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パトリシア・グレッグの窮屈な人生、或いはパトリック・ミスリルの優雅な生活  作者: すずき あい
パトリシア・グレッグの窮屈な人生

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1 過去の夢

よろしくお願いします。


時間軸ごとに分けていますので、各話ごとに文字数がかなり変動します。

ご了承ください。


※本日2話ずつ(4話分)投稿です。


幼い頃から当然のように扱われて来たので、自分に対して一切の疑問はなかった。



「お嬢様は残念ながらご病気を持って生まれて来てしまいましたが、もっと大きくなりましたら必ず治るのでございますよ」


ずっと愛情を注ぎ、親身に世話をしてくれていた優しい乳母。自分と同じ色の瞳を覗き込んで、互いの目に姿を映し合うのが好きだった。昔は金色だったという、すっかり白くなってしまった髪に触れていないと眠れなかった。隠れるように過ごさなくてはならなかった自分に、何不自由がないように真綿のように暖かく包んでくれた。


それが間違いだった。何もかも、最初から。


「父上様が、ご高名なお医者様に治していただくようにお願いをして回っています。お嬢様が大人になりましたら、必ず」


何を治すというのだろう。それは永遠に分からない。きっと分かってはいけない。



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月足らずで病を持って生まれて来た子供。難産だった為に母の命と引き換えに誕生した子供。それが自分だった。


最愛だった母を奪ったのに、父は惜しみない愛情を注いでくれた。


美しいドレスに、可愛らしい靴。煌めく宝石に、甘い甘い砂糖菓子。幼い頃は膝に乗せられて、幾度となく抱き締められ、愛してると囁かれ、無数のキスを与えられた。


時折しか訪ねて来られないことを詫びるように、来る度に溢れんばかりの贈り物と愛情を置いて行く父。


父の手ずから舌の上に乗せられる特別な砂糖菓子。



それは甘くて花の香りのする、痺れて蕩けるような快楽の味がした。



----------------------------------------------------------------------------------




「何て貧相な子なのかしら。こんな子には着古した服で充分よ」


父が訪れると、共に魔女が現れる。


憎しみをぶつけ、与えられたものを奪い、嗤いながら毒を吐く。


恐ろしくて、苦しくて、父の陰に隠れる。その時は魔女はまるで聖女のように微笑む。けれど父が僅かでも余所を向いた瞬間を魔女は見逃さない。チクリと悪意の針を見えないところに刺される。訴えても無駄だと魔女は知っている。




全ての世界がひっくり返ったとき、そこに残ったのは何だったのか。それは未だに分からない。




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