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第21話:瓦礫の中の脱出劇

「エリナ、死ぬな! 絶対に、死なせない!」


僕は、エリナの体を抱きかかえながら、必死に叫んでいた。

彼女の体は、熱く、呼吸も浅い。一刻の猶予もなかった。


ゴゴゴゴゴゴ……!


洞窟の崩壊は、ますます激しくなっていく。

暴れ狂う双頭の竜が、支柱となっている岩を破壊したせいで、天井が、今にも抜け落ちてきそうだ。


《マスター、このままでは、我々も生き埋めになります!》


あいりの声が、僕の脳内に響く。

その声には、相変わらずの冷静さはなく、明らかな焦りが含まれていた。

AIの予測を超えた事態が、連続して起きているのだ。無理もない。


「どうすればいい!? 出口は、どっちだ!?」

《……現在地から、最も生存確率の高い脱出ルートを、再計算します!》


僕の視界に、再び、半透明のマップが表示された。

しかし、そのマップは、洞窟の崩壊に合わせて、リアルタイムで構造を変化させており、無数のルートが、目まぐるしく点滅を繰り返している。


《ダメです! 崩落が激しすぎて、安全なルートを確定できません!》

「くそっ! どうすりゃいいんだよ!」


僕は、悪態をついた。

絶体絶命。

まさに、この状況のためにある言葉だ。


その時、僕の腕の中で、エリナが、か細い声で呟いた。


「……トオル、さま……あちら、です……」


彼女が、震える指で指し示したのは、広間の、隅の方にある、小さな横穴だった。

それは、僕たちのマップには、表示されていない、未知の通路。


「あんなところに、道が……?」

《……! 確かに、微かな空気の流れを感知します! あの穴は、外に繋がっている可能性が高い……!》


あいりも、驚いたように言った。

なぜ、エリナが、この道を知っていたのか。

今は、そんなことを考えている場合じゃない。


「よし、行くぞ!」


僕は、エリナをしっかりと抱きかかえ、その横穴に向かって、走り出した。

背後では、双頭の竜が、未だに苦痛の叫びを上げながら、暴れ続けている。

天井から、巨大な岩が、雨のように降り注ぐ。


僕は、ただ、無我夢中で走った。

エリナを、絶対に、死なせない。

その一心だけで、僕の足は、動いていた。


横穴に、飛び込む。

中は、人が一人、やっと通れるほどの、狭い通路だった。

僕は、エリナの体を傷つけないように、慎重に、しかし、急いで、その暗闇の中を進んでいく。


どれくらい、進んだだろうか。

やがて、前方から、微かな光が、見えてきた。

そして、新鮮な、外の空気の匂い。


「……出口だ!」


僕は、最後の力を振り絞って、その光に向かって、突き進んだ。

そして、ついに、僕たちは、崩れゆく洞窟から、外の世界へと、転がり出た。


背後で、轟音と共に、飛竜の巣の入り口が、完全に崩落した。

もうもうと立ち上る土煙が、僕たちの死闘の終わりを、告げていた。


僕は、エリナを、そっと地面に横たえる。

彼女の顔は、青白く、意識も、ほとんどない。


「エリナ……! エリナ……!」


僕は、彼女の名前を呼び続けた。

でも、彼女の瞳は、もう、開くことはなかった。


絶望が、再び、僕の心を支配しようとした、その時。


《マスター》


あいりの声が、聞こえた。

その声は、いつもの、冷静で、自信に満ちたトーンに、戻っていた。


《――まだ、諦めるのは早いですよ》

◆ ◇ ◆

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