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 星太の初めて見る表情に、わたしは少し動揺して言葉を詰まらせかけた。わたしは、精一杯息を吸って話し出した。


「星太、わたし待つよ。星太が留学に行ってる間、まったく辛くも、しんどくもないなんてことは無理かもしれない。寂しい日もきっとある。」

「けど、それでも……、わたしは待ってる、絶対に。そのくらいの覚悟あるよ……!!」


わたしは、さっきまで溢れかけていた自分の涙を必死に堪えて、星太に伝えた。星太は唇を噛み締めてわたしの顔を見ている。


「ほんとに、ほんとに良いのか? おれの都合なのに月にも背負わせて……、」


「わたしが待つって言ってるから良いの……! 」


「っっ!!!」


その次の瞬間、星太の目からは涙が溢れていた。初めて見る星太の涙だった。わたしは、どれだけ星太が自分の本当の気持ちを抑えて、わたしに嘘まで付いて、悩ませて辛い思いをさせてしまっていたかを実感した。わたしはすぐに星太に駆け寄った。


「ごめん……。ごめんね星太……。嘘までつかせて……。」


「いや、おれも……嘘ついてまで突き放そうとして傷つけて……、ほんとにごめん……。」


いまは、周りの目なんて気にせず、少し震えている星太の体をしっかりと抱き締めた。すると、星太もわたしを抱き締め返してくれた。


しばらくすると、空港内の放送が聞こえた。それを聞いて星太が顔をハッと上げた。星太は、抱き締めていた腕をほどいて気まずそうにわたしのほうを見た。


「月……、おれもう飛行機の時間が……。」


「そうだね……。うん……。」


星太が行ってしまったらしばらく会うことは出来ない。そんなことは留学のことを知ったときから頭では分かっていたつもりだったが、いざその時が来てしまうとどうしても離れたくないという気持ちが少なからず出てきてしまった。ついさっき、星太が帰ってくるまで待つと誓ったが、やはり寂しいことに変わりはない。わたしが俯いていると、泣いて少し赤く腫れていた目を擦って、星太が話し出した。


「俺、月が待ってるって言ってくれたからすげぇ勇気出たし、頑張れそうだわ。」

「時差とか、疲れてるかなとか、そんなの遠慮なしに連絡してきて全然大丈夫だから。」


星太は、いつもの笑顔でそう言った。その星太の顔にわたしはホッとした。


「うん! わたしも、…頑張るね。」


そうして、わたしも星太に笑顔を見せた。わたしたちはもう一度だけ抱き合い、星太はキャリーバッグを引いて、見えなくなるまでわたしに大きく手を振りながら搭乗口まで歩いていった。


わたしはさっきいたベンチの方まで戻ろうと歩いていくと、翔くんが出入り口の方でそわそわしながら立っているのが見えた。わたしは小走りで向かい声をかけた。


「翔くん、」


「っ月ちゃん! ……その様子だと仲直りできたみたいだな。よし!おれの本来の目標達成!!!」


わたしは翔くんの様子を少し心配していたが、今まで通りの元気な翔くんの姿に少し安心した。


「さあー、月ちゃん帰ろっか! 星太がいない間月ちゃんに何かあったら俺が星太に起こられそうだわ

~。」


そう言って笑いながら翔くんは歩きだした。わたしは一瞬空を見上げた後、翔くんを追いかけた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2年後、わたしは空港にいた。わたしは、ベンチに座りながら星太が留学に行っている間の2人のLINEのトーク履歴を見返した。寂しくないか、泣いてないか。そんなわたしを心配するメッセージもたくさんあった。向こうでの写真が送られてきたりもした。もちろん、こっちの写真も送ったり、お互いの近況報告も行ったりもした。すれ違ってしまいそうになった時には、いつも翔くんが仲介役になって、わたしたち助けてくれた。そんな翔くんは、たまに星太に彼女との楽しそうな写真を送りつけて、星太にマウントをとっていたらしい。星太と翔くんは離れていてもやっぱり仲良しな親友だった。今日翔くんは


『久しぶりの再会は2人が良いだろ』


と気をつかってくれて空港には来ていない。


空港内の時計を見ると、もうそろそろで飛行機が着く時間だった。わたしはベンチから立ち上がり、出口の方へ向かって歩きだした。






あと少しで、わたしの大好きな人に会える。









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