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第11章 「時空を超えたメッセージ」

「大変だよ、2人とも!京花ちゃんから着信があったんだ!」

 思いもよらぬ京花ちゃんからの着信に、里香ちゃんに手渡したスマホを私は高々と掲げていたんだ。

「ああっ!御無体な、吹田千里准佐!」

 そのせいで、園里香(そのりか)少尉には少し迷惑をかけちゃったね。

 いきなりグイっと腕を引っ張られたんだもの、そりゃ驚くよ。

「お京からか、ちさ!」

「それは本当ですか、千里さん?!」

 少佐の2人が見せた反応は、単なる驚きだけではなかったんだ。

 期待と疑念。

 その2つの感情が、絶妙なバランスでブレンドされていたの。

 何しろ、さっきまで何回やっても京花ちゃんと繋がらなかったのに、いきなり向こうから掛かってきたんだからね。

「あの、吹田千里准佐…この場合、どうすればよろしいのでしょうか?」

 生まれて初めて手にしたスマートフォンが告げる着信メッセージに、どうして良いのか分からず、園少尉は困惑して立ち尽くしている。

「そのままにしておいて下さい、園里香少尉!」

 私は園里香少尉に預けたままで、スマホを通話モードに切り替えたの。

 当然だけど、京花ちゃんの声が応接室にいる人全員に聞こえるよう、設定を弄った上でね。

 何故、園里香少尉にスマホを持たせたままだったか、不思議に思うよね。

 理由はこの時の私にも分からないけど、「そうした方が良い。」って直感が働いたんだ。


 そしてそれは、後々の事を考えたら正解だったね。

「聞こえる、京花ちゃん?私だよ、吹田千里!」

『千里ちゃん!?良かった、やっと通じたんだ!どこにいるの?』

 私の呼び掛けに応じたスマホからの声は、紛れもなく京花ちゃんの物だった。

 普段と別段変わらない、明朗快活な声。

 それを聞いて取り敢えず、京花ちゃんが元気そうだって事は確認出来たから、私達もホッと胸を撫で下ろしたんだ。

「第2支局にある、警務隊の応接室だよ。マリナちゃんと英里奈ちゃんも一緒。京花ちゃんこそ、今何処にいるの?今まで連絡も寄越さないでさ…」

 私の問い掛けに、スマホの向こうにいる京花ちゃんの声色が、少し変化した。

『こっちの台詞だよ、それは!何度も通話したけど繋がらないし、メールを送っても梨の礫だし…私がどれだけ心細かったか…』

 ムッとした声が聞こえたのは一瞬。

 次の瞬間には、今にも泣き出しそうな情けない声が聞こえてきたので、思わず吹き出しそうになっちゃったよ。

「あっ…、ホントだ!今更になって、京花ちゃんからのメールと着信履歴が、物凄い件数で来てるよ…」

 画面の隅の方に表示されたアイコンを目にして、私はスマホのメールアプリを起動しようと手を伸ばしたんだけど…

「えっ…?」

 その手はマリナちゃんに掴まれたんだ。

「こっちが何度試しても通じなかった、お京との通話だ。再び通じる保証は何処にもない。私と英里のスマホで試してみよう。」

 実に冷静な判断だよ、マリナちゃん。


 ところが…

「あれ、おかしいな…お京からの着信履歴なんて、見当たらないぞ?」

(わたくし)もです、マリナさん…」

 自分のスマホを取り出した少佐2人は、腑に落ちない顔をしながら履歴を検索していたんだ。

「えっ、来てないの…?じゃあ、どうして私のスマホにだけ、京花ちゃんから電話が掛かってきたの?」

 皆目見当もつかない珍事だけど、必ず理由はあるはずだよね。

 英里奈ちゃんとマリナちゃんのスマホにはメールすら届かず、私のスマホとだけ通話出来た理由が。

「恐れながら申し上げます!生駒英里奈少佐と和歌浦マリナ少佐のスマホを、園里香少尉に触れて頂いてはいかがでしょうか?」

 応接室中の視線は、おずおずと挙手する天王寺ハルカ上級曹長に集中した。

「ええ…取り敢えず、園里香少尉…私のスマホは右手でお持ち頂いて、空いた左手でマリナちゃんと英里奈ちゃんのスマホを触れて頂けますかね。」

「こ…こうでありますか、吹田千里准佐?」

 天王寺上級曹長の進言通りに行動してみると、2人のスマホの液晶画面に、共通のメッセージが表示されたんだ。

 要するに、「枚方京花さんからのメールを受信しました。」と、「枚方京花さんから着信がありました。」ってメッセージがね。

「おっ、ホントだ…!お京のヤツったら、ひっきりなしにメールと着信を送ってやがるよ!」

「おっしゃる通りです、マリナさん…しかしながら、天王寺ハルカ上級曹長…貴官はどのようにして、この答えに辿り着かれたのですか?」

 スマホの確認をした2人は、何とも不思議そうな表情を浮かべながら、美しい茶髪をポニーテールに結い上げた上級曹長の顔を注視している。

「恐れながら…これは単なる思いつきであります!園里香少尉がお持ちだった吹田千里准佐のスマホだけ、枚方京花少佐と連絡が取れた。それで、『もしや』と思ったのでありますが…」

 そう言い終えると、天王寺ハルカ上級曹長もまた、「何が何だか、サッパリ分からない。」とばかりに、首を傾げて考え込んでしまったんだ。

 取り敢えず、この答えを考えるのは後回しにして、今は京花ちゃんの居所を探る事の方が先決だね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 量子もつれならぬ遺伝子もつれみたいな現象でも起こったのか(゜Д゜;)
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