アフターサービス
まだ約束が残っているのでゴブリンたちに山刀と胸当てを作らなければなりません。
うり坊を無事引渡した俺達は、まずは自由行動を取ることにした。胸当てと山刀を作ってやらねばならないからだ。
「俺はあのゴブリンたちとの約束通り、武具を作る。それまでは各自自由行動です」
「ゴブリンたちに武具を納品するときに一緒に着いていってもいいか?」
「まあいいでしょう。ウリ坊に名前とか付けない様にしてくださいね」
「うっ」
付けるつもりだったようだ。
「なら、私は魔術師ギルドに顔を出してくるわ。リリウムにも基本的な魔法くらいは教えてあげる」
「いいんですか?」
「私が良いって言うんだからいいのよ。まずは生活に必要な魔法一式ね」
ここで言う生活に必要な魔法に火の玉が含まれている理由だが、あれは密度がそれほどでもない上、ピンポン玉くらいの大きさしかないため風呂を温めたり発火するにはちょっと距離を離したい時に使う魔法である。シャーロットの場合は十分な攻撃魔法になるのだが。
そんなわけで別々に行動することになった。
「だが、ユキトのジュウはとにかく強力だと思う。どうにか私に使わせてくれないだろうか?」
「とは言っても、フラン、あなたはまだ付き合いが浅いですし、そこまで信用してないというのが本音でしてね」
現在、フランシスに銃をねだられている。
「それならば読心の魔法を使ってもらっても良い。やましいことは一つも無い。あれがあればもっと多くの味方を守れると思うのだ」
「それなら」
俺は鍛えられた妄想力で読心の魔法を完成させると、フランシスに使った。
「読心」
ふむ、特に疚しいことは考えていないな。ただ、銃に関する情報について制約を設けておこう。
「それならば、銃に関する情報に制約を設けてもらうがそれでもよろしいですか?」
「構わん」
「わかりました。制約」
「ぐ、うう」
「これで銃に関する一般知識は他人に話せない。メンテナンスが簡単でフランでも簡単に使えるものを見繕っておくから、今日のところは宿でおとなしくしておいたほうがいいでしょう。今の魔法で負担が来ている」
「分かった・・・・・・しかし、読心と制約は使ったことが無い魔法ではなかったのか?こうも簡単に使われると魔導士が自信をなくすと思うぞ」
「それは慣れですよ」
主にアニメや漫画などの。
「多く語らないと言うのならばそれでもいい。では、今度私に合うジュウを見繕っておいてくれ」
「分かりました」
しかし、こういう方法もあったんだな。シャーロットとリリウムにも必要か聞いてみよう。リリウムはVSSかP90にサプレッサーを付けてを持たせればいいか。シャーロットは派手な音も大丈夫だから片手でも使えるコルト ガバメントを持たせておこう。
「では、私は一旦作業をするのでお別れです。数日したら合流しましょう。待ち合わせ場所はみんなも居た時に言ったとおり冒険者ギルドへ」
「分かった」
そうして俺は鍛冶ギルドで銅と亜鉛と砥石を買い、真鍮で胸当てを作るのだった。
一応村のゴブリンの胸囲は測ってメモを取ってある。後はこれでインゴットから打ち出すだけなのだが、いかんせん数が多い。まずは山刀からやってしまおう。
これは規格品なので問題は無い。本職じゃないから誤差は出るが、錆びずに使い続けるならこれで十分だ。どんどん作る。
山刀を作り終えたところで、刃付けを行い、柄頭に穴を開けてあるのでそこに紐を通して一束にしておく。
終わったところで胸当てだ。慣れていない分こちらの方が難しい気がする。革でベルトの加工もしないといけないし。
まず、プレス加工で大雑把に形を整えた後、細かいバリを削っての繰り返しをする。この地味な作業が辛いんだ。
そして、10枚ほど胸当てが出来たところで次はベルトの加工をする。革細工ギルドで買ってきたベルトを等間隔に金具を付け、背中で締め付けるように作る。これはゴブリンが2体居れば簡単に出来る作業だ。
多少体格が合っていなくてもベルトで締め付けられるので問題は無い。こうして生産をしていく。
作業に没頭していたらいつの間にか出来上がっていた。ついでにシャーロット、リリウム、フランシスの分の心臓を守れるサイズの小さな胸当てを作った。装甲が増せばその分生存もしやすくなるだろう。
これで約束が果たせるな。そう思いゴブリン村へ向かった。
「グギャ!」
「ギャギャ!」
相変わらず何を言っているのか分からない。
「族長を出してくれ」
「ギャ!」
何か敬礼のようなものをし始めた。俺が分かるように合図を決めていたのか?
「あの仔たちは食べられていないだろうか・・・・・・」
「心配が過ぎるのもどうかと思いますよ」
現在、フランシスと2人でゴブリンの村に来ている。
「人間、モウ出来上ガッタノカ?」
族長が疑問の声を上げるが、手作業は半分くらいなんだ。
「ああ、確認してみてくれ」
「ワカッタ。場所ヲ移ソウ」
「私はあの仔たちを見てくる」
そして族長のテントへ。
「外野ハ気ニシナイデクレト言ッテモ今更ダナ」
族長が苦笑している。最近ゴブリンの表情を読めるようになってきた。
「まあ、構わないよ。では、出すぞ」
「アア、マズハ武器ダッタナ」
俺はゲートから数珠繋ぎになっている山刀を出した。結構な重量だが、レベルアップが効いているのか苦にならない。
「デハ、授与式ヲ始メル」
それを族長はゴブリン達に配っていった。レッドゴブリンの氏族以外はまだ棍棒や木の根だったため、とても喜んでいる。
「次ニ胸当テダッタナ」
「ああ」
これもベルト部分を掴んでまとめて引き釣り出す。
「引キ続キ俺ノ氏族ヘノ授与ダ」
再び並ばせて胸当てを配っている。
「最後に、プレゼントがあるんだ」
「ナンダ、ソレハ?」
「砥石と言ってな。武器の切れ味を保つものだ。やり方は今から教える。刃こぼれの酷いものから貸してくれ」
「ワカッタ」
そうして砥石の使い方も教えるのであった。
「しかしここまで来ると本格的な壁なども使ったほうがいいかもしれないな」
「壁?」
「ああ、壁だ。木を切り倒し、それを柵にするんだ。まあ、興味が出たら教えるから、気が向いたら言ってくれ」
「ワカッタ」
「となると斧か。手入れが今より大変になるかも知れんが、鉄の斧を作ってきてやってもいい。こまめに磨かないと錆びるからな」
「検討シテオコウ」
雑談していると顔をほころばせたフランシスが戻ってきた。
「あの仔たちは元気にしていたよ。大事にされているようで何よりだった」
「それは良かった。なら、明日、みんなに銃器を持たせるか聞いてみるのでそれから改めて依頼を受けよう」
「ああ」
「なら、帰るか」
「壁ノ件、ミンナト相談シテミル」
「分かった」
「じゃあ、帰りましょう。フラン。シャーロットとリリィが待っています」
「そうだな。あれだったらあの仔たちも大丈夫だろう。帰るか」
俺達はゴブリンたちに見送られながらも、帰路に着くのであった。
レッドクリフに居る間フランシスはうり坊から離れられないような気がします。




