発想の違いと禁忌
お久しぶりです。なんとなく書けそうな気がしたので執筆してみました。
せっかく氷室を作ってもらったし、その間氷が溶けても勿体無いので細部を改造。それくらいは俺の魔力でなんとかなるとして、肉でも吊るしておこうと思う。
「これからいつでもお風呂を堪能したいし、ヘレンさんの宿に行くぞ」
「分かった。任せる」
フランシスの提案に乗って宿を変えることになった。しかし漁村を探すとなるとあてが無い。酒場で聞き込みか?
「すまないみんな。この中で漁村の場所を知っているのは居るか?」
「ごめんなさい、知らないわ」
「分からないです」
「分からん!」
「そうか」
うん、まあなんとなくそんな気はしてた。
「なら今後の予定として、肉の塊をいくつか買って吊るすのと、野菜が心許なくなってきたから塩漬け、酢漬けを作っておく。ついでにミスリルが切れたからまだまだ買っていくとして、みんなは何かしたいこととかあるか?」
「私は新しいローブが何着か欲しいわね。後は詠唱短縮用に指輪とか。だけどあれは週末に開かれるオークションかバザーを回って個人的に探すしかないから貯金がしたいわ」
「リリウムもイザという時の貯金がしたいです」
「私は銃で攻撃力が充実してきたからな。この鎧も愛着があるのだが、もう少し防御力が欲しい。それにこれからドワーフの店で銃が売りに出されるんだろう? 万が一撃たれたら危険だしな」
「ならしばらく古城で金策と言う事で」
シャーロットの指輪は冒険者か魔法使い以外は使い道が限られるため、魔法道具店よりはと冒険者向けにオークションにかけられたり個人的に売買しているらしい。
「異論無し」
「はい、分かりました!」
「うむ、まだ皆とダンジョンに篭ったことが無いからな。連携の確認と行こう」
なら宿を変えたら金策かな。
「あら、フランちゃんじゃないの。後ろの人達は?」
現在転移でウィルキスの街に居る。テレポート系は何日もかかる移動が一瞬で済むから便利だ。知ってる場所しかいけないけど。
「ヘレンさんご無沙汰している。後ろのは私の仲間だ」
「あら、パーティ組んでくれる人が見つかったのね。良かったわぁ」
「うむ。クレアは?」
「ああ、あの娘は買出しよ」
「ならば後で挨拶しておこう。今は仲間の紹介だな。順にユキト、シャーロット、リリウムだ」
「ユキトです。よろしくお願いします」
「シャーロット。よろしく」
「リリウムと申します。よろしくお願いいたします」
「はい、よろしくね。部屋は角部屋が空いてるからそこでいいかい?」
「うむ、異論は?」
「なし」
「無いわ」
「ありません」
「と、言う事だ。荷物を置いたら古城に篭ってくる。帰りは何時になるか分からんから夕飯は外で済ませてくる」
「あいよ。気をつけてね!」
「ああ、ありがとう」
貴重品は俺の家にまとめて置いてあるからな。このままダンジョンに潜れるけど間食でも買っていくか。
今回古城のダンジョンに潜るが、皆銃火器を使うから特殊部隊風にまとめておいた。全員安かったからまとめて買っておいたUMPとM9にサプレッサーを付けている。理由は9mmが使う機会が無くて在庫がだぶついているし、薬莢をミスリルに変えるなら刻印無しを撃った後に回収する必要を感じないからだ。
「リリウム、斥候を頼む」
「任せてくださいお兄様」
先頭をリリウムが、その後ろにカイトシールドとUMPを構えたフランが続く。ちなみに俺はバックアタックを警戒しての最後尾だ。
全員無言で進んでいると、リリウムがハンドサインで「待て」、と合図してくる。続いて親指、人差し指、中指の三本を立てる。敵3らしい。
リリウムはUMPをスリングから吊るした状態で両手を空け、フラッシュバンを取り出す。ここは後から拾えるので以前俺がやったみたいにフラッシュバンにワイヤーは付いていない。リリウムには敵が高そうなものを持っていたら自己判断でフラッシュバン、多くて剥ぎ取る価値が無さそうだったらフラググレネードを投げるようブリーフィングで言ってあるのだ。
古城は長い廊下と多くの部屋があるのだが、既に金目のものが無いのでゴブリンやここを根城にしているならずもののドロップ品、ついでに討伐証が収入になる。俺達みたいに無理に敵に近付く必要が無い場合、警戒するべきは魔法とクロスボウや弓、後は罠だが、罠は一度潰してしまえば仕掛けるのは知能が高いゴブリンかならずものくらいなので斥候が居れば怖くは無い。
そして現在入り口から各部屋をクリアリングしていてアタリを引いたわけだ。俺達はUMPのセレクターを単発にしてリリウムに親指を立てる。
リリウムの投擲。数瞬後、閃光。
悲鳴が上がる室内に気持ちゆっくり目に侵入した後、ならずものをヘッドショットで射殺していく。死体を確認すると狭い部屋では役に立たなさそうな大剣や柄付きの斧など、威嚇用と思わしき武器が部屋の壁に立てかけられていた。本人達は革鎧に手斧やショートソード、バックラーで武装している。革によっては良い値が付くのでリリウムはこれの破損を許容しなかったのか。
死体漁りを終えた後、頭の風通しが良くなったならずものをを見てふと思いついた。
「フラン、ネクロマンシーって違法なのか?」
「違法では無いが異端者が使う印象だな」
「違法じゃないならちょっと試したいことがある」
「聖職者としてはあまり使って欲しくないんだがな」
「発明は初めの内非難されるものさ」
使う素材はならずものの死体が一つに革鎧一着。これを別々に分けておく。
「仮初の命よ、この者等に宿りて、我に従え」
革も生物を加工したものと仮定すれば――。
「うっ、これは・・・・・・!?」
「気持ち悪いです・・・・・・」
「興味深いわね」
ネクロマンシーで使役可能と言うことじゃないだろうか?
「よし、お前はこれを着けろ」
ならずものの死体にゾンビ化した革鎧を着けさせる。丹念になめされたそれはならずものの死体の血液を吸い、脈動する。
「第一段階は成功か」
「ユキト、これは・・・・・・?」
シャーロットが興味深げに聞いてくる。良くぞ聞いてくれた。
「これは革鎧に再生能力を期待したんだ。試しに・・・・・・」
俺はナイフで革鎧に傷を付ける。
「体液を吸い、再生せよ」
革鎧がうぞうぞと脈打ち、傷から出血した後かさぶたになった。
「これをはがすと・・・・・・」
断面の無い綺麗な状態になった。
「第二段階も成功だな」
「これが短剣とかならまだ傷は浅いからなんとかなりそうだけど、貫通したらダメじゃない?」
「これの目玉は生物ならなんでも有効と言うところだな。もちろんトレントで作っても大丈夫だし、魔獣の革なら槍も通さないだろう。ミスリル製だと不安が残るが、そこはいたちごっこだな。それに再生するから長持ちする。さて・・・・・・」
最終試験だ。
「融合せよ」
この言葉に脈打つ革鎧がならずものゾンビと一体化し、皮膚と革鎧の接地面が消えていく。
「一応成功かな? もう身体の一部だから傷を負えばすぐ再生する。丁度いい。これを斥候の代わりにするか」
『えっ!?』
「罠の感知にも使えそうだな。リリウムはこいつでどうしようもない時用に控えておいてくれ」
「お兄様がそう言うなら・・・・・・」
「流石に聖職者として容認しづらいんだが」
「これなら私がソロの時肉壁が出きるわね」
「敵の死体でしかやらんから安心してくれ」
「そこは安心できるところでは無い・・・・・・もう勝手にしてくれ」
戸惑い、興味、諦念。様々な感情が交錯しながらも俺達は金策に励むのであった。
週1くらいで執筆できるといいな。感想、ご意見お待ちしています。




