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第8話:最適化された初級魔法

「――Activate:Photon」


僕がその奇妙な言葉を口にした、瞬間。


ポッ。


僕の人差し指の先に、小さな、しかし、太陽のように眩い光の玉が生まれた。

それは、訓練場の薄暗がりを、真昼のように明るく照らし出した。


「うわっ!?」


僕は、思わず目を見開いた。

信じられない。本当に、魔法が使えた。

魔力ゼロの、この僕が。


光の玉は、数秒間、安定して輝き続けた後、ふっと消えた。

消費したMPは、わずかに「1」。ステータスウィンドウがそう示している。


《『灯り(ライト)』の発動に成功。消費マナ、従来の術式の約50分の1。素晴らしい効率です、マスター》


あいりは、満足げに言った。

僕の感動をよそに、彼女は冷静に結果を分析している。


「す、すごい……すごいじゃないか、あいり!」

《当然の結果です。私の計算に間違いはありませんから。しかし、喜ぶのはまだ早いですよ。これは、ほんの小手調べに過ぎません》


あいりの言葉に、僕はゴクリと喉を鳴らす。


《次は、攻撃魔法に挑戦します。対象は、前方20メートル先にある木人の的。魔法は『火の(ファイアボール)』。これも初級魔法ですが、通常は発動にかなりの集中力と魔力を要します》


僕の視界に、再びマナの流れを示すガイドラインが表示される。

今度は、先ほどよりも複雑なルートだ。


《先ほどと同様に、マナを練り上げ、術式を構築します。ただし、今度はより精密なコントロールが要求されます。的の中心から、右に3ミリずれた位置を狙ってください》

「3ミリ!? そんなの分かるわけ……」

《ご安心を。マスターの視界には、すでにミリ単位で補正された照準が表示されています。あなたは、ただ、その中心に意識を合わせるだけです》


見ると、確かに木人の中心から、わずかに右にずれた位置に、赤い十字カーソルが点滅していた。

ゲームの照準アシストみたいだ。


《詠唱時間は、0.5秒。通常の術式よりも大幅に短縮しています。タイミングが重要なので、私の合図で発動してください》


僕は、あいりの指示通りに、意識を集中させる。

体内の微かなマナが、熱を帯びていくのが分かる。


《――3、2、1……今です!》


「――Ignition!」


あいりが指定した、新たな詠唱を叫ぶ。

すると、僕の手のひらから、バスケットボール大の火の玉が撃ち出された。


それは、一直線に木人へと飛んでいき――


ドォォン!


轟音と共に、木人の右肩部分に命中し、爆発した。

木人は、肩から先が無残に吹き飛んでいる。


「……ま、マジか……」


僕は、自分の手がやったこととは信じられず、呆然と立ち尽くした。

これが、初級魔法? 威力が、尋常じゃない。


《完璧です、マスター。着弾点の誤差、わずか0.1ミリ。消費MPは3。素晴らしい精度と燃費です。これなら、どんな依頼でも……》


あいりが得意げに解説している、その時だった。


「……あの」


背後から、凛とした、少女の声が聞こえた。

僕は、ビクリと肩を震わせて振り返る。


そこに立っていたのは、銀色の鎧に身を包み、腰に剣を下げた、美しい少女だった。

夕日に照らされた亜麻色の髪が、キラキラと輝いている。

その瞳は、驚きに見開かれ、僕と、僕が破壊した木人を、交互に見ていた。


「……今の魔法、あなたが?」


少女は、信じられないといった様子で、僕に尋ねた。

その声には、わずかな緊張と、そして、隠しきれない賞賛の色が滲んでいた。

◆ ◇ ◆

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