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警察官への扉  作者: 佐助
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警察官への扉〜心たちとの交流⑥〜


私が住む地方もすっかり秋が深まり、朝晩の冷え込みが強くなってきた。


夕食を終えてテレビを見ようとソファに腰掛けると、妻が「どうぞ」と「心」を招き入れた。

スーツを着た真面目そうな青年らしい。

「夜遅くにすみません」

申し訳なさそうに言った。


「大丈夫だよ。君は警視庁警察官志望でよかったかな?」

「はい。そうです!」


広瀬雅史 19歳 山口県在住

下北商業高校卒業

山口県警、広島県警 共に

一次合格、二次不合格

警視庁受験経験無し


高校卒業後は、アルバイトをしながら公務員専門学校に通っている。

両親は警察官になる事を応援してくれており、天皇陛下のお膝元で首都東京を守る警視庁警察官になる事を勧めてくれたそうだ。


「警察官を志すきっかけはあったのかな?」

「はい。あります。僕が中学生の頃、弟が自転車にひき逃げされた事がありました。

その時、僕も現場にいて、逃げた事に怒りがこみ上げてきて犯人を追いかけて捕まえたんです。中学生だったし、どうしたら良いかわからなかったので、すぐ近くにいた大人に助けを求めて協力してもらったんです」

「小さい時から、自分の力でどうしようも出来ない時は、近くにいる大人に助けを求めなさい。声を上げなさいと母親から言われてきました」

「30代くらいの男性が快く助けてくださって、すぐ110番通報して

警察官が駆けつけてくれました。その時警察官に、諦めずに勇気を出して捕まえた事、大人に助けを求めた事も良かったとほめてもらいました」

「助けてくださった男性からも、君は将来警察官になれるよ」と言われた事から、警察官になる夢が芽生え始めたんです」と彼は一気に語った。


「中学生ですでに警察官のような動きができていて、すごいじゃないか!県警の面接でもきちんとこの出来事を言えたのかな?」


「はい。自信を持って伝えたのですが、面接官の反応が、「それがどうしたんだ」という感じで想定外の対応だったんです」

「圧迫面接はあるとは聞いていたのですが、自分の受け答えにも問題があったかもしれません。でも、ずっと心の中で温めてきたこの出来事を否定されたような気がして…」

「不合格になった後も、何が悪かったのかを反省して次に生かさないといけないのは分かるんです。でも、あの時にほめてくれた警察官や、一緒に助けてくれた男性が警察官へと背中を押してくれた事まで軽んじられてる気がして…。それから県警は自分の行くところではないと思い始めました」


「それでも警察官への夢は諦められず、警視庁へという思いになったんだね」


「はい。でも軽率に警視庁へと思ったわけではないです。

警視庁の事を深く調べていくうちに、警視庁創設者の川路大警視の『聲なきに聞き、形無きにみる』という名言に感銘を受けたんです。

そして、首都警察にしか出来ない事がたくさんある事を知りました。

自分も警視庁警察官になりたい!と強く思ってここに来たんです!」彼は一点の曇りもない目で私を見た。

実際には見えないが、彼の心の熱さは伝わってきた。

私は黙ってうなづき、続けて話を聞いた。

「両親も共に警視庁に対して感銘を受けていて、警視庁ならお前にとっても良い事になると思う。警察官になるなら警視庁だと言ってくれています」

「特に母が言う言葉は昔からなぜか不思議とそうなる事があるので、警視庁警察官になるのは自分にとって良い事になると思ってます」と言い切った。


「中学生の頃の経験を生かして、被害者の心に寄り添える事と、犯罪者を絶対に許さない!と両方向から強く思える事が自分の強みです。とプラスして面接で言えば君の思いは、今度こそ伝わると思うよ」

「不合格になったことが糧となっているはずだから、一段階成長して警視庁採用試験に臨めるよ」

それだけを彼に伝えた。


「そうですね!不合格も無意味ではなかったんですね」

「そうだよ。物事には全て意味があるんだから」

彼は腑に落ちたようにうなづいた。


「合格したらご両親もものすごく喜ぶね。私達も涙を流してよろこんだから」

「両親と喜ぶ姿をいつも思い描いて頑張ります」

「うん。頑張って!大丈夫。きっと良い事になる」


「強く前を向くことが出来るようになりました。ありがとうございました!」と明るい表情で帰って行った。


つづく。。。





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