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 やはり、その日が来てほしくないと思っているときに限って、来るのは早く感じてしまうものだなと改めて体感した。まさに今日、空港で星太に会う計画の日が来てしまった。わたしは昨日の夜からあまり寝付けず、起きるつもりだった時間の2時間も前に目が覚めてしまった。


「何があるか分かんないし、時間に余裕もって準備するのも大事だよね。」


そう思いながらわたしは空港に行く準備を始めた。星太に会えたときわたしはきっと焦ってしまうだろうから、何を話そうか、何から聞こうかを頭の中で整理した。考えながら準備をしていると、時間はあっという間に過ぎていき、家を出なければ行けない時間が迫ってきていた。


「っもう出ないと! 」


わたしは鞄を持ち家を出た。翔くんとは空港までの電車の乗り換えの駅で待ち合わせをしている。そこにたどり着くまでの一人の電車のなかでは、わたしは立っているのが少し不安定になってしまうくらい足に力が入らず、心臓の動きは少しずつ早まっているように感じた。わたしは、自分が思っていたより不安になっていることに気がついた。そんな自分を心のなかで鼓舞した。


『落ち着いて、月、……。そんな緊張しなくて大丈夫。星太に会ったら、一発叩いてやる、くらいの気合いで行かないと……!』


そんなことをしていると、翔くんと待ち合わせを予定している乗り換えの駅に着いた。翔くんに待ち合わせ場所の駅に着き、乗り換えのホームの方に歩いている、とメッセージを送った。するとすぐに返信が帰ってきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『了解!』

『月ちゃんの方が先着くかな』

『おれもすぐそっち行く!』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


返信が来て、数分後に翔くんが小走りでこちらに向かってくるのが見えた。翔くんの手にはペットボトルの水が2本握られていた。


「ごめん待たせちゃって…。なんかすごい今日喉渇いちゃって、水買いに行ってたんだ。はい。これ月ちゃんの分!」


「え、わざわざありがとう! 喉渇いちゃうってことは、翔くんも星太に会うのちょっと緊張してる……?」


「っ!!……そう、なのかな…。」


翔くんは苦笑いをしながら、ペットボトルのキャップを開けて水を飲んだ。わたしも翔くんと会い、すこし緊張がほぐれると自分も喉が渇いていることに気がついたので、ありがたく貰った水を飲んだ。その後しばらくして、空港まで行く電車がホームに到着し、わたしたちはそれに乗り込んだ。電車のなかではお互いほとんど話すことはなく、わたしは外を眺めながら、星太に会ったら何を話して何を聞くかをもう一度思い出し、時々あと何駅で空港に着くのか確認していた。翔くんは、なにか難しい顔をしながら電車に揺られていた。


空港のある駅に着くとわたしは、一人で電車に乗っていた時のように足に力が入らなくなってしまっていた。空港に歩いていくにつれて星太との距離も近づいていると思うと、一歩一歩がとても小さくなってしまい、翔くんと距離ができてしまった。翔くんがそれに気がつくと、少し後ろにいるわたしの所まで戻ってきた。


「ごめん、歩くの早かった?」


「ううん、そんなことないよ!ただ、空港に星太がいると思うと、なんかまた緊張して、怖くなってきちゃって……。」


「……怖かったら、今からでも引き返してもいいよ俺は。」


わたしはその発言に少し戸惑った。そして翔くんは寂しそうな悲しそうな表情していた。わたしは、翔くんから見たわたしは相当怖がっているように写っているのだと考えた。しかし、ここまで来て会わずに帰るなんてことはしたくはないし、何より協力してくれた翔くんにも悪いと思い、慌てて返事をした。


「ごめんね大丈夫!」

「……よし、行こっか!翔くん。」


「………そっか!うん。行こう。」




しばらく歩くと、空港に到着した。わたしたちは一度ベンチに座り、星太が乗る可能性のある飛行機のゲートなどを確認した。わたしは空港に来るのは初めてだったため、その広さと複雑さに混乱しながらも確認した。翔くんは頻繁にスマホをみて時間を確認してくれているようだった。


「この飛行機に乗るなら、ここから見えるあそこゲートから入るはずだから……、」


「ここで待っておけば、星太がここを通っていくから、会えるってこと、だよね……?」


「そういうこと。でも、もし次の時間の飛行機だったとしたら…、ここじゃなくて向こう側のゲートだから……、」


熱心にわたしに場所を確認して教えてくれる翔くんを見て、ふと顔をあげるとすこし遠くに見覚えのある姿がわたしの目に飛び込んできた。あまりに急だったので、声を出すこともできず、そんなわたしの様子に気づいた翔くんが声をかけた。


「月ちゃん……?どうしたの?」








「…………あ、あれ、あそこ……、せ、星太……じゃない……?」


「っっ!!!」


仮にも彼女で、一年間そばでその姿を見えきたのだ。たとえ少し離れた距離だったとしても間違えるはずはない。わたしは咄嗟に立ち上がり、星太のいるところへ走ろうとした。




その瞬間、うしろから腕を掴まれた。いまこの状況でわたしの腕を掴める距離にいるのは、たった一人しかいない。




「翔、くん…………?」


「………………っ、」


その時の翔くんの表情は、星太探しに協力し始めたときから時々見ていた、寂しそうな悲しそうな、そんな表情だった。





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