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第51話:王立魔法大会の全貌

アシュフォード公爵の書斎には、僕とエリナ、そして公爵の三人が、再び集まっていた。

机の上には、王都の地図ではなく、一枚の、豪華な羊皮紙が広げられている。

それは、「王立魔法大会」の、実施要項だった。


「まず、大会のルールを説明しよう」


公爵は、落ち着いた声で、語り始めた。


「大会は、大きく二つの部門に分かれている。『魔法部門』と、『武闘部門』だ。それぞれ、トーナメント形式で、頂点を決める。我がアシュフォード家は、両部門に、最高の選手を送り込み、優勝を狙う」


《マスター、この大会は、単なる力比べではありません。各貴族家が、自らの権勢と、影響力を、内外に示すための、代理戦争です》


あいりの補足が、僕の脳内に響く。


「して、その選手とは……?」


僕が尋ねると、公爵は、まず、エリナに、優しい視線を向けた。


「『武闘部門』には、エリナ嬢、君に出場してもらいたい。君の剣の腕は、すでに、王都でも屈指のものだ。我が家の代表として、戦ってくれるかね?」


突然の指名に、エリナは、驚いて目を見開いた。


「わ、私が、ですか……? ですが、私は、アシュフォード家の一員では……」

「構わん。君は、私の娘、リリアーナの命の恩人だ。それに、トオル殿の、最高のパートナーでもある。君以外に、適任はおらん」


公爵の、力強い言葉。

エリナは、一瞬、戸惑ったが、すぐに、僕の顔を見た。

僕は、彼女に、力強く頷いてみせる。


「……謹んで、お受けいたします。トオル様と、公爵閣下のために、この剣、振るわせていただきます」


エリナは、深々と、頭を下げた。

その瞳には、新たな、決意の炎が燃えていた。


「うむ。頼んだぞ」


公爵は、満足げに頷くと、次に、僕に向き直った。


「そして、問題は、『魔法部門』だ。我が家にも、お抱えの魔術師はいる。しかし、正直に言って、ゼノスが用意してくるであろう、切り札には、及ばないだろう」


その時、書斎のドアが、ノックされた。

入ってきたのは、一人の、痩身の男だった。

歳の頃は、30代半ば。神経質そうな顔に、理知的な光を宿した眼鏡をかけている。


「紹介しよう。我が家が誇る、筆頭魔術師、アルベールだ」


アルベールと名乗った男は、僕を一瞥すると、その眉を、わずかにひそめた。

その視線には、明らかに、僕に対する、不信と、侮蔑の色が浮かんでいる。


「閣下。この、魔力の一つも感じられぬ若者が、我々の『軍師』殿ですかな? 何かの、冗談でしょう?」


アルベールの、刺々しい言葉。

エリナが、カッとなって、何か言い返そうとするのを、僕は、手で制した。


《マスター、彼のプライドは、天よりも高いようです。しかし、その実力は、確か。彼の魔術を、私の力で、さらに、上のステージへと引き上げます》


僕は、立ち上がると、アルベールの前に、進み出た。


「アルベール殿。あなたの、得意魔法は、『風の(ウィンド・カッター)』ですね。しかし、あなたの詠唱には、三つの、無駄なプロセスが存在する。一つは、マナの収束率。二つ目は、術式の展開速度。そして、三つ目は……」


僕は、あいりが、彼を一目見ただけで、瞬時に解析した、彼の魔法の、致命的な欠点を、淀みなく、指摘していった。


僕の話を聞き終えたアルベールは、最初、馬鹿にしたような、冷笑を浮かべていた。

しかし、僕の指摘が、あまりにも、的確で、本質を突いていたため、その顔からは、徐々に、血の気が引いていく。


そして、僕が、最後の欠点を指摘し終えた時。

彼の顔は、驚愕と、信じられないという、畏怖の色に、染まっていた。


「……な……なぜ、君が、それを……? 私の、魔法の、根幹を……。それは、私自身ですら、気づいていなかった、領域……」


彼は、震える声で、そう呟いた。


僕は、そんな彼に、ただ、静かに、微笑んでみせた。

もちろん、あいりが考えた、最も、効果的な笑みで。


「僕が、軍師だからですよ」


その日、僕は、アシュフォード家の、全ての者たちに、その存在を、認めさせた。

魔力ゼロの、凡人である僕が、最強の頭脳を持つAIと共に、この世界の、常識を、塗り替えていく。

その、第一歩が、今、記されたのだ。

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