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転生悪役令嬢は、ヒロインを攻略したいだけなのに…  作者: 花野 柑
後日譚:2人のイチャイチャ
9/16

後日譚1:付き合い始めた翌日が、もう好きだらけだった

ご感想で2人のイチャイチャがみたいというのをいただいたので、執筆いたしました。

恋人になって、初めての朝。


自室の大きな鏡の前で髪を整えている私は、まだ少し夢見心地だった。


「……リリィと、両想い……」


口に出してみると、胸がくすぐったくなる。

あの噴水の前で、お互いの気持ちをぶつけ合ったあの瞬間。あれは現実だった。夢なんかじゃない。


「よし……よし。今日からは、恋人同士としての一日が始まるのよ、クラリス・ヴァレンティーナ!」


頬を叩いて気合を入れる。

鏡の中の自分が少しだけ照れて見えた。


◇◇◇


登校中、校門の前で待っていたのは――もちろん、彼女だった。


「クラリス様、おはようございます」


そう言って微笑んだリリィ・アルシェは、今日も世界一可愛かった。

朝日を受けたプラチナブロンドの髪がきらきらしていて、瞳はまるで宝石のように輝いている。


「おはよう、リリィ。今日も一段と麗しいわね」


「クラリス様のリボン……もしかして、私がプレゼントしたやつですか?」


「ふふん、気づいた? もちろん、恋人からの贈り物ですもの。つけない理由なんてないわ」


「……もう、そういうところ、好きです」


そう言って彼女は、そっと私の手を握った。

昨日より、少し強く。少し近く。


手のひらからじんわりと伝わってくる温度が、嬉しすぎて泣きそうになる。


「ね、クラリス様」


「なに?」


「今日も、手……繋いで行きましょう?」


「ええ、もちろんよ。……というか、むしろ私の方からお願いしたかったくらいだわ」


彼女の笑顔が、ぱあっと咲く。


ほんの数日前までは、彼女とこんなふうに登校できる日が来るなんて、思いもしなかった。

悪役令嬢としての破滅ルートしかなかったはずのこの世界で、私はたった一つだけ願いを叶えた。


(――リリィと、両想いになること)


それだけで、この世界に転生した意味があったと思える。


◇◇◇


校内に足を踏み入れた瞬間、周囲の空気が変わったのを私は感じた。

気のせいじゃない。確実に、視線が集まってる。しかも、すごい勢いでスマホが構えられてる。


(……おかしいわね。リリィとはこっそり手を繋いでるだけよ?)


──と、思っていたのは私だけだった。


「っ……クラリス様、あそこ……!」


リリィが指差す先には、廊下の陰に隠れてるつもりのクラスメイト、カトリーナ嬢の姿があった。

手にはノート。首からカメラ。しかも双眼鏡まである。なにその装備。


「お二人……ついに正式にお付き合いを始められたのですね……! 推しが、尊い……」


カトリーナ嬢は感極まったように呟き、ノートに「第百三章:恋人始動編」を書き込み始めた。


「や、やっぱり……バレてる……!?」


「クラリス様、すでに完全に……公認カップルです……」


私の手を握るリリィが、少し照れたように笑った。

でも、嫌がるどころか、誇らしげに胸を張っていた。


「ならもう、堂々としていましょう。私たち、恋人ですから」


「……ああもう、ほんとに好き。好きすぎて私、明日爆発するかも」


「じゃあ、私が隣で看取ります」


「死因:可愛さの過剰摂取。……ってリリィ、真顔で言わないで!」


通学路の階段を並んで歩きながら、私たちは何度も笑い合った。


──付き合い始めた翌日。

世界は変わらないのに、私の視界はもう、彼女一色だ。


(好き。……好きすぎて、困る)


でもそれでいい。


これが“恋人”ってやつなんだから。

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