9
わたしが大学に着くと、前の方に友達が見えた。
「おはよー!!」
「おはよ、月! なんか昨日より元気じゃない?体調復活した?」
「あ、うん…! もう万全です!!」
体調のことを言われて、昨日風邪をひいていたと嘘をついたこと思い出した。今日は1限だけなので、終わったらすぐに星太の会っていた人を探そうと思った。
授業中、わたしはどうやって星太が会っていた人を探そうか考えた。大学の中を探すと言っても広すぎるからそんな全部を探すことは難しいし、かといって星太がどこに行っていたかをすべて把握できているわけでもなかった。
『とりあえず、大学で星太を見かけた場所に行ってみるか……。』
そう考え、思いつく場所をメモしていった。
授業が終わるとわたしは友達と別れてすぐ、メモした場所に向かうことにした。
「まずは、食堂……!」
わたしは、星太は大学にお弁当を持って行くことがなかったことを知っていたので、食堂に行っていた可能性は高いのではないかと踏んでいた。
わたしが食堂へ向かうと、お昼時というにはまだ少し時間が早いからか、人はあまりいなかった。ちょうど良いや、と思い食堂の人に話を聞こうと思った。うちの大学の食堂は、ご飯を頼むときに学生証が必ずいるから、もし星太が食堂に行っていたとしたら見たことを覚えている人がいるのではないかと考えていた。
「よし……。 …す、すみません〜。」
「はーい!」
わたしの声に気づいて、厨房から一人のおばさんが出てきてくれた。
「学生証の提示お願いします〜。」
そう言われて、わたしは咄嗟に
「あっ、すみません。実は注文じゃなくって…。」
「え?、」
食堂のおばさんはわたしのほうを不思議そうに見た。
「えと、実はわたし人を探していて…。 宮木星太っていうひとなんですけど…。」
わたしは、少し緊張しながら尋ねた。食堂のおばさんの表情はあまり明るくはなかった。
「うーん、ごめんね。なんせくる生徒の名前なんて覚えてないもんだから……。」
「っそ、そうですよね…!! すみません……。」
わたしは、
『まあ、普通そうだよね。』
と思った。少しがっかりしていると、食堂のおばさんが声をかけてきた。
「名前は覚えてないけれど、写真とかはない?? もしかしたら顔だけでも見たことをあるかもしれないし…。」
「っ!! 写真! あります!!」
わたしはすぐにスマホを開いて、星太の顔が写った写真を見せた。その写真を食堂のおばさんはじっと見つめた後、わたしの顔を見た。
「わたし、この子見たことをあるわよー! 礼儀正しい子だったし、いつもお昼は一番乗りで食堂に来ていたから……。」
「そうなんですか!!!」
わたしは、星太のことを知る人を見つけることができてとても気分が上がった。わたしはおばさんが他に知っていることはないかと思い聞いてみようと思った。
「あの、誰と来てたとか、どこの学部だとかってわかったりしますか…?」
おばさんは、困り顔で首を横に振った。
「ごめんなさいね…。そこまでは知らなくって…。でも最近は全然来てないわね。」
「…そう、ですか。 ありがとうございます!お忙しいのにすみません…。」
「…全然!! こちらこそあまり力になれなくてごめんなさいね。 その子、最近大学来てないの…、? 見つかると良いわね……。」
とても優しく接してくれたおばさんを見て、星太はこういうところでも礼儀正しくしていたことを知れて星太らしいな、と思って嬉しくなった。
「ありがとうございました! 」
おばさんにお礼を言い、わたしは、食堂を出た。
「いつも、食堂に一番乗り……か…。」
わたしは、おばさんが言っていたこの言葉が一番気になった。
「わたしに会わないようにはやく食堂に行ってた…とか……?」
そうも考えてみた。しかし、わたしは普段大学の外でご飯を食べることが多かったし、食堂を使うことはなかった。にも関わらず、そこまで警戒する必要はないように思えるし、星太がそこまでするともわたしは思わなかった。
頭を悩ませながら歩いていると、一つの校舎が目に入ってきた。わたしは、そもそも食堂がある方に来ることがあまりないからその校舎がどこの学部のものなのか知らなかった。わたしは、少し気になって入口の近くまで行ってみることにした。
「うーん……。どこの学部かわかんないな……。」
声を掛けるにも、少し戸惑ってしまい、わたしは校舎の周りを少し歩いてみることにした。
すると、校舎から出てきた生徒の腕にかけられた白衣が目に入った。
「白衣もってる……。ってことは理系の学部ってことかな……。」
そう思い、わかったところで来た道を引き返そうとしたとき、さっき白衣を持っていた生徒が校舎のすぐそばにある食堂に入っていくのが見えた。




