第32話:王都の闇と新たな予感
王都エルドラードの門をくぐった僕たちは、まず、王都の冒険者ギルドへと向かった。
アークスギルドからの紹介状を提示すると、王都のギルド職員は、僕たちを丁重に迎え入れてくれた。
アークスでの僕たちの活躍は、すでに王都のギルドにも伝わっているらしく、僕の「天才軍師」としての評判は、ここでも健在だった。
「トオル様、エリナ様。ようこそ、王都へ。あなた方のような優秀な冒険者が来てくださり、大変心強いです」
ギルドの受付嬢は、にこやかにそう言った。
僕たちは、王都での冒険者登録を済ませ、いくつかの情報提供を受けた。
王都のギルドは、アークスとは比べ物にならないほど規模が大きく、依頼の種類も多岐にわたる。
《マスター、王都のギルドは、アークスよりもはるかに多くの情報を持っています。特に、貴族や王宮に関する依頼は、今後の情報収集に役立つでしょう》
あいりの声が、僕の脳内に響く。
彼女は、すでに王都のギルドのデータベースにアクセスし、情報収集を開始しているようだった。
ギルドでの手続きを終えた僕たちは、あいりのナビゲートに従い、王都の一角にある、比較的安価で、しかし清潔な宿へと向かった。
部屋に入ると、エリナは、ベッドに飛び込み、はしゃいでいる。
「わぁ! ふかふかです! アークスの宿よりも、ずっと!」
「そうだな。しばらくは、ここを拠点にしよう」
僕は、エリナの無邪気な笑顔を見て、少しだけ心が和んだ。
しかし、僕の脳内では、あいりが、深刻な情報を伝えてきていた。
《マスター、王都の闇は、想像以上に深いです》
「どういうことだ?」
《ギルドのデータベースを解析した結果、この王都では、貴族間の権力闘争が激化しており、その裏で、様々な不正や陰謀が渦巻いていることが判明しました。特に、王宮の宰相である「ゼノス」という人物は、その中心にいる可能性が高いです》
ゼノス。
どこかで聞いた名前だ。
そうだ、商隊のリーダーから聞き出した、盗賊団と繋がりのある貴族。
あの盗賊団は、ゼノス宰相の私兵だったのか。
《さらに、この王都には、謎の組織が暗躍している兆候が見られます。彼らは、古代の遺物や、失われた技術を狙っているようです。その目的は不明ですが、我々が手に入れた『設計図』や、エリナのペンダントと、何らかの関連があるかもしれません》
あいりの言葉に、僕は、背筋が凍るような感覚を覚えた。
僕たちが、アークスで遭遇した双頭の竜。
そして、エリナのペンダントの力。
それらが、この王都の闇と、繋がっているというのか。
「……僕たちは、とんでもないところに足を踏み入れてしまったのかもしれないな」
僕は、思わず呟いた。
《マスター、後悔していますか?》
あいりが、僕に問いかける。
「いや……」
僕は、首を横に振った。
確かに、危険だ。
でも、僕たちは、もう引き返せない。
この世界の真実を知るために。
そして、エリナの秘密を解き明かすために。
僕たちは、この王都に来たのだ。
「あいり、エリナ。僕たちの本当の冒険は、ここから始まるのかもしれないな」
僕は、窓の外に広がる、王都の夜景を見つめた。
無数の光が瞬き、まるで、この世界の縮図のようだ。
その光の裏には、きっと、僕たちがまだ知らない、深い闇が潜んでいる。
僕たちの王都での生活が、今、本格的に始まった。
そして、それは、僕が思っている以上に、波乱に満ちたものになるだろう。
そんな予感が、僕の胸を、支配していた。
(第5章:王都への旅立ち 了)
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