第31話:王都エルドラードの門
王都エルドラードの巨大な城壁が、僕たちの目の前に立ちはだかっていた。
その高さは、ゆうに30メートルを超え、どこまでも続くかのように、左右に伸びている。
城壁の上には、等間隔で兵士が配置され、その威容は、アークスの街とは比べ物にならない。
「すごい……」
エリナが、感嘆の声を漏らす。
僕も、その圧倒的なスケールに、思わず息を呑んだ。
僕がいた世界で、これほど巨大な建造物を見たのは、万里の長城の映像くらいだ。
《マスター、王都エルドラードは、この大陸最大の都市であり、アークランド王国の首都です。人口は約50万人。政治、経済、文化の中心地であり、様々な人種や文化が入り混じっています》
あいりが、僕の脳内に、王都の情報を流し込んでくる。
その情報量に、僕の頭は、パンクしそうだ。
僕たちは、商隊と共に、王都の正門へと向かった。
門の前には、長蛇の列ができており、入市を待つ人々でごった返している。
荷馬車、商人、旅人、冒険者……。
様々な人々が、それぞれの目的を持って、この巨大な都市を目指している。
「身分証を提示せよ!」
門番の兵士が、威圧的な声で叫ぶ。
その声は、まるで雷鳴のようだ。
僕たちは、商隊の護衛として、列に並ぶ。
《マスター、身分証の提示を求められます。アークスギルドからの紹介状を提示してください。その際、エリナの身分も、商隊の護衛として、偽装しておきましょう》
あいりの指示に従い、僕はアークスギルドの紹介状を兵士に差し出した。
兵士は、僕の紹介状をじっと見つめ、やがて、僕の顔を値踏みするように見た。
「ふむ……アークスのギルドからの紹介状か。お前が、あの『天才軍師』とやらだな」
兵士の言葉に、僕は、思わず身を固くした。
まさか、こんな王都の門番まで、僕の噂を知っているとは。
《マスター、あなたの評判は、すでにこの王都にも届いています。これは、我々にとって有利に働くでしょう》
あいりの声が、僕の脳内に響く。
僕の意図とは裏腹に、僕の評判は、どんどん一人歩きしているようだ。
兵士は、僕の紹介状を返すと、エリナの方を見た。
「そちらの娘は?」
「彼女は、僕の護衛です。エリナと言います」
「ふむ……。では、通行税として、金貨1枚を徴収する」
兵士の言葉に、僕は、思わず目を見開いた。
金貨1枚。アークスでは、銀貨数枚だったのに。
王都の物価は、想像以上に高いようだ。
僕は、あいりの指示通り、金貨1枚を兵士に渡した。
兵士は、金貨を受け取ると、無表情に頷き、僕たちに門を通過するよう促した。
こうして、僕たちは、ついに王都エルドラードの門をくぐった。
門を抜けると、そこには、想像を絶する光景が広がっていた。
石畳の広い通りには、馬車や人々がひしめき合い、活気に満ちている。
高くそびえ立つ建物群は、どれも精巧な装飾が施され、その美しさに、僕は思わず見とれてしまう。
行き交う人々も、アークスとは違い、身なりの良い貴族や、ローブをまとった魔術師、そして、様々な種族の者たちが、入り混じっている。
「すごい……これが、王都……!」
エリナが、目を輝かせながら、周囲を見回している。
その表情は、まるで、子供のようだ。
《マスター、まずは、ギルドに立ち寄り、情報収集と、今後の活動の拠点確保を行いましょう。その後、宿を取り、エリナのペンダントと、『設計図』の本格的な解析を開始します》
あいりの声は、いつも通り、冷静で、的確だ。
僕たちの王都での生活が、今、始まった。
しかし、この王都には、僕たちがまだ知らない、多くの謎と、危険が潜んでいる。
そして、僕たちの存在が、この王都の、そして、この世界の運命を、大きく揺るがすことになるなど、この時の僕は、まだ、知る由もなかった。
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