13
「……宇宙に行くまで俺は死ねないな……」
「…………え……?」
わたしは翔くんが言っている言葉の意味がよく分からなかった。しかし、翔くんの表情はとても真剣で、どこか悲しげにも、焦っているようにも見えた。わたしが、この状況に少し困惑していると、翔くんが口を開いた。
「月ちゃんは星太から聞いたことない? 『宇宙に行くまで俺は死ねないな』とかって……。」
わたしは、急に言われたことに頭がうまく回らなかった。翔くんからの質問に答えようと必死に考えたが、わたしは星太からそんな言葉を聞いた記憶はなかった。
「ない……かな……。翔くんはなにか、知ってるの……??」
わたしは、自分の心臓の動きが少し早くなっきていることに気がついた。そんな様子のわたしを見て、翔くんはゆっくり口を開いた。
「知ってる、ってわけでは…ないんだけど……。何度か星太の口から聞いたことがある言葉ではあるんだ……。」
「この言葉がもし関係してるんだったら、星太は理系の中でも宇宙にとかに関する学部、ってことなのかなっておもって……。」
わたしは、1度も聞いたことがない情報に頭の整理がなかなか追いつかなかった。
「……宇宙……とか、そんな言葉はわたしは聞いたことはないや……。」
わたしは、頭のなかで考えた精一杯のことを声に出した。翔くんは、わたしの顔をみて
「急に変なこと言ってごめんな…………!もしかしたら、全然関係ないかもしれないのに……。」
と申し訳なさそうに苦笑いしながら言った。しかし、わたしは確実にいま、星太に大きく近づいたと思った。
「……でも、その言葉が関係してる可能性は高い、よね。『死ねない』って言うほどなんだから、きっと、星太にとって大きな夢なはずだし。」
「…………そう、だよな。」
わたしと翔くんとの間には、重たい雰囲気が漂っていた。わたしは、そんな星太の大きな夢を知らなかったこと、そしてそれを、わたしには教えてくれなかったことに悲しみをおぼえた。わたしが落ち込んで下を向いていると、翔くんが焦ったように声をかけてきた。
「つ、月ちゃん! まだ俺の言ったことが合ってるかなんて分かんないし、合ってたとしてもなにか理由があるはずだし!! そんな気にすることねぇよ!
大丈夫だって!」
翔くんは、一生懸命わたしを慰めてくれた。
「っ……ありがとう。 でも、まずは事実確認しないとだよね。」
「明日また、大学で聞き込みしないと……!」
わたしは、無理やり気持ちを切り替えようとした。そうでもしないと、すぐに気分が下がっていってしまいそうだった。そんな様子のわたしを見て翔くんは、
「月ちゃん、あんま無理すんなよ? 俺もいるし。」
と心配してくれた。
わたしたちは、話が一段落ついたところでカフェを出た。
「じゃあ、月ちゃん。また今度!なにかあったら俺に教えて!」
「ありがとう! 聞き込みがんばる!、」
わたしは翔くんと別れる直前まで、できるだけ笑顔を保った。
家に帰ってくると、わたしは着替えもせずベットに倒れ込んだ。
「はあーーー……。 宇宙がどうかとか、わたし1度も聞いたことないんだけど……。」
今までは、自分の知らない星太を見つけることができると、嬉しいという気持ちが一番強かったはずなのだが、今回ばかりはそうはならなかった。想像もしていなかった展開に、わたしの頭はパンク寸前だった。
「なんで、星太はわたしに言ってくれなかったんだろう……。 星太にとっては、そこまで重要なことじゃなかったってことなのかな。いやでも…………、」
わたしは、星太が考えていることが全く分からなかった。考えれば考えるほど頭が混乱してきて、わたしの目から涙が溢れそうになった。
「あーー、だめだめだめ! 泣いたらだめ。……。」
必死に泣かないように上を向いたりしてみた。しかし、今回ことは自分にとって、あまりにも衝撃的なものだったからか、涙を堪えることができなかった。
「あーあ。泣いちゃったよ……。」
わたしは、自分が泣いてしまったことすらも嫌になってしまい、そのままベットのなかで目を瞑った。
わたしが、目を覚ますと深夜の4時頃になっていた。服も着替えず、お風呂にも入らず、化粧も落とさず、ご飯も食べずに寝てしまい、やってしまったとおもった。
「はぁ……。とりあえず、お風呂には入らないと。お腹も空いたなぁ、……」
わたしは、鉛のように重い体をなんとか起こした。泣いてしまったせいで、頭が痛かった。ふと、なんとなく今の状況が、星太と別れたあの日と似てるな、と思いながらベットから立ち上がった。洗面所に行って鏡に映った自分をみた。
「ひどい顔……。こんなんで星太にあったら心配されちゃうなぁ……。」
涙を流しながら眠ってしまったから、目は腫れてしまっていた。
わたしは、お風呂に入って、もう一度ベットに戻った。
「明日、起きても目は確実に腫れたままだろうなぁ……。学校、聞き込みしないとだけど……」
そんなことを考えていると、いつの間にか眠ってしまっていた。




