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第13話:二人で一体の戦士

「ギャアアアッ!」


ロックキャンサーの怒りの咆哮が、ドーム状の広間に響き渡る。

傷つけられた関節を押さえ、憎悪に満ちた目でこちらを睨みつけていた。


「エリナ、集中を切らすな! 次が来るぞ!」

「は、はい!」


エリナは、僕の声にハッとして、剣を構え直す。

彼女の額には、玉のような汗が浮かんでいた。

無理もない。格上のモンスターを相手に、一瞬の油断も許されない戦いを続けているのだ。

肉体的にも、精神的にも、消耗は激しいはずだ。


《マスター、エリナの疲労度が危険水域に近づいています。短期決戦で決めましょう》

「わかってる!」


ロックキャンサーが、再び突進してくる。

その巨体は、まるで暴走するダンプカーのようだ。


「ヤツの左側を駆け抜けろ! 狙いは、さっきと同じ関節だ!」

「しかし、それではヤツのハサミの餌食に……!」

「大丈夫だ、信じろ!」


僕の力強い言葉に、エリナは一瞬ためらったが、すぐに覚悟を決めた顔で駆け出した。

彼女は、僕の指示が、常に最適解であることを、この戦いの中で理解し始めていた。


ロックキャンサーの巨大なハサミが、エリナの頭上を薙ぎ払う。

しかし、エリナは僕の指示通り、完璧なタイミングで身を屈め、その攻撃を回避した。

そして、すれ違いざまに、閃光のような一撃を、再び関節の隙間に叩き込んだ。


「ギィンッ!」


甲高い悲鳴を上げ、ロックキャンサーの動きが、明らかに鈍くなる。

これで、両方の前足の関節を破壊したことになる。


「すごい……本当に、攻撃が当たらなかった……」

エリナは、信じられないといった様子で、自分の手を見つめている。


《当然です。私が、彼女の身体能力、敵の攻撃速度、リーチ、すべてを計算した上で、最も安全で、最も効果的なルートを導き出したのですから》


あいりの声は、どこか誇らしげだ。

僕には、何が起きているのか、さっぱり分からない。

ただ、あいりの言葉を、エリナに伝えているだけ。

それなのに、僕たちは、格上のモンスターを、一方的に追い詰めている。


これが、AIの力。

これが、「最適行動提案」の真髄。


戦いが始まってから、数分。

エリナは、僕の指示通りに動き続け、ロックキャンサーの関節を、一つ、また一つと、的確に破壊していった。

彼女の動きには、もう迷いはない。

僕の言葉を、まるで神託のように信じ、その身を委ねている。


僕の「目」が、敵の弱点と未来を見通し、

エリナの「体」が、それを完璧に実行する。


僕たちは、もはや、ただの二人組のパーティではなかった。

二人で一体の、完璧な戦士となっていた。


そして、ついに、その時が来た。

ロックキャンサーは、ほとんどの関節を破壊され、満身創痍でその場にうずくまっている。

その目には、もはや戦意はなく、ただ、恐怖の色だけが浮かんでいた。


《マスター、好機です。ヤツは、完全に戦意を喪失しました。とどめを》


あいりが、冷静に告げる。

僕の視界には、ロックキャンサーの最大の弱点である「眼球」が、赤い照準でハイライトされていた。


「エリナ!」


僕は、最後の指示を出すために、声を張り上げた。


「――ヤツの頭上に跳べ!」


エリナは、僕の言葉に、一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐに、力強く頷いた。

彼女は、近くの岩壁を蹴り、天高く舞い上がる。

その姿は、まるで、戦乙女のようだった。

◆ ◇ ◆

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