第59話:準決勝の舞台
セドリックとの試合後、トオルは控え室に戻り、エリナとあいりからの称賛を受けていた。
「トオル様、本当にすごいです!あのセドリック様を、まるで手玉に取るように…!」
エリナは目を輝かせている。あいりも脳内で満足げに頷く。『当然です。私の解析にかかれば、どんな魔法もただの数式に過ぎませんから』
しかし、トオルは浮かれることなく、次の対戦相手の情報をあいりに求めた。
「あいり、次の相手は?」
『準決勝の相手は、魔術師ギルドの現役最高位魔導師、グランドマスター・エルドレッドです。彼は長年、王宮魔導師団の筆頭を務め、その実力は王国随一と謳われています』
あいりの声に、わずかな緊張が混じる。エルドレッドは、セドリックとは格が違う。経験、知識、そして純粋な魔力量、全てにおいてトオルを凌駕しているだろう。
「グランドマスター…ですか。それはまた、とんでもない相手ですね」
トオルは思わず呟いた。エリナも顔色を変える。
「エルドレッド様は、伝説級の魔導師ですわ。彼が本気を出せば、王都一つを消し飛ばすとも言われています…」
『彼の魔法は、単なる魔力操作に留まりません。長年の経験から培われた、魔力の流れを読み、相手の思考すら誘導するような、まさに「術」の領域に達しています』
あいりが分析結果を伝える。これまでの相手とは異なり、エルドレッドはあいりの「解析」だけでは攻略できない可能性があった。彼の魔法は、データだけでは測れない「人間」の領域に踏み込んでいるのだ。
「つまり、あいりの予測を超えるってことか?」
トオルの問いに、あいりは珍しく沈黙した。そして、ゆっくりと答える。
『…可能性はあります。彼の魔法は、私のデータベースには存在しない「不確定要素」を多く含んでいます。しかし、だからこそ、攻略のしがいがあるというものです』
あいりの言葉に、トオルは静かに頷いた。エルドレッドは、あいりにとっても未知の領域。それは同時に、トオル自身がAIに頼るだけでなく、自らの判断力と応用力を試される、真の試練となるだろう。
準決勝の舞台は、王都の中心にある巨大な闘技場。観客席は満員で、熱気が渦巻いている。トオルは、エルドレッドの放つ圧倒的な魔力のプレッシャーを感じながら、静かにその時を待っていた。




