せっかくの縁だしお互い得する関係で行きたい
ゴールデンウィークだったので友達と目一杯遊んできました。それと物語シリーズ一気視聴は長かった。
いい加減ガレージに戻るたびに罠を見回るのも面倒になってきたので、どうにかしようと思った。
どうにかするとは、あの言葉の通じる赤いゴブリンに交渉しようと思うのだ。
となると西か。罠を重点的においてあるからちょっと迂回しないといけないな。
そう思い、今日は休みだと二人に伝えに行った。
そして現在、俺はガレージに居る。FN FCARにレールシステムの下にはグリップを変えれば色々な銃のレール規格に対応できるハンドメイドの銃剣を着けておけばいいだろう。
銃剣を振り回すのは最後の手段なので今回もCマグと言うドラムマガジンを着けていく。
後はリボルバー、鉈、ナイフと、短杖をプレートの上から装備し、ナイフを装備している鎖骨の反対側の胸辺りにポーションの瓶を3本着けておく。これでいい。
乱戦になるかも知れなのでヘルメットを被り、髪を末端で縛る。
さて、探そうか。
森の中を練り歩き数時間。あちらからも見つけてくれるように少々雑に目印を付けながら、ゴブリンの集落を探していた。
そうすると「ギャギャ」と言う聞き覚えのある鳴き声が。警戒しながら近づく。
片手にフラッシュバンをゲートから取り出し、銃を構えながら質問する。
「ここに赤いゴブリンが居ただろう。あいつを出せ」
「ギャ!?」
「グギャギャ!」
こちらをひとしきり警戒しながら威嚇し、それでも引かないのでどうするのか話し合い始めた。俺にはやたら「ギャ」が多くてわからん。
相談が終わったらしく、1体がその場を後にし、もう1体が俺の警戒をするようだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互い無言の時間が過ぎる。レベルアップのおかげか、構えた姿勢でもあまり疲れず、こういう地味なところに恩恵が出てるのはありがたい。
「人間、来タ?ドコダ?」
あの赤いゴブリンを連れて来てくれたらしい。
「お前はあのときのゴブリンか?」
「アノ時ノ人間カ」
同一人物らしい。
「取引がしたい。お前はこの辺のゴブリンでは一番偉いのか?」
「アア」
「聞きたいことがある。お前らは狩りと森から実を取って生きているのか?」
「ソウダ」
「ならば話は早い。金属製の武器と畑の作り方を教えてやる。そうすればもっと安全に村を守れるだろう」
提案してみた。
「武器・・・・・・何故ダ?」
「代わりに俺の家を守ってもらいたい。巡回する道を追加する程度で良い。どうだ?」
「モノニヨル」
「分かった。まずは畑からやろうか」
「畑トハナンダ?」
「自分たちで実を育てて採取以外でも安定して食料が取れるようにするんだ」
「フム」
俺はジャガイモをゲートから取り出した。
「これはジャガイモと言う。芽には毒があるが、くりぬけば食べられる。暗いところで保存してけばある程度もつし、育てるのも比較的簡単だ」
アサルトライフルをスリングから吊り下げ、ナイフを抜いてジャガイモを四等分する。
「こうして、ジャガイモの芽を傷つけないように切り、等間隔に畑に埋める。土はふんわりと盛る程度でいいだろう。硬くしすぎるとよくない。これで近場から水を汲んできて、ジャガイモを腐らせない程度にやれば育つ」
「俺ノ家族、アレ以外人間ノ言葉、喋レル。指導シテヤッテホシイ」
アレとは俺が殺したゴブリンの事かな。
「いいだろう」
集落に入れないと仮定しての説明だったが、信用されてるのか?まあ、用心に越したことは無いだろう。
「コレガ俺ノ家族」
「はじめまして」
そこには10体以上の赤いゴブリンが居た。1体普通のゴブリンだが、多分あれは赤いゴブリンの妻か何かだろう。
「父、勉強シタコト、無駄ニナラナカッタ!」
「ハジメマシテ、ニンゲン!」
歓迎されているらしい。
「さて、今日は森の恵み以外に集落に畑を作って飢えないようにしようと教えに来た。ここまではいいかな?」
「ウン!」
一番小さいゴブリンが頷く。コイツが一番分かってなさそうだが。
俺は鍬を振るうため、アサルトライフルをゲートに入れ、サブマシンガンを吊るしていた。今吊るしているのはミニUZIと言う奴だ。マイクロUZIと言うものもあったが、あれは軽すぎて俺には扱えない。今なら筋力で押さえ込めるかもしれないけど。
「では、線を引いた中の石をどけて貰えるかな?そうしたら俺が畑の耕し方を教えよう」
「ワカッタ!」
一番小さいのは元気一杯だ。
そして線引きした中の石ころを全て見えている範囲で集めてもらい、俺は畑を耕し始めた。トラクターなどはここまで来れないので面倒だ。
一列ほど耕したところで聞いてみる。
「誰かやってみたいのは居ないかな?疲れたら代わるから遠慮しなくて良い」
「ハイ、ハイ!」
小さいゴブリンがピョンピョン跳ねている。
「では、そこの君。こう持ってね」
鍬を持たせる。
「ヤルゾ!ホッ、ヤッ、ホッ、ヤッ」
ざくり、ざくりと畑を耕す。
「疲レタ!」
「お疲れさん。次にやってみたいのはいるかな?」
そんな感じで小さめとは言え農耕を教えるのだった。
その後バケツを一つ進呈し、杓で撒いてもらうようにしようと思った。
「礼ヲ言ウ」
「それは実が実ってからにしてくれ」
まだ約束の残りがあるし。
「一応半分は約束を履行したが、そちらも同意したと見ていいな?」
「アア」
「なら、明日に武器を持ってきてやる。楽しみにしていろ」
「ワカッタ」
これで今日の予定が終了した。
翌日、今日も用事で自由行動と伝え、俺は短杖でゲートを拡張し、ガレージに戻ってきた。
「やるか」
夜のうちに真鍮のインゴットは作ってある。10程あればいいだろうとその程度だ。それとステンレスインゴット。これは銃身を作ったりするのに使っている奴だ。
まず、大雑把に型を作り、そこにインゴットを溶かし入れ、形成する。
次に形成したものを冷やし、駆動式のハンマーにはさみ、冷やしたまま変形させていく。
後は適当に刃付けして真鍮製の山刀の完成だ。それとステンレス製は族長用で、こちらは形成した後、再び熱して柔らかくしてからハンマーを入れる。ステンレスは鉄より歪みやすいので注意が必要だ。
ついでに真鍮の杓をプレス機で作り、バケツと一緒に進呈だ。
「昨日ブリ。人間」
「ああ、こんにちはだ」
「妙ナ武器以外手ブラノヨウダガ」
「俺は魔法が使えるからな」
そう言ってバケツと杓を取り出す。
「残りは村に行ってから配ろう。ここからでは重いだろう」
「ソウダナ」
俺達は並んで集落に向かった。
「ニンゲン、待ッテタ!」
どうやら懐かれたらしい。普通の色のゴブリンたちも遠巻きに眺めているが、なにやら畏敬の念が出ているようだ。
「今日は水を汲むときに楽になる取っ手付きの桶と畑に水を撒く道具、そして武器を持ってきたぞ」
『オー!』
これには他の赤いゴブリンも嬉しいらしい。
「よし、開門」
ゲートからまずは一本取り出す。
「まずは族長、お前からだ。とても錆びにくい特別製だからな」
「感謝スル」
ステンレス製の山刀を渡す。
「貰った奴は貰ってない奴の後ろに回ってくれ。順番に並んでくれよ」
ゴブリンたちは顔を見合わせ疑問符を浮かべる。分からないらしい。
「一列に、一人ずつだ」
それはわかったのか、列を作って順番に渡していく。
「行き渡ったな?村を守り、畑を耕す報酬だとでも思ってくれ。それとついでに俺の家だな。巡回路はこれから教えるから、族長、着いて来てくれ」
「俺カ?」
「一番偉いんだからお前が族長だろうに」
「族長カ・・・・・・良イ響キダナ」
「今まではなんて呼ばれてたんだ?」
「オサダ」
「まあ、分かればいいだろう」
これから族長って自称するのかは知らんけど。
「これから頑張って何事も無かったら報酬にお前らにも武器を作ってやるぞ。我はと言う者は頑張ってくれ」
その言葉を族長が通訳し、沸くゴブリン。嬉しいらしい。
「武器をやっても良いと言う奴は族長、お前が決めてくれ。頑張り次第を平等にな。訳隔てなくって意味だ。じゃ、行こうか」
「ワカッタ。行クカ」
これで罠を設置しなおす機会も減るかな。そう期待して案内をするのであった。
ゴブリンの山刀は鞘が無いので刃は鈍いです。どちらかと言うと肉厚な斧に近い使い心地。