魔術式ゾンビでも十分脅威だと思う
お久しぶりです。スランプが徐々に抜けてきたので執筆してみました。楽しんでいただけたら幸いです。
いつものようにギルドの掲示板を見ていると、ふと見慣れない依頼を見つけた。報酬もそこそこで、一人当たり金貨数枚に危険手当が出る。それでも何故か敬遠されているようだ。
俺はこの依頼を剥がし、メンバー内で相談してみることにした。
「この墓場の調査と言うものが美味しそうなのですが、どう思います?」
「ユキト・・・・・・これを見つけてきちゃったのね」
「どう言う事ですか?シャーロット姉様」
シャーロットは嘆息しながら説明を続ける。
「墓場での依頼なんて十中八九ゾンビだわ。だから基本殲滅になるし、元を断たないといけないの。しかも近接職には特に不人気でね。理由は分かるわね?腐った歯や爪で傷つけられたら解毒と中級ポーションくらいは用意しておかないといけないわ。そして一番の適役は聖騎士や神官、僧侶などのヒーラーなんだけど、ヒーラーは少ない。よって、放置され気味になるのよ」
フランシスの出番だな。
「でも、距離を置きながら戦えればなんとかなるんですよね?」
「まあ、極論を言うとそうね」
「なら受けましょうか。ゴーレムとまでは言いませんが、土の壁を出す魔法とか覚えていますか?」
「ゴーレムも一応魔術ギルドで習得済みよ。私は才能が無いのか大きいのを1体作り出すだけなんだけど」
「いいですね。感染しない肉壁が居るなら十分です。もしよろしければ終わったら教えてください。それとフラン、浄化する法術は使えますか?」
「ああ」
「なら、近寄ってきた奴は問答無用で浄化してください。今回渡した銃の出番は無しです。腐汁撒き散らされても困るので」
「仕方が無いな」
「リリウムも受ける方向でいいですか?」
「はい、今回はリリウムは何をすればいいでしょうか?」
「大方こういうのは自然発生じゃなければ死霊使いが居るから、そいつを見つけるのよ」
「分かりました」
「ゾンビだと銃剣は効きませんね。別の銃を出してきます」
「私の方もようやくあなたが使うゲートがモノになったし、今度はフラッシュバンだったかしら?あれを魔法で再現してみようかしらね」
「リリウムには焼夷弾を多めに持たせるから、まずはグレネードランチャーから銃に慣れて行こうか」
「わ、わかりました」
「では、俺は武器の準備と受付をするから、各自墓場への聞き込みを頼みます。自然発生ならフランが浄化すれば言いだけの話だし・・・・・・ああ、今回フランは切り込むのではなく護衛をお願いします」
「分かった」
「では、各自散開。リリウムだけ装備を渡すから残って」
「はい」
「あの、私の装備って一体・・・・・・?」
「ああ、こういう奴だよ」
そう言って俺はチャイナレイクグレネードランチャーと言うポンプアクション式のグレネードランチャーを渡した。
「これは普段のとどう違うんですか?」
「ああ、発射音がマイルドでね。本来なら角度を付けてから発射するんだけど、まず1ダースほどゴム弾出してみるから練習してみよう」
そうして街の郊外で練習することとなった。
「銃の先にある照準を起こして、それで角度を付けて狙うんだ。あまりうるさくないよ」
「わ、分かりました。やってみます」
リリウムは教えた手順の通りシャッコン、シャッコンとゴム弾を装填し、まずは零距離射撃、つまり銃を平面にしてから狙わせた。ポンッと気が抜けるような音と共に的に向かってゴム弾が発射される。
「よし、上手い上手い。これで少しずつ角度と付けて撃ってみよう」
「はい」
銃に対する先入観さえ無ければ射撃はスムーズに行われた。誤差も範囲内だ。ゴム弾頭を回収してからそう締めくくった。
「今回は聖水なんていちいち振り掛けている暇は無いからね。火で代用する」
「はあ」
「後は撃ってからのお楽しみだ」
「びっくりするのは最初の内に済ませておきたいです」
「弾を作るのが面倒なんだ」
待ち合わせ場所でリリウムにクロスボウの代わりにグレネードランチャーを背負わせて、俺はAA-12を背負っている。後は念のため1マグほどFRAG-12と言う榴弾を装填してある。他は鹿撃ち用散弾だ。
「お待たせ」
「待たせたな」
シャーロットとフランシスがほぼ同時に待ち合わせ場所に来る。
「どうも怪しいローブが徘徊してるとの情報があったわ。その度にゾンビを連れてるとも」
「こちらも似たような情報だ。十中八九下手人はそのローブで間違いないだろう」
「分かりました。こちらもリリウムに銃の撃ち方を教え終わりました。今回はなんとかなるでしょう」
「大丈夫なの?」
シャーロットの懸念も最もだ。
「今回リリウムにはゴーレムの影から射てもらいます。後は俺とフランで進みながら下手人を探しましょう」
「大丈夫ならいいけど」
「他に無いのならば行こうではないか。本格的に動き出すのは夜だと言う話だから今の内に張っておこう」
「フランの言うとおりです。行きましょうか」
こうして肝試しに向かうことになった。
そして現在の場所は街の共同墓地。貴族の霊園には出没していないらしい。
「ここからはリリウムの鼻が頼りだ。こちらでも警戒するが、頼んだぞ」
「分かりました!」
墓守は念のため避難している。巻き添えになられては困る。
そうしてしばらくするとなにやら変化が訪れたようだ。
「お兄様、腐臭がします。ゾンビが出てきました」
こちらでのメジャーな葬儀は土葬なのでそのまま這い出てくるのだ。
「探査」
ゾンビの塊の他にここからしばらく離れた位置にぽつんと反応があった。
「シャーロットとリリウムはここで待機。変化があったら援護射撃。フランは俺と下手人のところまで行きますよ」
俺とフランシスは墓地をぐるっと迂回して下手人のところへ向かった。
「そこまでだ。死体を集める下手人め。申し開きによっては酌量の余地がある。ゾンビを死体に戻して抵抗をするな」
フランがびしっと決める。場慣れしていそうだ。
「・・・・・・エリス、もう少し待っていておくれ。邪魔者を片付けて君に合う体を探すからね」
その目は落ち窪み、血色が悪く、骸骨のようだが目だけが爛々と光と灯している。正気ではないようだ。
「言葉は通じないか。フラン、交戦しますよ!」
「分かった!」
俺はすかさずAA-12から鹿撃ち用散弾を放った。
「ふん」
なんらかの障壁に阻まれ無傷の下手人。
「魔法障壁だ!」
フランシスのその声に片手撃ちを保持しながらFRAG-12榴弾を装填しているマガジンを取り出す。
「小ざかしいな。やれ」
どうやら敵が障壁を張りながらでもゾンビを使役することが出来るようだ。
遅いとは言えこちらに向かってくるゾンビ。シャーロット、リリウム組も変化を嗅ぎ付けたのか、焼夷弾を撃ち出している。
幸い西側にシャーロットとリリウムが居るとすると、その間にゾンビたち、少し離れて下手人、俺とフランシスが居る。なので容赦なくリリウムが焼夷弾を降らせている。
しかしゾンビも負けてはいない。一部反転するとシャーロットたちに襲い掛かろうとしていた。
しかし4メートルはあるシャーロットのゴーレムの棍棒に叩き潰され、なぎ払われた。心配は無さそうだ。
「ちっ、仲間が居たのか」
「おとなしく捕まってはくれないか?」
「エリスの為に捕まるわけにはいかない!」
下手人は懐から脈動する心臓を取り出すと、丸呑みにした。俺はその間にも射撃で妨害していたのだが、障壁が邪魔で見ていることしか出来なかった。
「あれは!」
「あれはなんですか、フラン?」
「あれは「悪魔の心臓」と呼ばれるものだ!等級はあるのだが、あれを使用した人間は悪魔そのものの力を得ると言う。その代わり法術に弱くなるが、どちらにせよ厄介だ」
それは面倒な代物を・・・・・・。俺は下手人が変身中にマガジンを換え、榴弾を使うことにした。
「素晴らしい・・・・・・力が溢れてくる・・・・・・分の悪い賭けだったが俺の勝ちだ」
「それはどうかな?」
心臓の辺りに一発発砲してみる。障壁が何故か発生しなかった。
「グフッ、馬鹿な、障壁が発生しないだと?だが、これだけの傷を受けてもすぐに再生している。後はゾンビ共さえ操れればそれでいい」
RPG風に言うと
魔法 ゾンビ使役 魔法障壁
特技 無し
だったのが
魔法 使用不可
特技 ゾンビ使役 再生
になっている状態なのか?まあどっちでもいいか。
「フラン、一応聖水は用意してあります。法術の補助になるでしょう。時間を稼ぐので術の準備に入ってください」
俺は口早にそう言うとフランシスに聖水を渡し、銃を構えた。
「下手人、もはやあなたに人権はありません。死んでもらいます」
「やってみろ」
相変わらずどこかけだるげに対応する下手人。俺は再び榴弾の雨を降らせた。
主に胸部に集中する榴弾。それを両腕で防御しつつも下手人は突っ込んできた。
榴弾のおかげで勢いが削がれ、振りかざした腕の付け根にも榴弾が当たったことで怯む。それを前蹴りでかかとを膝に思い切り叩きつけ、中の皿を割る。
しかし相手もすでに悪魔の身。少々の硬直があったものの、再生し、ゾンビが来るまでの時間稼ぎなのか、俺の攻撃力が高すぎたのか集中的に狙われる。急激に伸びた爪が禍々しい。
咄嗟に俺は手投げ用の焼夷弾をゲートから取り出し、下手人の足元に投げつけた。時間稼ぎにしかならなさそうだが、それでいい。
「ぐあああああ!」
3000度で炙られたら流石に無事では済まなかったらしい。榴弾はダメージが一瞬だったがこちらは継続ダメージだ。
「フラン、法術の準備を!」
「分かっている!」
焼夷弾が下火になってきたところで放たれる聖水。それに合わせて法術が展開される。
「主よ、憐れみたまえ」
ここで言う主とはフランが仕えている主神のことで、唯一神のことではないらしい。
「おのれ、おのれえ!」
ここに来て憤怒の表情を見せる下手人(悪魔)。さて、警戒はフランに任せてゾンビはどうなっているかな。
マガジンを交換してから見回してみると、あちこちで火の手が上がっていた。ぶすぶすと腐ったものが燃える臭いがする。遠くには腐汁だらけで近寄りたくないゴーレムが1体。ゾンビを任せた二人と共に向かってきた。
「こっちは終わったわよ」
「こちらももう終わります」
焼夷弾とは別の聖水による煙を上げながらもがいている下手人の首をフランシスはハルバードで切り落とした。すると、悪魔の顔つきから人間の顔つきに戻っていく。
残りの聖水をたぱたぱとハルバードにかけて、フランシスは下手人の心臓と胃と思わしきところを念入りにかき回していた。
「ああ、こうでもしないと再生する恐れがあるんだ。その場合頭が無い分理性の無い悪魔になってしまうからな。そっちのほうが厄介だったりする」
好きでやっているわけではないのだろう。現に顔をしかめながら臓腑をぐちゃぐちゃにしているのだから。
「これでいい。あとは下手人の首をギルドに届ければいい」
「首か・・・・・・布で巻いていきましょう」
「燃やしたゾンビはどうするの?」
「土の魔法で埋めておきますか。シャーロット、手伝ってください」
「分かったわ」
「お兄様、私はどうしましょうか?」
「今回は墓石とかあまり崩れていないと思うけど、ずれてる部分があったら直しておいてくれるかな?」
「はい」
「私は念のためこの下手人の首を見張っておく。頼んだぞ」
「フランは待機ですね。分かりました」
こうしてゾンビ騒動は終わった。
結末として、あの下手人はビクトールと言い、恋人が死んでしまいネクロマンシーで復活させるために適合する体を捜していたと言った具合だった。しかしほかにも押収されたものから危険なものが見つかり、場合によっては犠牲者が出ていたであろうとの事。まあ、被害が墓地が燃えたくらいでよかったよ。
今回で「悪魔の心臓」が使われていたとして、また、似た物品が数点押収され、ギルドからは報酬に色をつけてもらえる形となった。ほとぼりが冷めるまでの口止め料でもあるとおもうんだけどね。
おかげでミスリルとアダマンタイトのインゴットがゲットできたので、これでミスリル製の銃が作れる。銃器製作はライフワークと言ってもいいからこれからが楽しみだ。その話はまた後日にしておこう。
使命感に囚われるとクオリティが下がっている気がするのでマイペースにやろうと思います。




