第八姫
戦場では少年兵ソラが窮地に陥っていた。
「悔しい……僕はこんな奴に……!」
相手は巨大な手の形をした魔物で、
ソラは全身を掴まれて身動きが取れなかった。
「俺たちのソラに手ぇ出しやがって!
手の魔物だけになぁ!」
「あれは“突起物まさぐりハンド”じゃないか
捕らえた獲物の体にある突起物をまさぐるのが大好きな魔物だ」
「ソラはこれから一体、どうなってしまうんだ……?
俺には観ていることしかできない……!」
「助けてよーー!!
こいつ結構テクニシャンなんだよーー!!
指の動きがなんかこう……アッ♡ アッ♡」
場面は変わり、ワカバは武器屋へ訪れていた。
「姫様、なぜこのような場所へ……?
以前にも申し上げましたが、荒事は男どもに任せましょう」
「わたくしに剣を教えてくれる者がいないからです
調べてみたところ、クロスボウという武器が便利みたいですね
狙いさえ正確ならば誰でも同じ効果を期待できる代物です
使用する矢が従来の弓よりも太く、充填に時間は掛かるものの
その威力たるや金属製の鎧を貫くほどだと聞き及んでおります」
「姫様、せっかくですし他の武器も見てはいかがでしょう
ほら、この魔法の杖なんてどうですか?
姫様にはよくお似合いですよ」
「失敬な……
わたくしはもう子供ではありません
絵本の世界ではあるまいし、
人間が魔法を使えるわけがないでしょう
今わたくしたちに必要なのは、敵に勝つための武器です」
「では、これなんてどうでしょう
魔法のホウキにございます
これにまたがると空を飛べるかもしれませんよ?」
「貴女は話を聞いていないのですね
それに、よりにもよって魔法のホウキなどと……
わたくしが幼い頃、お姉様たちに唆されて
2階の窓から飛び降りて大怪我を負ったことを忘れたのですか?」
「姫様……本気で飛べると思っていたのですか?」
「そういえばあの時、貴女も笑っていましたね」
場面は戻り、兵士たちの戦いは終わった。
「俺たちのソラに手ぇ出しやがって!
もう手も足も出ない状態にしてやったぜ!
足は元から無えけどなぁ!」
「“突起物まさぐりハンド”は強敵だった……
本当に最近はなんなんだろうな
敵が強くなってるのは何かの前触れなのか……?」
「それはわからないが、何かが起きているのは確かだ
俺たちはその行く末を見届けねばならないな……」
「うっ……うぅぅ……!
僕はもう、戻れないよぅ……!」
ソラは全身のツボを刺激され気持ち良くなったが、
兵士たちは突起物まさぐりハンドの撃退に成功した。