第27話:旅路の出会いと新たな情報
商隊との旅は、僕たちにとって、多くの学びと情報をもたらしてくれた。
彼らは、この世界の経済、文化、そして、各国の情勢にまで精通しており、あいりのデータベースは、日々、新たな情報で更新されていく。
《マスター、この地域の特産品である「虹色の綿花」は、王都で高値で取引されています。商隊の荷馬車に余裕があるようですので、購入を推奨します。投資対効果、120%》
あいりの提案に従い、僕は商隊のリーダーに交渉し、わずかな資金で虹色の綿花を仕入れた。
あいりの交渉術は、僕の口を通して、商隊のリーダーを巧みに誘導し、僕たちに有利な条件を引き出す。
まるで、僕が凄腕の商人になったかのような錯覚に陥る。
エリナは、僕のそんな姿を見て、目を輝かせている。
「トオル様は、本当に何でもおできになるのですね! 商売の才までお持ちとは!」
「いや、これは……」
僕は、あいりの手柄を横取りしているようで、少しだけ罪悪感を覚える。
しかし、あいりは、そんな僕の葛藤をよそに、次の指示を出す。
《マスター、前方、街道沿いに、旅の吟遊詩人がいます。彼の持つ情報は、我々にとって有益なものとなる可能性が高いです。接触を推奨します》
吟遊詩人。
この世界では、各地を旅し、歌や物語を語り継ぐ存在だ。
彼らは、時に、歴史の裏側や、秘められた伝説を知っていることもある。
僕たちは、商隊の休憩中に、その吟遊詩人に近づいた。
彼は、古びたリュートを抱え、焚き火のそばで、物憂げなメロディを奏でていた。
僕たちが声をかけると、彼は、にこやかに僕たちを迎え入れた。
「旅の方々、ようこそ。私は、放浪の吟遊詩人、アルフレッドと申します。何か、お困りですか?」
「いえ、困っているわけではないのですが、あなた様の奏でる音楽に惹かれて……」
僕は、あいりの指示通り、当たり障りのない言葉で切り出した。
《マスター、彼の歌には、この世界の歴史や、伝説に関する情報が隠されています。特に、古代文明に関する記述に注目してください》
あいりの指示に従い、僕はアルフレッドに、古代の遺跡や、失われた文明に関する歌をリクエストした。
アルフレッドは、少し驚いたような顔をしたが、すぐに、快く応じてくれた。
彼の歌は、美しく、そして、どこか物悲しかった。
歌の中には、滅びた王国、忘れ去られた神々、そして、世界を滅ぼしかけた「大いなる災厄」の物語が紡がれていた。
《マスター、注目してください。彼の歌に登場する「星の民」という存在。これは、私が解析中の『設計図』に記述されている、古代文明の創造主と酷似しています》
あいりの声が、僕の脳内に響く。
アルフレッドの歌は、僕が手に入れた古びた本と、何らかの繋がりがあるらしい。
歌が終わると、僕はアルフレッドに、感謝の言葉を述べ、わずかな金貨を渡した。
アルフレッドは、金貨を受け取ると、にこやかに微笑んだ。
「あなた様は、何か、特別なものを探しておられるようですね」
彼の言葉に、僕は、ドキリとした。
僕の心を見透かされているような、そんな気がした。
「……どうして、そう思うんですか?」
「私の歌は、ただの物語ではありません。時に、真実を語り、時に、未来を予言する。そして、それを理解できるのは、真実を求める者だけです」
アルフレッドは、意味深な笑みを浮かべた。
そして、僕の目を、まっすぐに見つめる。
「あなた様の旅路に、幸多からんことを。そして、いつか、真実の扉が開かれることを、心より願っております」
彼は、そう言い残すと、再びリュートを抱え、焚き火のそばで、静かにメロディを奏で始めた。
その歌声は、僕の心に、新たな謎と、そして、かすかな不安を植え付けた。
僕たちの旅は、ただの冒険ではない。
この世界の、根源に関わる、何か大きなものに、巻き込まれていく予感がした。
そして、その中心には、僕と、あいり、そして、エリナがいる。
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