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水族館の化石

掌編

 

 屋外水族館に化石がいた。

 体長五メートルはある巨大な化石だった。

 化石は水槽を抜け出して川を泳ぐことを許されていた。

 ある日化石は見学中の修学旅行生を驚かせた。

 水槽の外の池から顔を出して地面に穴を掘って地下へ消えていった。

 修学旅行生の中には私がいて、私は あああの川に起きる波は彼の鱗だったのだな と考えていた。

 化石はもう一度池から顔を出し、より遠いところへ穴を掘って、またその穴から池へ抜けて行った。

 化石ははしゃいでいた。生徒はパニックに陥り各々叫んでいた。

 彼女は化石の操り方を知っていた。

 私は 化石ははしゃいでいるのだ と思った。

 彼女が化石に制止の声をあげた。私は化石が池から出てきたのを見計らって額にチョップを二つ贈ってやった。

 彼女が化石を抱きしめると、化石は少しやり過ぎたことに気付いた。


 水族館の従業員は本来隔離されていなければならない化石を時折外に出していたことで警察に怒られ、それ相応の処置を受けた。

 化石は化石であったので声は老齢のものだった。

 化石は生徒達に 驚かせて済まなかったな と謝った。

 加えて彼女に 私を抱きしめてくれてありがとう と礼を言った。

 加えて私に チョップを二回してくれてありがとう と礼を言った。

 私は正直なところその件を申し訳なく思っていたので恐縮した。

 私は化石の額を撫でてやった。化石はどこと無く嬉しそうにし、導線色のぬるぬるした身体を金色の鱗に変えて逆立てた。

 私はもう行かなければならなかったが、化石は寂しそうにしたので鱗を流れに沿って撫でてやった。

 またね と言うと化石は少し笑って、身体を引いて水面に沈んでいった。


 この水族館には数日後妹も訪れるので化石への挨拶の仕方を教えておこうと思ったが、家に帰るともう思い出せなくなっていた。

20110228

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