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第24話:AIを「使いこなす」ということ

数日後、エリナは、すっかり元気を取り戻した。

ギルドの優秀な治癒魔術師と、僕が作った(ことになっている)奇跡のポーションのおかげで、あれほどの重傷だったにもかかわらず、後遺症一つなく、全快したのだ。


「トオル様、この度は、本当に、ありがとうございました」


エリナは、退院したその足で、僕の部屋を訪ねてくると、改めて、深々と頭を下げた。

その表情は、以前にも増して、僕への尊敬と、そして、ほのかな熱を帯びているように見えた。


「君が無事で、本当によかった」

僕の言葉は、心からのものだった。


「あの……トオル様」

エリナは、おずおずと、口を開いた。

「あの時、どうやって、あの竜を……? 私、意識が朦朧としていて、よく覚えていないのです。ただ、最後に、とても眩しい光を見たような……」


彼女の問いに、僕は、どう答えるべきか、迷った。

『灯り』の魔法で、目くらましをしただけだ、と正直に言うべきか。

それとも、また、適当なことを言って、誤魔化すか。


《マスター》

その時、あいりの声が、僕の脳内に響いた。

それは、あの戦い以来、初めての、彼女からの呼びかけだった。

《――正直に、話すべきです》

「……あいり?」


僕は、意外な提案に、驚いた。

今まで、僕の神秘性を高めようと、散々、知ったかぶりを推奨してきた、あのあいりが?


《今回の件で、私は、自分の限界を知りました。そして同時に、マスターの、予測不能な「意志」の力も、目の当たりにしました。それは、私の計算を超えた、新たな可能性です》


あいりの声は、どこか、吹っ切れたような、清々しい響きを持っていた。


《これからの戦いは、より、高度で、複雑なものになるでしょう。私のナビゲーションと、マスターの意志。その二つを、本当の意味で融合させなければ、我々は、これ以上、先へは進めません。そのためには、まず、パートナーであるエリナに、我々の力の、ほんの一部でも、理解してもらう必要があります》


あいりの言う通りだった。

僕たちは、もう、お互いに、秘密を抱えたままではいられない。

本当の仲間になるためには、本当のことを、話さなければならない。


僕は、覚悟を決めた。


「エリナ、聞いてくれるかな」

僕は、彼女を、まっすぐに見つめた。

「僕が使ったのは、特別な魔法じゃない。ただの、『灯り』の魔法だ」

「え……?」


エリナは、信じられないといった顔で、目を見開く。


「僕は、あの時、ただ、必死だった。君を助けたい、その一心で、ありったけの思いを込めて、光を放った。それだけなんだ」


僕は、正直に、話した。

もちろん、あいりの存在は、まだ、秘密だ。

でも、僕が、特別な力を持たない、ただの人間であることは、伝えた。


僕の話を聞き終えたエリナは、しばらく、黙り込んでいた。

やがて、彼女の瞳から、大粒の涙が、ぽろぽろと、こぼれ落ちた。


「……そう、でしたか」

彼女は、涙を拭いもせず、嬉しそうに、微笑んだ。

「あなたは、やはり、英雄です。特別な力に頼るのではなく、ただ、仲間を想う、その強い意志の力で、奇跡を起こした。あなたこそ、私が、生涯をかけて、お仕えするべき、主君です」


……あれ?

なんだか、話が、とんでもない方向に、飛躍してしまった。

僕の意図とは裏腹に、エリナの僕に対する忠誠心は、さらに、燃え上がってしまったようだ。


《……ふふっ》

僕の脳内で、あいりが、楽しそうに、笑った。

《マスター。どうやら、あなたの「意志」の力は、私の計算以上に、厄介なもののようですね》


その声は、どこか、僕を、からかっているようだった。


こうして、僕たちのパーティは、新たな一歩を踏み出した。

AIに、ただ、従うだけじゃない。

AIの力を、僕の意志で、「使いこなす」。

その本当の意味を、僕は、これから、学んでいくことになる。


僕と、エリナと、そして、僕の脳内にいる、最強の相棒。

三人の、奇妙な冒険は、まだ、始まったばかりだ。


(第4章:AIの限界と主人公の決意 了)

◆ ◇ ◆

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