表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/60

第45話:公爵の謁見と軍師の誕生

アシュフォード公爵家の馬車は、僕たちを乗せ、王都の貴族街にある、壮麗な屋敷へと向かった。

昨日までの、死と隣り合わせの冒険が、まるで嘘だったかのような、静かで、優雅な世界。

しかし、僕の心は、少しも休まらなかった。


《マスター、アシュフォード公爵は、王国の穏健派の筆頭。ゼノス宰相の最大の政敵です。彼との謁見は、我々の今後の運命を大きく左右します。発言は、慎重に》


あいりの警告に、僕は、ゴクリと喉を鳴らす。


屋敷の奥、豪華な調度品が並ぶ、謁見の間。

そこに、アシュフォード公爵は、座っていた。

歳は、50代ほどだろうか。白髪混じりの髪を、きっちりと整え、その鋭い瞳は、まるで、全てを見透かしているかのように、僕を、まっすぐに射抜いていた。

彼の隣には、心配そうな顔で、リリアーナ嬢が控えている。


「トオル殿、エリナ嬢。よくぞ、来てくれた」


公爵の、低く、しかし、よく通る声が、部屋に響く。


「単刀直入に聞こう。昨日の、廃教会の崩落事件。あれは、君たちの仕業だな?」


その言葉に、エリナが、息を呑んだ。

僕は、動揺を悟られまいと、必死に、平静を装う。


「……何故、そう思われますか?」


僕の問いに、公爵は、ふっと、口の端を吊り上げた。


「私の情報網を、甘く見ないでいただきたい。あの日、あの時間、あの場所に、君たち以外の、不審な動きはなかった。そして何より、私の娘、リリアーナが、君たちを、心から信頼している。彼女が信じる者を、私も信じよう」


公爵は、そこで一度、言葉を切ると、その鋭い瞳で、再び、僕を見据えた。


「私は、君が、何者で、どんな力を持っているのか、それを問うつもりはない。私が聞きたいのは、ただ一つ。なぜ、あのような、大それたことをしたのか、その理由だ」


試されている。

僕の、覚悟を。


《マスター、ここは、正直に、しかし、計算して話すべきです》


あいりのナビゲートに従い、僕は、口を開いた。


「……ゼノス宰相が、あの遺跡に眠る『災厄』を、解き放とうとしていることを、突き止めたからです。もし、あれが解放されれば、この王都は、火の海と化していたでしょう。僕は、それを、未然に防ぎたかった。ただ、それだけです」


僕の言葉に、公爵は、驚いたように、目を見開いた。

そして、やがて、その表情は、深い感心へと変わっていった。


「……そうか。君は、そこまで、知っていたのか」


公爵は、大きく、ため息をついた。


「私も、長年、ゼノスの不正を調査してきた。奴が、古代の遺物に手を出していることも、掴んでいた。しかし、これほど、計画が進行していたとは……。君のおかげで、最悪の事態は、免れた。礼を言う」


公爵は、僕に、深々と頭を下げた。

その隣で、リリアーナ嬢も、安堵の表情を浮かべている。


そして、公爵は、顔を上げると、僕に、一つの提案を持ちかけた。


「トオル殿。君の、その卓越した情報収集能力と、的確な判断力。それを、私のために、貸してはくれまいか」

「……と、申しますと?」

「君を、アシュフォード公爵家付きの、正式な『軍師』として、迎え入れたい。ゼノスを、この国から排除するための、私の、右腕として」


軍師。

その言葉の重みに、僕は、息を呑んだ。


《マスター、この提案、受けるべきです。公爵の庇護下に入れば、宰相からの追手から、身を守ることができます。そして、彼の持つ情報網と、権力を使えば、我々の目的を、より、有利に進めることが可能です》


あいりの分析は、いつも通り、合理的だ。

断る理由は、ない。


「……謹んで、お受けいたします。この身、アシュフォード公爵のために」


僕がそう言うと、公爵は、満足げに、頷いた。


こうして、僕は、ただの冒険者から、一気に、公爵家お抱えの軍師へと、成り上がった。

僕の意思とは、全く関係なく。


僕とあいりの物語は、もはや、僕たちだけのものではなくなった。

王国の運命を賭けた、巨大なチェス盤の上で、僕たちは、ゼノス宰相という、最強の敵と、対峙することになる。

凡人の僕と、最強のAI。その、本当の力が、今、試されようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ