戻った俺は、巣と言うからにはたくさん相手にしないといけない。それに乱戦になったら散弾だと辛い事も考えて、別の銃を持っていくことにした。


 何を持っていくか・・・・・・。


 まず、ショットガンより容量の大きな銃がいいだろう。Cマグにしておくか。


 そして、セミ、フル切り替えが出来たほうがいいだろう。ここで大半のサブマシンガンが外れるな。


 最後に、着剣できてある程度距離が離れていても当たるものがいい。アサルトライフルだな。しかもカービンサイズから。


 結論、FN SCARを持っていくことにした。リボルバーはジャムった時用なのでそのままでいいだろう。




「ごめんなさい、待ちましたか?」


「大丈夫よ。それほど待ってないわ」


 俺達はギルドに併設されている食事処で待ち合わせをしていた。ここが分かりやすいし、持ち込みも自由だからだ。


 今回の俺の武器はアサルトライフル、FN SCARのヘビーバレルに金属製CマグとT字型に突き出ているフォアグリップの下部から仕込み銃剣が飛び出すカスタムモデル。それとリボルバーに念のためスタングレネードを3つ持ってきてある。


 薬莢受けも大容量だ。おかげで袋がだらんと舌を出すように垂れ下がっている。


「あら、今回はさっきのジュウと違うのね」


「ええ、6発ずつでは足りませんから」


「具体的に何が違う?」


 フレデリックも流れ弾には当たりたくないのか質問してくる。


「あれは6発でしたが、これは100発撃てます。それと、弾がバラバラに飛び散るのではなく、これくらいの大きさですか。その弾が貫通力を持って飛びます。なので、どっちにしろ射線からは離れたほうがいいです」


「そうか」


「100発ってすごいわね」


「ああ、そうだなレイラさん」


 フレデリックは淡白だが、レイラとビリーは驚いている。


「では、案内をお願いします。廃坑は行ったことないんで」


「わかったわ。みんな、行きましょう」


 俺達はコボルトの巣に潜ることになった。




 廃坑は街から出て北に向かったところにあった。


「ふう」


 流石に山歩きは疲れるな。


「大丈夫?」


「まだ、なんとか」


「まだまだ若いんだから頑張れ」


「この子この前までおじいちゃんだったのよ?」


「マジで?」


「マジよ」


 そんなやり取りをしながらも進む。進軍中レイラとビリーが主にしゃべっていて、フレデリックは寡黙だ。一応警戒は全員解いてないみたいだけど。


「見えてきたわ」


 先を見ると、鉱脈と思わしき洞窟と、コボルトの歩哨が2匹立っていた。


「俺が左をやるよ。ユキ坊は右を頼めるか?」


「分かりました」


 俺は四倍率のサイトを覗き、片膝立ちの姿勢からタイミングを待った。


「風よ、刻め」


 ビリーの詠唱と同時に俺も狙ったコボルトを狙撃する。タンッ!と言う音と共に崩れ落ちるコボルト、今回は心臓を狙った。


 もう一度この距離から今度は頭に向けて撃ちこみ、歩哨の掃討を完了する。


「規模は20行くか行かないかって説明したわよね?広いところに出さず、入り口に出てきた瞬間を狙えば良いわ」


 確かにいきなり出てきたら目が眩むから狙い目だ。


「速攻だから守りは考えない。フレデリック、ビリーとユキトの撃ち漏らしを殺るわよ。ビリーとユキトはここに居て。フレデリックは左ね」


「任せろ」


 包囲網を敷く。遠距離攻撃で下手に動かれるとやり辛いのだろう。射線をまとめる意味でも俺とビリーは一緒だ。


「ユキ坊は続けて右に出たのを頼む。余裕があれば俺の方もな。こういうのはちょっとやりすぎるくらいが丁度いいのさ」


「分かりました」


 片膝立ちの姿勢だと辛いので立って腹を狙おうと思った。


「風よ、停滞せよ」


「それは?」


「これはな、魔法を短縮するためのものさ。見てろ」


 そうして3匹目のコボルトが出てきた。


「刻め」


 さっきより短い詠唱でコボルトが切り刻まれる。


「こんな具合だ。停滞は発火より燃費もいいんだぜ?」


「そうなんですか」


「っと続きだな。おかわり来るから合図が来るまで集中だ」


「はい」


 俺とビリーはその後、出てきては混乱し、逃げようとして仲間の死体に躓くコボルトを順番に狙っていった。接近する必要も無かったな。でも距離があったから鳥撃ち用散弾(バードショット)では威力が不足していた。アサルトライフルでよかった。


 こうしてレイラの合図が来るまで機械的に撃ち続け、60発を超えた辺りで終了となった。そういえば撃ち続けてストックに蹴りつけられた肩に痛みが無いな。これがレベルアップ効果だと言うのか?


 武器のおかげで半分はパワーレベリングになっているなと内心苦笑しながらも、お呼びがかかる。


「ユキト、ビリー、剥ぐの手伝ってー」


「行こうぜ」


「はい」


 誤射も無く、いい経験だった。でも、臨時なんだから当たり外れがあるはずだ。信用できる仲間が出来るまでレイラが一緒の時以外は極力ソロで行こう。討伐証の尻尾を剥ぎながら、そう思った。




「いやー、意外と状態のいい毛皮が残っていて良かったわ」


 レイラは重い毛皮の束を平気な顔で背負っている。フレデリックもだ。これもレベル差だとでも言うのか?


 一方、ビリーは力仕事が苦手らしい。毛皮は俺と同じくらいの量なので討伐証の尻尾をまとめて持っている。


「コボルトの毛皮って需要あるんですか?」


「コボルトだけじゃなくてハウンドドッグもあるわよ。あんまりボロボロだと買い取ってもらえないからたくさんのつぶてが出るジュウはゴブリンとか亜人狩りに使うといいかも知れないわ」


「おしゃべりもいいが警戒解くんじゃねえぞ」


「分かってる、大丈夫よ」


 やっぱりこういうのも初心者の俺に対する心構えを教えているのかな?不器用だけど案外親切だな。フレデリック。


「にしても魔力の消費が無いのはうらやましいな」


「それでもビリーさん、矢と同じで一発撃つとその分お金を使うんですよ。いや、矢は抜けば使える分こっちはもっとですね」


「そうか、製造費か。元手が教本や師事する分、最初に金取られるだけでやっぱり魔法の方がタダでいいわ」


 ビリーは続いて「弓職は維持費と矢玉の消費が不憫でよ」とこぼす。


 そうだ、魔法は案外簡単にアレンジやオリジナルみたいなものが作れたから聞いてみよう。


「ビリーさん、俺はハウンドドッグを見つけたときみたいに思いついた魔法を使っていましたが、そんなに簡単に魔法って出来るものなんですか?」


「出来る。が、ぶっちゃけると効率が悪い」


 薄々そうかなとは思っていたよ。


「魔術ギルドはそういうものを効率化したり?」


「ああ、するな。アイディア持って行くと買い取ってくれるからそれもいいが、手札ばらしたくない奴が多いから重宝されるぜ」


 でも効率化ってどう言ったことをするんだろう。


「詠唱して魔力を込めるだけだったらどうやって効率化するんでしょう?」


「そりゃ普段使ってる言葉以外で使おうとするとごっそり持っていかれるんだよ。普段の言葉に別の言葉が混じっててもだ。それを置き換えて、可能な限り短くしたりだな」


「圧縮するんですか?」


「そういう見方も出来る」


 詠唱圧縮なんてあるのか・・・・・・すごいな、異世界。


「とても興味深かったです。ありがとうございました」


「いいってことよ。でも、ちょっと会話に集中しすぎかな。仲間が居ても警戒を解かないのが冒険者だぜ」


 詰めが甘いと窘められた。




「かんぱーい」


 俺達はドードーの丸焼きを食った店で打ち上げをしていた。


「今回はユキトとビリーがたくさん働いてくれたからその分たくさん飲んでね!宿屋が隣にあるから酔いつぶれても心配しなくていいわよ」


「はい、でも今の俺の身体は成長するかもしれないのでその分たくさん食べます」


 本当、働いた後の飯は美味い。少なくともゴブリンよりは人から離れてるし。


「おう、男なら肉を食え」


 ほろ酔いのフレデリックが引きちぎったモモ肉を勧めてくる。マジ不器用なだけな人なんだな。


「フレディの言うとおりだ。もうちょっと筋肉付けねえとまた女に間違われちまうぞ」


「いいじゃない、こんなに可愛いんだもん」


 ブレストプレートを外したレイラが抱きついてきた。手は剣ダコでごつごつしてるけど柔らかくていい匂いがする。


「レイラさんは可愛いのに目が無いからそういうんだよ。男ってのはやっぱり筋肉の付いた身体に憧れるもんだ。俺はどんなに食って鍛えてもあんまり身にならないから仕方なく諦めたけどよ」


 ビリーはマッチョ信仰だったのか。


「食べすぎで顎の肉がたぷたぷになるのは嫌ですけど、もうちょっと身長が欲しいです」


「ならチーズ食え」


 今度はフレデリックがチーズを勧めてきた。でかいチーズの横にでん!とナイフを突き刺す。


「はい、いただきます」


 俺はナイフをギコギコやりながら引き抜き、チーズを切り分けて食べる。うん、濃厚だ。


「これはお酒が欲しくなります」


「あまり飲んでないじゃない。ほら、もう一杯」


「ありがとうございます」


 レイラが注いでくれた。


 そのままきゅーっと飲み干す。効くわぁ。


「何事も対比が大事なんだよ。次は野菜だ。葉っぱ食え」


 ビリーもサラダをよそってくれる。新人の歓迎会みたいだな。


「はい、ビリーさん」


 そんな感じで可愛がられながらも夜が更けていく。この人たちなら信用しても大丈夫かな。


 そう思ったので、隣の宿まで辛うじて歩いていけるくらいまで深酒するのであった。

 主人公の名前の由来は○夢の背表紙がふと目に入ったからです。

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