ドラコの気持ち
むかしむかし、魔のものを従え世界の征服を企んだ魔王がいました。
しかし、人間と対立し数世紀にわたる戦争が起こりました。
最初こそ魔王率いる軍勢に押されますが、勇者の誕生により戦況は徐々に人間側に傾きます。
そしてついに勇者の刃は魔王の城にまで届くまでに……
魔王は状況が好転しないことを悟り世界の半分を差し出す代わりに、人間側に和平を結ぶことを提案。
勇者は自国の被害をこれ以上広げないためにその提案を承諾、人間と魔族の平和を望む形でこの戦争は幕をおろしました。
この話はそれから数百年後の話。
ひらけた洞窟の中心部、四人の冒険者がいた。
パーティメンバーは皆違った種族であり、リーダーのドラコを始め、竜族、獣族、エルフ族、人族と様々だ。
真っ暗で手元のランタンがなければ今にも吸い込まれそうな暗闇をコツコツと揃えた足音を反響させ歩くなか、一人だけその足並みを乱すように歩数を減らすメンバーが……
「おいノロマっ、とろとろ歩くんなら置いてくぞ?」
「荷物持ちもマトモにできないなんて、これだからヒューマンは……」
「まっ、待ってください……ゴブリンに刺されたところが……すこし休憩を……させて……ください!」
どんどん彼女らとの距離が広がる。
人間の少年ロレルは片膝を地面につけてメンバーに懇願する。
今にも息絶えそうな声を聞き、やっとリーダーが足を止める。
「やはり人間は弱いな……みな一旦ここで休憩しよう。」
「えー、リーダーオレは全然動けるぜ?人間の尺度に合わせたらまた日が暮れちゃうじゃん」
「ミレアさんの言うとおりですわ。ヒューマンなんて置いていけばいいでしょう?」
獣族のミレアとエルフのチシリアが抗議の声を上げる。
「そろそろ洞窟の最奥につく。そこに今回の討伐対象がいるわけだが、ここのところ連戦続きでこういった何も無い場所は休憩所場所として貴重だ。ここで備品や装備を整えボスに備える。わかったか?」
ドラコは少し強めの口調でメンバーに言い聞かせる。
「にゃ……はいはいリーダーのおおせのままに……」
「くっ、仕方ないですわね。」
ミレアとチシリアは不満なようだが納得したようで、岩場に腰掛ける。
「あ、ありがとうございます!ドラコさん」
やっと彼女らに追いついたロレルはドラコに感謝の言葉を伝える。
しかし、ドラコはギロッとロレルに目線を合わせると、グルグルと喉を鳴らす。
その音を聞き、ロレルは一歩後ずさってしまう。
なぜなら、それは彼女竜族が相手を威嚇するときに無意識に出る威嚇信号だからだ。
「ごめんなさい!僕が弱いばっかりにみんなに迷惑かけてしまって!これからは……」
「勘違いするな、パーティーの安全を選択したまでだ。数時間後にはここを出発する。私は少し席を外す、お前は早く傷をチシリアに治して貰え」
ドラコはブンブンと尻尾揺らしメンバーのもとに向かった。
怒られると身構えていたロレルはあっさりとした慰めとも取れる言葉に拍子抜けしてしまった。
「おーい人間、喉乾いたお茶用意してよお茶!」
「あ、はっはいすぐ準備します!」
遠くからお茶の用意を催促するミレアの声で我に返り、ロレルは仲間の元へと走っていった。
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うぅ、ロレルにありがとうって言われちゃった……♡
すっごい笑顔で、純粋無垢な顔で……♡また間違えて求愛行動しちゃたけど、みんなには恥ずかしくて本当の意味伝えられてないからロレル怖がらせちゃったよぉ、嫌われてないかなぁ……。
トイレに行くと理由をつけて一人になったドラコは、今日のロレルの行動の一つ一つを鮮明に思い出しながら思いにふけっていた。
ある日の三人でカジノの帰り際、ふらっと目に入った奴隷商が目に入った。依頼には危険度があり、報酬が多くなるほど危険度に合わせ同行するメンバーが増す仕組み。
当時のパーティーは私を含めチシリアとミレアで攻守共に完成されていた。
依頼を撤退や失敗など一度もしたことがない。
一つ問題とすれば高難易度の依頼の原則、四人以上のパーティーに当てはまらない事だけだった。
手持ちは今回のカジノの勝ち額を足せば十分にある。
最初はほんの興味本位だ。
気になる奴がいなければすぐに退店するつもりだった。
だが、奥へ進む中で出会ってしまったのだ。
「僕を買って下さい!絶対に後悔させませんから!!」
「ドラコ、お前正気か?いくら依頼人数の数合わせの為だとはいえ、奴隷しかも人間を買うなんて……」
「そうですわ、人間は筋力も頭脳も最低のゴミ種族です。遅かれ早かれ私達の足手纏いになりますわ。」
「私の金で買うんだから文句はないだろ、それに人間は短命だ。強くなろうが弱くなろうが結果はすぐ出る。お前、名前は……?」
「名前……、ろれる……、ロレルですっ!」
ロレルが入ってからだこんな気持になるようになったのは……♡♡
彼がパーティーに加わってからというもの、私達の戦闘を付箋だらけの手帳にメモしながらも、雑用から身の回りの金銭のやり取りまで慣れない仕事を健気にこなす姿に段々と心惹かれていった。
そんな姿に私は彼を気にかけていき、ついにはメンバーと離れた時にはロレルの思いの丈をこうやって吐き出さねば戦闘に支障がでかねない状態にまでなってしまった。
人間なんて私たちの足元にも及ばない雑魚種族なのに、上位種に搾取されるだけの惨めな人生だけを送っていればいいと思っていたのに、ロレルだけは護りたくなってしまう♡甘やかしてしまう♡自分のモノだけにしてしまいたくなる♡
ふー♡ふー♡この気持ちは抑えなければ、いつ仲間に本音をぶちまけてしまうかわからない♡
私はメンバーの前では厳格なリーダーなのだ。チシリアやミレアは人間をよく思っていない、私だって今も人間自体は嫌いだ。
だから絶対に私の印象を崩してはならない、今までもこれからも……。
うぅ、しかしロレルと二人きりに機会があれば思いの丈を話すぐらいならいいかも知れない。彼は素直だし、聞き分けがいいし、ちゃんと理解してくれる……。
「リーダー、いやドラコさん僕、ドラコさんのこと大切に思っています……」
「ふふ、ロレル、私もお前のことが……」
「ろれる?何言ってんのリーダー?」
「うわぁぁぁああっ!!」
脳内のセリフを再生したところに素っ頓狂な声でミレアが現れる。
「うわビックリした」
「ビックリしたのはこっちだ!トイレなんだからそっとさせてくれ!」
「いや、ちょっと急を要することでさ、洞窟だからリーダーは場所分かんないし見つけられてよかったわ」
「……で、要件はなんだ……?」
「もしかしてリーダートイレ以外もしてた?服乱れちゃってるし、その気持ち分かるよリーダー、こうも集団生活だとお互いの貞操を管理するってムズイよなぁ、オレだって発情期の時とか……」
「聞いてもないことを喋るな!要件はなんだと聞いてるんだっ!」
服を直しながらドラコはミレアの話を中断するよう怒鳴る。
「わ、わかったから!んな怒んなよなぁ……。実は人間の奴がさ、チシリアが大事にしてたポーション一式を保存法を間違えたかなんかで全部ダメにしたらしい……。」
「え……?」
「それがあってチシリアの奴手が付けれないんだよ。だからリーダーが間に入ってくんないかなって?」
ドラコはミレアと共に急いでもといた場所に戻ると、険悪な顔持ちで仁王立ちするチシリアとぷるぷると震え血の気の引いた顔で正座しているロレルの姿があった。
読んでくれてありがとうございます。
上種族のお姉さんに甘やかされる設定が好きなんですけど、せっかく書くならちゃんとした舞台設定も追加しとこうで欲張りながら作った作品です。
前置きというか、前戯が長いですが、少しずつギアを上げていきますので付き合ってくれると幸いです。
出来れば後から立ち絵とか追加できたらしますんで、やり方教えて下さい




