第七姫
戦場では少年兵ソラが窮地に陥っていた。
「そこは……らめえぇえぇ!!」
グラマラスボディーの魔物がソラを責め立て、
彼には抵抗する術がなかった。
「俺たちのソラに手ぇ出しやがって!
代われるもんなら代わってやりたい!」
「ほほう、“悪戯サキュバス”ですか
これはいけませんねえ」
「ソラが順調に開発されてゆくが、
俺には観ていることしかできない……!」
場面は変わり、ワカバは資料を集めに書庫へ来ていた。
「なんですかこの本は……『ソラキュン総受けアンソロジー Vol.13』……?」
「おやおや、これはこれは……
姫様もソラキュンの魅力に気がついてしまわれたのですね?」
「意味がわかりません
どうしてこのようないかがわしい本が
王家書庫の棚に並べられているのでしょうか
……というかソラキュンとはなんのことですか?」
「ご説明致しましょう
ソラキュンとは、我が王国が誇る奇跡の少年兵にございます
本名は“ソラ”ですが、騎士団や街の女性たちからは
もっぱら“ソラキュン”呼びで通っております
まるで少女のような端正な顔立ちと
華奢な体躯の持ち主であり、半ズボンがよく似合います
その弱々しい外見とは裏腹に熱い精神の持ち主で、
敵を発見次第一人で突っ込んでは毎回酷い目に遭わされるそうです
その見事なやられっぷりも彼の魅力のひとつにございます
幼馴染のシルバという少年兵がいるのですが、
その彼がソラキュンとは対照的にクール系の美男子でして
二人が並ぶとそれはもう大変美味しい絵になるのでございます」
「急に早口になりましたね……もう結構です
貴女方がどんな思想を持ち、どんな本を執筆しようと構いませんが
ここにあったはずの『防衛マニュアル』はどこへやったのですか?」
「それは……必要ないかと思い……
なんと言えばいいのか……
……処分しちゃいました」
「この国の腐敗を止めねばなりません」
場面は戻り、兵士たちの戦いは終わった。
「俺たちのソラが成す術も無くやられていたが、
今回もなんとか無事に乗り切れたな……!」
「さすがは“悪戯サキュバス”……
悪戯の限りを尽くしていましたねえ」
「見応えがあったぞ、よく耐えたなソラ……!」
「うっ……うぅぅ……!
僕は、汚された……っ!」
ソラは全身を謎の液体でベトベトにされたが、
兵士たちは悪戯サキュバスの撃退に成功した。