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製作と食欲

ちょっと不定期になってきます。

 今回開発した銃はどれも取り回しづらいし、特にショットカノンは4ゲージ(25.2mm)に作り直そうと思った。メタルイーターは連射にさえ気をつければ十分使える範囲だし、モーゼルミリタリーも10インチバレルに換装すればなんとかなりそうだ。アダマンタイト製の銃剣は炉の火力を上げればなんとかなるので、今のものより薄く長い銃剣でも刻印を刻まなくても鋼鉄製より十分に強そうだと強度確認をしたときに確信した。


 とりあえずこっちはいいとして、ドワーフ兄弟には試供品としていつも使っている火薬と雷管を持たせたが、黒色火薬と雷酸水銀を持って行かないといけないな。


 最初はガレージに余っている硝安から黒色火薬を作ればいいだろう。木炭は家にあるBBQ用で硫黄は錬金術ギルドで簡単に手に入るし、炭が足りなくなってきたら買えば良い。


 水銀も錬金術ギルドかなー。錬金術に水銀は割とポピュラーだから問題ない。


 火薬の量も、シングルベースと黒色火薬だと大体1:2くらいの割合の火力の差があるから念のため銃身と弾倉を太めに作らせれば大丈夫だろう。


 ただなー。硝石の精製に糞尿が必要だと言う事をどう説明するかなー。


 ま、行ってから考えよう。




「どうだー、やってるかー?」


 オレはドワーフ兄弟の工房にやってきた。パーカッションリボルバーの出来具合を確かめるために。


「おう、来たか」


 兄のダインが迎えてくれた。


「で、どうだ?」


「まずはいくつか試作してみた。ボーリン!ユキトが来たぞ!アレを持ってきてくれ!」


「今行く!」


 ボーリンが奥から銃を何丁か抱えて来た。


「こいつ等が試作品だ。順番に、鋼で作った奴、鉄にアダマンタイトを混ぜた奴、アダマンタイトの奴だ」


 ほう、流石鍛冶屋。結構高いアダマンタイトも使うか。


「鋼で作った奴はまだダメだ。細かい部品にガタが来やがる。アダマンタイトを混ぜた奴は細かい部品はミスリルに銀の合金を使ってみた。靭性はそれで十分だからな。アダマンタイトはバネにするには硬すぎるからそういう処置だ。アダマンタイトの奴も一部の部品にミスリルを使っているが、こっちはもっと火薬を増やしても大丈夫だな。ただ、反動も馬鹿にならねえ。俺等ドワーフか、高ランク冒険者とかじゃねえと手首とか肩とかやっちまいそうだ」


 ほうほう、だがまあシングルベース火薬を限界まで入れての話だろう。なら杞憂だ。


「使う火薬は今まで持ってきたのの半分くらいの威力だから鉄にアダマンタイト混ぜた奴で十分だと思うぞ。鋼で作った奴は弾倉を5発にして少し小さくすれば良い。そうすれば鍛えていない商人とかでも使えるからな」


「なるほどな」


「どれくらい小さくすれば良い?」


 当然の疑問だな。今回渡したのが45口径だから、うーん、こっちはインチ法ではなくメートル法だからな。7.5mmにしとくか。45口径もアダマンでそれなら12mmの方が作りやすいだろう。


「小さいほうは7.5mmくらいの内径だな。後、元々渡したオリジナルの銃はインチ法って言う規格を使っていたんだ。だから設計図を引きやすいように大きいほうは12mmにしていいぞ。合金にするよりアダマンタイトだけの奴でも冒険者なら買うだろうし」


「そうか、やってみる」


「後は秘薬の話だ」


「お、やっとか」


「待ってたぜ」


「まず火薬の方なんだがな。あれは糞尿を発酵させたものを原料にするんだ」


「うぇ!?」


「汚ねえな!」


「まあ話は最後まで聴け。こっちでも畑を休ませている間に家畜を放牧したりするだろ?その後クローバーなんかで家畜の糞を栄養に変える訳だが、あれは汚いとは思わないだろう?ましてやこっちは別に口にする訳じゃないんだ。問題ないさ」


「そう言う問題か・・・・・・?」


 ダインが訝しげに言う。


「逆に人糞なんかは毒性が強すぎて畑に撒けないだろう。だからそこが狙い目だ」


「理屈は分かるんだがよ。どうするんだ?」


「まず、日陰を作るために建物がいる。そこに糞尿を溜めるんだが、糞尿を入れる容器が必要だ。ここはあつらえ向きに鍛冶屋だし、ドラム缶ってのを作ってもらうかな。それのそこに魔法陣を刻んで中に入れた糞尿が容器の中をぐるぐる回るようにするんだ。発酵を促すためにな。人力でも出来るんだが、臭いのは出来るだけ嗅ぎたくないだろう?で、蓋に換気と消臭の刻印を刻んで干渉しない部分に穴を開けるんだ。こうすれば手作業で臭い仕事をするよりは大分楽になるだろう。糞尿の方はドラム缶に密封できる蓋を付けて回収して回れ。何、使い道が無いしむしろ汚物をタダで処理して回るって言えばいい。訝しがられるようだったら安くでも金取って回収って手もあるな。何か質問はあるか?」


「回収する名目はどうすりゃいい?理由も無しにやりゃ変人どころかもっとひでえ扱いされかねんぞ」


 ボーリンの心配も最もだ。


「何、美化活動の一環って言っておけば良い。良い事してるのに文句言われる筋合いは無いだろ?」


「そりゃそうか」


 本当はもっと色々必要なんだが、多少非効率でも独占すれば大量に集まる。質より量だ。


「後必要なのは木炭と硫黄だな。何か理由を聞かれたら臭い消しとでも言っておけ」


「おう、分かった」


「建物はなんとかなりそうか?」


「ああ、ここは職人街だからな。臭いに気をつけりゃそこそこ広いのは確保出来るぜ」


 頼もしい言葉だ。


「よし、次は雷管に使う雷酸水銀だ。こっちは水銀と硝酸と酒精が要る。水銀と硝酸は錬金術ギルドで仕入れられるだろう?後酒精はお前等の方が詳しいだろ。こっちは人糞より簡単に集まるから先に集めておいてもいいぞ。その間にオレはドラム缶を持ってくる。それと試射用の火薬を作るために肥料から硝石って言うのを作るからそっちも持ってきたらそれで作り方を教える。いいか?」


『おう!』


「じゃ、錬金術ギルドにはオレが行っておくから建物を押さえておいてくれ。ドラム缶は実物を見てもらった後作り方を説明するからな。まあ、樽でも良いんだがそっちが良いって言うならそれでもいいが、どうする?」


「そうさな・・・・・・樽の方が怪しまれねえだろ」


「オレが木工ギルドに行って発注してくるから問題ねえ」


「分かった。樽だと底と蓋が木だから金属板の魔法陣用意しとけよ」


「分かったぜ」


「じゃ、一旦解散するか。ああそうだ、アダマンタイト製の銃に取り付ける剣を作ったんだが出来がいまいちでな。金は出すから作り直してくれないか?」


「おうよ、任せとけ!」


「とりあえずブツを見せてみろ」


 話はまとまった。後で硝安とか持ってくるか。さっさと火薬の作り方を教えて収入に繋げたいものだ。




 硝石はしばらく後になりそうだし、今回で殆どのミスリルとアダマンタイトを使ってしまった。一応小物を作るくらいは残っているんだが。後はその上にオリハルコンと言うものがあるらしいけど、そちらはめったに市場に出回ることは無く、貨幣にすらされていない幻の品らしいので保留。目的に空白が出来た。


 ・・・・・・そうだ、魚が食べたい。生魚が。


 しかしウィルキスにある「猫のゆりかご」は流石に生魚は取り扱っていなかった。しょうゆに似たたれなら取り扱っていたが、この前買い込もうとしたら秘伝のたれらしく、断られてしまった。幸いしょうゆにはまだ在庫があるからいいのだが、仕込みをしておかなければいけないかな。レッドクリフにも大豆のようなしょうゆに適した豆があるか確認だ。まあ戦時は髪の毛で作ったと言う話も聞いた事があるし、ある程度の代用は可能だろう。


「そんなわけで、市場に行って豆を見た後、漁村に行って魚を食べたいと思います」


「いや、どういうわけよ」


「お魚ですか?リリウムお魚も好きですよ」


「魚か。そう言えば久しく食べていないな。たまにはいいだろう。だが、ギルドの仕事はどうするのだ?」


 こちらの世界では別にクエストとか言ったりしない。依頼と仕事と言うシンプルな呼び方だ。


「ウィルキスを拠点にして、一度オレが先行して漁村を確認してきます。場所の特定が出来たら俺の魔法で漁村に行くか、シャーロットに氷室を作ってもらって生魚はそこで保存しましょう」


「氷室?どこに作るの?」


「そろそろみんなをオレの家に呼んでも良いかと考えていました。そちらに作ってもらいます」


 そう、行動を共にして結構経つ。こいつらは信用出来るだろう。


「そう、前から興味あったのよね。分かったわ」


「お兄様のおうちですか?」


「うん、銃もそっちで作っているんだ」


「私は他の銃にも興味があるな。後で見せてくれ」


「いいですよ。それで、信頼の証としてこれから普通に話そうと思う」


「やっとね」


「リリウムにはいつも通りですよね?」


「全く水臭い奴だ」


 え?オレってそんな風に思われていたの?


「まあいいや、改めてよろしく」


「ええ、よろしく」


「よろしくお願いします。お兄様」


「よろしく頼むぞ」


 その後、まずは俺の家に移動する流れとなった。




 短杖(ワンド)を構えて人間が通れるくらいの大きさのゲートを開く。オレの指には2つの指輪が嵌っている。これはミスリルの端材に銀を混ぜたもので、詠唱無しでゲートの魔法を使うためのものだ。開くのは1つで十分なのだが、取り出したい手で別のものを出すときに2つゲートを開けたほうがいいかなと思って作ってみた。シンプルなリングで、内側にレーザーで刻印を刻んでいる。そう、大体金属で刻印するときはレーザー刻印を使う。他にもいくつか作ったが、それはまた今度にしよう。


「お邪魔します」


「お、お邪魔します」


「邪魔するぞ」


 3人がゲートを通る。その後からオレも続く。


「そういえばシャーロット。君もこれを使えるようになったのか?」


 最近手ぶらだから聞いてみた。


「ふふん、見てなさい」


 シャーロットは右手を前に突き出した。


「門よ、開け」


 腕から先をどこかの空間に突っ込んでいるせいで、無くなったように見える。普段のオレはこんな風に見えていたんだな。


「ほら」


 そう言って棍を取り出してみせる。


「正直私の杖は撲殺用に先端を重くしてあるし、精密操作用にあえて魔力を抑えたりするからユキトから預かった銃がある今、四六時中持っておく必要も無いのよ。肩凝るし」


「そうだったのか」


 しかしどこに仕舞ってあるんだ?異次元か?


「撲殺は討伐証を全壊しない為の苦肉の策だったから・・・・・・」


 なにやら遠い目をしている。


「気持ちを入れ替えていこうじゃないか。ユキト、どうするんだ?」


 フランシスが指示を仰ぐ。


「そこの建物があるだろ?」


 オレはガレージを指す。


「横に氷室を作って欲しいんだ。先に大きめの石の建物を用意して、中に氷を敷き詰める感じで」


「分かったわ」


 シャーロットは棍をかざし、唱える。


「土よ、岩よ、鉄よ、我が魔力にて、家となれ」


 ズズズズズ・・・・・・という振動と共に、石造りの建物がせり上がってきた。


「柱に鉄を使っているからそう簡単には壊れないわ。次は氷ね?」


「ああ」


 シャーロットは石造りの扉を横にスライドさせ、中に入る。


「水よ、集い、凍れ。集い、凍れ。集い、凍れ・・・・・・」


 どんどんいびつなブロックを生成していく。天井付近にも棚になっているらしく、そちらにも生成していく。


「出来たわ。鉄の柱は空気に触れないように岩で包んであるから教わったとおり酸化しないと思うわよ。でもたまに点検が必要ね」


「分かった。ありがとう」


 とりあえず、これでいつでも魚を保存出来るようになったな。氷の補充だけならなんとか俺の魔力だけでも足りそうだし。


「よし、じゃあ風呂に入ってゆっくり飯でも食おう。その後は酒だ。リリウムでも飲めそうな奴があるから今回は特別だぞ」


「お風呂あるの?良いわね」


「お風呂があるんですか?」


「ほう、風呂なんて貴族くらいしか持っていないだろうに」


 概ね好評だった。




「そういえばシャーロットは旅の途中どうしてあの建物を作らないんだ?」


「だって目立つし、護衛だと他の人たちにも作ってあげないと嫌な目で見られるじゃない」


「それもそうか」


 俺達は猪の燻製を肴に酒を飲んでいた。


「リリィは初めての酒はどうかな?」


「甘くて美味しいです」


 リリウムには秘蔵の梅酒を出した。梅もどこからか仕入れて来ないといけないな。


「・・・・・・・・・・・・」


 フランシスはとろんとした目で黙々と燻製を食べながら酒を煽っている。こいつには現地で仕入れたワインから出しておいて正解だった。


「さて、3人にはこれを渡しておこう」


 3対の酒に澱んだ瞳が向けられる。


「これは何?」


「呪符で編んだサークレットだ」


 余ったミスリルの端材を一度溶かして糸にした後、刻印ではなく呪符として編みこんだ。ちなみにオレのはヘルメットに邪魔にならないようにアダマンタイトの鉢金だ。金の部分に刻印を施してある。


「こないだ不労所得が欲しかったから紹介してもらったドワーフの鍛冶屋に旧式の銃を紹介してな。今後どんな奴の手に渡るかも分からないから備えの為だ。身体を守るペンダントもあるぞ」


「発端は不穏だけど良い防具が手に入るのは嬉しいわね。兜と違っておしゃれで蒸れなさそうだし。ありがとう、ユキト」


「大事にします。お兄様」


「礼お言ゆ」


 二人はともかくフランシス、お前は水を飲んだほうがいいと思うんだ。


「さて、飲みなおすか。イカゲソって言うのがあるからそっちも開けよう」


「いか?いかってあの?」


「ゲテモノはちょっと・・・・・・」


「デビルフィッシュにょ親戚ではにゃいか!」


「いや、美味いんだって。クラーケンはどうだか知らないけど」


 こうして夜がふけていった。




 翌日、全員酒臭いので風呂に入れ、昼過ぎにゲートでウィルキス近郊の道に出ることにした。ドワーフ兄弟はゲートで一瞬で会えるので気軽に移動出来る。


「うう、水・・・・・・」


「はい、お水ですよ。フラン姉様」


 初めて酒を飲んだはずのリリウムがフランの世話を焼いている。アイツだけ昼飯は麦粥だった。


「なんでああなるって分かっていてそこまで飲むんでしょうね?」


「飲んでいるうちに抑えが効かなくなるんだろう」


 オレも自棄酒している時はそんなもんだ。


「とにかく、頻繁にここに出入りするといらない厄介ごとを抱えそうだからウィルキスで宿泊するからな」


 そう、大人数で何度も行方不明になっていたりすると後々面倒なのだ。俺一人なら時間の調整やアリバイ工作も出来るんだが。


「お風呂・・・・・・」


「街の外に石の家を建ててそこに風呂を作ればいいだろう」


「その手があったか」


 この世界の魔道士は発想が硬い。


「ああ、使うのは狩りや依頼、ダンジョンに篭ったときの帰りだからな。シャーロット一人で怪しまれずに街の内外を行き来出来るなら別にいいけど」


「口の堅い宿に口裏を合わせてもらいましょう。それならユキトも来るわよね?」


「はぁ、まあいいか」


 石の家を作るときは出来るだけ離れた位置に丘のように土を被せてもらうか。換気は魔法でいいだろう。


「それなら今度こそお兄様のお背中をお流しします」


「いや、フランの世話してくれるだけで十分だから」


「私は大丈夫・・・・・・うっ!」


 ゲロインかー。


「私は大丈夫だ!吐いたらすっきりした!」


 リカバリーはえーな。


「ああもう、とにかく行くぞー」


 今回はバイク無しだ。まあ、宿を取ってある程度稼いだら漁村を探すために後からバイクは取って来るんだが。

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