プロローグ
『えっと…何してたん…だっけ?』
今の状況を思い出そうとするが、記憶が抜け落ちてしまったかのように思い出すとこができずに戸惑う。
『うわ、泥だらけ。どういう状況?というか、ここどこ?』
あたりを見渡しても自分のいる場所がわからず、そのまま自分の体に目をやると身に覚えのない泥や傷が至る所にある。
『とりあえずあの人たちに連絡しとかないとだな…あれ、スマホないな』
ズボンのポケットに手をやるがスマートフォンが入っている気配がなく、肩を落とす。加えて、あたりには木々が生い茂っており、人の気配は感じられない。家に帰るすべがなく八方ふさがりの現状をどうにかすべく、森の外をめざし歩き出す。
しばらく歩いていると、突然人の気配を感じた。即座に木の陰に隠れ、気配のするほうをうかがう。
『子供?』
5,6歳くらいの少年が周りを見渡しながら歩いているのが見える。警戒対象ではないと判断し、木の陰から身をだし、少年のほうへ近づいていく。
「きみ…なにしてるの」
少年は少女が声をかけると、急に表れた少女の存在に驚いたのか、声をあげて体をはねさせる。
「うわああ!!びっくりした!なんだよ、おまえ!びっくりさせんなよ!」
「えっと…ごめんなさい?」
「いやおまえ、だれだよ!」
どのように答えるのが正解なのかを考えていると、少年は少女のほうへと距離をつめ始める。
「名前は?つーかなんで泥まみれなんだよ。遊んでたの?」
少年は言葉を詰まらせている少女に興味を持ったのか、質問攻めを始める。
「ねえってば!!」
この出会いが少女の人生を変えてしまうなんて、この時は思いもしなかった。