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警察官への扉  作者: 佐助
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警察官への扉〜心たちとの交流⑳〜


最近、親の愛情に飢えた「心」たちがやってくる。家庭環境、育ち方は様々であるが、皆満たされない思いを吐き出していく。

また、プライベートでも心に大きな荷物を抱えている者もいる。


警視庁警察官になる為の応援だけではなく、まず満たされない思いを受け止める事も私達の役割となった。

心に大きな荷物を抱えていては、警視庁警察官への扉を開ける事が困難になってしまう。


思いを受け止め、心の荷物を降ろさせる事も大切にしていこうと妻と話し合った。


そんな矢先、幼少から愛情に満たされない「心」がやってきた。


水谷慎一郎 25歳 千葉県在住

私立大学経済学部卒業

地元の中小企業勤務

警視庁6回受験経験あり。すべて二次で不合格となる。


両親は中学校教師。現在父親は校長。母親は教頭を務めている。


満たされない表情を読み取った妻が、家庭環境や育った過程を彼に聞いた。


彼は堰を切ったように話し始め、私達はまず黙って話を聞いた。

「多忙な両親に代わって、祖父母に育てられました。両親の帰りはいつも深夜になり、放ったらかしで話もろくに聞いてもらえませんでした」


入学式、卒業式、運動会、授業参観はすべて祖父母が出席し、両親は一度も来てくれなかったという。


「放っておかれた割には、進路の事は自由にさせてもらえなかったんです」と悔しそうに言った。


「ずいぶん淋しい思いをしてきたんだね。でも大学もきちんと卒業して就職も出来た。道を外れず、真っ直ぐ生きてこれて良かった。大したものだよ。君の中で何か心の支えになったものはあるのかな?」


「はい。僕は中学2年生まで誰にも褒められずに生きてきました。だからうれしいという感情もありませんでした。それが、中学2年の夏、東京へ遊びに行った時、駅でビジネスバッグを拾って近くの交番に届けたんです。中には重要な書類が入っていて、警察官が『よく届けてくれたね。悪い人に拾われていたら悪用されてしまうところだった。君が拾ってくれて良かったよ。ありがとう』と褒めてくれたんです。初めて人にそれも警察官に褒めてもらえて、うれしいという感情が初めて湧いてきて、自分が肯定されているように思えたんです」

「警察官に褒めてもらえた事が心の支えになり、警視庁警察官を目指すきっかけになりました」


「警察官との良い出会いがあったんだね」人を感動させる警察官のはなしが聞けると私もうれしく思う。


「でも二次試験が毎回どうしても受からないんです。絶対に警視庁警察官になりたいのに…」と悔しそうに言った。


「自信の無さが表面に出ているんじゃないのかな?」と妻が珍しく言った。

妻にはが彼の姿が自信なさげに見えるらしい。


「きっと小さい時からの満たされない思いが奥底にあって、自己肯定感がまだ低いんだと思うの。あなたは今警視庁警察官になろうと頑張っている。小さい頃の不安だった自分に

向かって『辛かったね。でももう大丈夫だよ。自分は警視庁警察官になろうと頑張っているからね。何も心配する事はないよ』って言ってあげて。子どもの頃の自分を癒すときっと変わるから」と彼に言うと、彼はワッと泣き出した。


「僕は今まで泣く事すら出来ませんでした。泣いても誰も受け止めてくれなかった!」と思いを吐き出した。

誰にも淋しいとも言えず、泣く事すら出来ずにいたなんて…。胸が締め付けられる思いになった。

妻も涙ぐんでいる。


彼が落ち着くまでしばらく待った。


「今涙が流れて、色んなものが流れ出たような感じがします。気持ちがスッキリしました」と彼がここへ来て初めて笑顔を見せた。


「良かった。今までの君とは卒業だね。この瞬間から生まれ変わって、警視庁警察官合格を目指そうよ」


「はい!そうします。力が湧いてきました。良い意味で親を見返してやろうという気になってきました。自分の力で、警視庁警察官になったんだと言ってやりたいです!」


「顔つきが来た時と全然違うよ」と妻が言った。


「本当ですか?」


「うん。本当に変わったよ。今の顔つきなら自信に満ちているから面接も合格できるよ!」


「ありがとうございます!褒められたの二度目です。すごくうれしい!

ここに来ると背中を押してもらえると聞いて来たんです。それだけじゃなくて、小さい頃の事も聞いてもらえて、長年の苦しみが楽になりました。この苦しみを取らないといつまでも合格出来ないところでした」


「うん。それは良かった。良い方向に風が吹き始めたんだよ。この事から良い事になる。大丈夫!警視庁警察官になると覚悟を決めるんだ。これからの人生良い事になると言葉に出すといい。そうすれば人生が良い方向に流れるよ」


「はい。二次対策もしっかりして、自信を持って面接を受けます。これからの人生良い事になります!ありがとうございました!」

と言霊を発して彼は帰って行った。


顔つきが変わって、自信を持って帰ってくれる事が何よりうれしい。


彼が警視庁警察官になったら、きっと彼と同じような子どもに夢と希望を与えられる警察官になってくれる事だろう。


つづく。。。
















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