表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/47

第9章 「君は何者なの?困惑不可避の事情聴取」

「ハッ!勿論であります、長堀つるみ上級大佐!士官学校を卒業して間もない若輩の身とは申せ、自分も誉れ高き帝国軍人の端くれ。多少の出来事では動じぬ肝っ玉は、持ち合わせているつもりであります!」

 自信満々な様子で応じる園里香(そのりか)少尉に気を良くしたのか、さっきまで真顔だった長堀つるみ上級大佐の口元には、小さな笑みが浮かんでいたんだ。

「にわかには信じがたい事である事は、重々承知の上なのですが…」

 このように切り出した長堀つるみ上級大佐は、静かに、そして理路整然と、園里香少尉の置かれている現状を説明したんだ。

 園里香少尉は、干支が軽く6周してしまう位の未来の日本にタイムスリップをしてしまった事。

 ここは日本軍の施設ではなくて、人類防衛機構極東支部近畿ブロック堺県第2支局だって事。

 私達3人は、人類防衛機構に所属している特命遊撃士だって事。

 私達が所属している人類防衛機構は、園少尉の所属していた日本軍女子特務戦隊の後継組織で、テロリストや未確認生物などの様々な脅威から人類社会を守るための、国際的防衛組織である事。

 そして何より、園里香少尉の味方である事。

 具体的には、こういう諸々の事象をね。


 目を大きく見開いたり、ハッと息を呑んだり、驚きを隠せない反応を見せる園少尉だったけど、長堀上級大佐の説明が頭に入っている事だけは確かみたいだね。

「率直に申し上げますと、驚きであります…しかしながら、長堀つるみ上級大佐や和歌浦マリナ少佐が嘘をおっしゃっているとは、とても思えません。」

 長堀つるみ上級大佐の説明を聞き終えるや、京花ちゃんに酷似した青髪の少女は、溜め息混じりに呟いたんだ。

「それに、こちらの時代では根なし草である自分の身元を、保証して下さるのです。ここで自分が人類防衛機構の皆様方を信頼せねば、礼を失するという物です。そんな事は、誉れ高き帝国軍人の名折れであります。この園里香少尉、一切の腹蔵なく御答えする所存であります!」

 こうして園里香少尉の信頼を勝ち取った私達なんだけど、その後に園少尉へ行った質問のほとんどは、単なる事実確認になっちゃったんだよね。

 何しろ、大日本帝国陸軍女子特務戦隊に所属していた園里香少尉の個人情報は、その後継組織である人類防衛機構のデータベースに登録されているんだから。

 生年月日も陸軍女子士官学校の卒業年度も、何もかもデータ通りだったよ。

 そんなデータベースの情報確認だけど、それなりに収穫もあったんだ。


-園里香少尉の直属の上官は、天王寺ルナ大佐。

 この事実を確認出来た時、長堀つるみ上級大佐と私達は、この第2支局に配属されている、ある人物に思い至ったんだ。

 特命機動隊江坂分隊副官、天王寺ハルカ上級曹長その人にね。

 照合してみたら、ドンピシャだったよ。

 園里香少尉の上官である天王寺ルナ大佐は、天王寺ハルカ上級曹長の御先祖様だったんだ。

 念には念を入れて、射撃訓練の真っ最中だった天王寺上級曹長に出頭要請を出して、応接室で首実検をやってみたの。

 そうしたら…

「御懐かしい天王寺ルナ大佐!天王寺ルナ大佐も、この時代にお越しだったのでありますね!」

 園里香少尉ったら感極まっちゃったのか、応接室に入室した天王寺ハルカ上級曹長に抱きついたばかりか、頬擦りまでする始末だよ。

 どうやら天王寺家の御先祖様と子孫も、思わず知人が見間違えてしまう程に瓜二つなんだね。

「こ…これは何の冗談でありますか、枚方京花少佐?何故に旧日本軍の軍装を御召しに?しかも、私の事を大佐などと…?」

 天王寺ハルカ上級曹長ったら、園里香少尉を京花ちゃんと完全に混同しちゃっているね。

 それにしても、ただただ困惑するばかりの天王寺ハルカ上級曹長には、悪い事をしちゃったかな。

 バラエティー番組のドッキリ企画よろしく、種明かしを行ったんだけど、園少尉も天王寺上級曹長も、ひどく驚いていたっけ。

 それでも、「他ならぬ枚方少佐の御先祖様にして、我が先祖の戦友です!この天王寺ハルカ上級曹長、微力ながらもお力添え致す所存であります!」と言うあたりは、さすがは義に厚い防人の乙女だね。

 それ以外に分かった事として特筆すべきは、次の2点かな。

 1つ目は、園里香少尉は修文4年の9月15日からやってきたって事。

 この当時、日本軍の技術研究所で研究されていた生体強化ナノマシンは、実用化直前の最終試験段階に入っていたみたい。

 園里香少尉にナノマシンによる改造手術の痕跡がなかった理由が、これではっきりしたね。

 この予期せぬタイムスリップがなければ、園少尉もナノマシンで生体強化改造されていたんだ。

 2つ目は、園少尉の所属していた第4師団隷下女子特務戦隊もまた、例の特殊な移動パターンを繰り返す珪素獣と戦っていて、その戦闘中に空間の裂け目に飲み込まれたって事。

 あの珪素獣、もしかしたら時空間移動能力を持っているのかも知れないね。

 いずれにせよ、京花ちゃんを探す重要な手掛かりになりそうだよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 首実験なんて単語、初めて知りました(゜Д゜;) そして……京花少佐だけでなくハルカ上級曹長も、ご先祖様にそっくしなんだねぇ(゜Д゜;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ