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「ていうか星太、なんで月ちゃんじゃなくて俺を誘ったんだろーな。絶対月ちゃんと2人のほうがこういう店入りやすいだろうにな。」


翔くんの疑問ももっともだと思った。こういうお店に、男友達と2人で来るというのは、思ったりよりハードルが高いものなのだか……。そんなことを考えていると、注文した飲み物が届いた。


「写真で見るよりおしゃれな飲み物だね……これを星太とさが飲んでだとか、想像しにくいんだけど…」

「ほんとだよな!!もしかしたら、誰かからおすすめされた店だったとか??」

「たしかに…。それはあるかも。」


星太は何を考えて男友達とやってきたのだろう。もちろん、星太のことだから、何かしたらの考えがあってのことだとは思うが、私からすると、その理由が全く思い当たらない。

わたしはそう思い、飲み物の味に集中した。


「たしかに美味しい! 」

「だろ!? じゃあとりあえず、星太捜索会議始めよう!!!」


そういう翔くんに思わず笑ってしまった。しかし、これだけやる気で、手伝ってくれる翔くんの存在はとてもありがたかった。


「そうだね!! まず星太が嘘ついてまで別れた理由だよね…。」

「だな……。月ちゃんはなにか思い当たる節とかはあったりする?」


わたしは翔くんにそう言われて、改めて考えてみた。別れようと言われた直後は動揺していて冷静に頭で考えることができていなかったから、今なら何か思いつくかもしれないと思った。

しかし、いくら考えてもそれらしい原因は思いつかなかった。


「……ぜんっぜん思いつかない…。あのとき別れようって言われるあの日までそんな素振り一切なかったし……。」

「そっか……。だとしたら、本当にあいつの個人的な理由ってことか?? でも、そんなのなにがあるんだ?」

「わたしにも頑なに言ってなかったことで、わたしと無理矢理にでも別れないといけないような理由か……。」


星太は自分のことを積極的に話すことはなかったが、話すことに対して嫌がっているというわけでもない。聞けばだいたいのことは答えてくれた。

ということは……、


「わたしじゃ絶対に思いつかなくて、聞かないようなことだったとか……。 」

「なるほど……。月ちゃんが星太のことであんまり詳しく知らないことってたとえばどんなことがある…?」

「…えっと……。」


わたしは翔くんからの質問に頭をフル回転させた。聞いてもあまり詳しく教えてくれなかったことなどを思い出そうとした。


「交友関係とか、バイト先のこと…、どこの学科専攻なのかすらも聞いた時はぐらかされたな…。思ったよりたくさんあるのかも……。」

「あいつ交友関係のすらも言ってなかったのかよ…。どれだけ秘密主義なんだよ……。」


星太の秘密主義ぶりに翔くんも驚いた様子だった。わたしも改めて考えてみて分かったが、思ったよりも知らないことが多いのだ。さっき言ったように別れた理由はやっぱり個人的な理由なのだろうかと思った。そうだとしたら少し悲しいな、と思っていると、翔くんがく口を開いた。


「でも交友関係って言ったって、あいつそんなに顔広いわけでもないぜ? 高校でも俺以外に仲良くしてる友達もそんなにいなかったし…。大学はどうなの?」

「それが、大学で会うことほとんど無くってさ…。友達らしい人と一緒にいるところもみたことないんだよね…。」

「…え?そんなことある?彼女でしょ?……あいつ、わざと月ちゃんと会わないようにしてた……とか?」


翔くんにそう言われて、わたしはハッとした。たしかにそんなこと意図的に行わない限り無理じゃないかと思った。


『そんなにわたしに会いたくなかったの……でも、2人で一緒にいるときは、特におかしなことはなかったし、……』


わたしは星太の行動に何かヒントがないかを必死に探し続けた。


『大学で星太を見かけなかった……けど、誰とも一緒にいないなんて不可能……いや、そんなことはないか……けど、やっぱり全く人と一緒にいないなんてのは難しいと思うんだけど……』


翔くんから聞いた話と、わたしが知っている星太の性格を合わせて考えてみる。

『もし、星太が意図的に誰もと会わないでいたっていうなら……ううん。そうじゃない。会わないってのはやっぱり無理があるから、星太が会っていた人は誰だろうって考えた方が……』


そこまで考えて、わたしは一つの答えにたどり着いた。


「もしかして、大学で星太と一緒にいた人を見つければ、星太がいま何しているかとかを知ってたりするのかも……。」


そう言うと、翔くんが身を乗り出して言った。


「なるほどな!!きっとそれだろ! 月ちゃんナイス!」


翔くんはそう言って、私に向かって親指を立てた。


「うん!あ、でも……星太と同じ大学の接点のあった人を」なんてどうやって探せば……」


一つヒントが見つかって、少しだけ前に進んだかと思えば、また新たな問題が発生する。こんなことをしていて本当に星太はみつかるのだろうかと思い、わたしは思わず机に顔を伏せてしまった。


「大丈夫だって!月ちゃんなら見つけられる!」


そう言いながら、翔くんの手がわたしの頭を撫でる。わたしは一瞬びっくりしたが、わたしも思わず笑ってしまった。


「…頭撫でられるのとかいつぶりだろ〜? なんだか…、翔くんってお兄ちゃんみたい……。」


わたしは少しほっこりとした気持ちになった。


「………そう? 俺そんなこと初めて言われたわ〜!……」


そう言うと翔くんは冷静になったのか、再びは席についた。


「…とりあえず、星太のこと知ってる人を片っ端から探すのが1番可能性があるよな。とりあえず大学であいつ知り合い探す方は月ちゃんに任せてもいいか?」

「うん!! 頑張ってみるね。 翔くんはどうするの? 」

「おれは、高校の友達とか先輩後輩当たってみる。

まああいつのこと知ってる奴なんてほぼいねーだろうけど…。」


そういうと、翔くんは頼んだジュースを一気に飲み干した。


「…とりあえず、明日からお互い聞き込みだな…!! よっしゃ、なんか面白くなってきたな!!!」

「翔くんやる気満々だね…!! ほんとにありがとう!! 翔くんがいなかったらこんなに頑張れてないかも……。星太見つかるまでよろしくね!!」


わたしは、きっとこれからたくさん助けてもらうであろう翔くんに改めてお礼を言った。

しかし、翔くんのその時の顔は少し前にしていたのとはまた違う、切ない表情をしているように見えた。














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