第五姫
戦場では少年兵ソラが窮地に陥っていた。
「んほおおおーーー!!」
相手はキノコの魔物で、
ソラは体中を粘液まみれにされていた。
「俺たちのソラに手ぇ出しやがって!
いいか、待ってろよソラ!
助ける気はあるんだ!」
「あれは“敏感キノコ”だな
全身の感度を高める粘液が厄介な魔物だ」
「ソラが粘液でドロドロになってゆくが、
俺には観ていることしかできない……!」
「ヒャヒャヒャ!
みんな早く……ムフフフ!
たすっ……助けて……ウハハハハ!」
場面は変わり、ワカバは剣の訓練を受けようとしていた。
「姫様がそのようなことをしなくても……
荒事は兵士の男どもに任せておけばよいのです」
「姫騎士の役目を引き受けた以上、
わたくしは自ら剣を取って戦おうと決めたのです
兵士の皆さんの足を引っ張るわけには参りません」
「姫様……
なんとご立派な志でしょう!」
「さて、それではレミス
わたくしに剣を教えていただけますか?
実戦経験がなくとも、
仮にも騎士団長である貴女が
全く剣を振れないということはないでしょう」
「私は全く剣を振れません」
「なんなんですか貴女は……
腰にぶら下げているそれは飾りなのですか」
「はい、飾りです
鞘から抜いたことはただの一度もありません
祖母から母へ、母から私へと受け継がれた家宝にございます」
「そういえば貴女の母君も騎士団長でしたね
薄々予想はついていますが、
この国の騎士たちは皆、貴女のように
家柄だけで騎士の地位に就いた者たちなのですか?
王女であるわたくしが言えたことではありませんが……」
「はい、家柄が全てですね
国民のために命を張ろうなどと考えているのは
おそらく姫様くらいなものですよ」
「貴女に責任感という言葉はないのですか」
場面は戻り、兵士たちの戦いは終わった。
「俺たちのソラに手ぇ出しやがって……
まあ、今回もなんとか勝ててよかったな」
「“敏感キノコ”……手強い相手だった
最近、段々と敵が強くなってる気がするな」
「そろそろ俺も加勢するべきだろうか……」
「うひゃひゃひゃひゃ!
笑いが止まっ……むへへへ!」
粘液に含まれる成分でソラの衣服は溶かされたが、
兵士たちは敏感キノコの撃退に成功した。