銀の雫
「お別れだね」
そう一言、あっさりと告げられる。
開けたドアの前に立つ彼女の顔は逆光で、この位置からではよく見えない。
「そうだな」
自分もそう、一言だけ告げた。
別れがたくないわけじゃない。
誰より、何より一番大切な人。
昔も、今も、そしておそらくこの先も変わることなく。
「全く、君はいつもそうなんだから。少しくらい惜しんでよ」
彼女は笑ったようだった。
自分のこの性格を彼女は誰より分かっている。
「幸せに」
「お前も」
外は明るいまま、どうやら天気雨が降っているようだった。
笑う彼女が泣いて見えたのは、だからきっとそのせいだろう。




