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警察官への扉  作者: 佐助
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警察官への扉〜元警察官との出会い〜


久々に新橋の日本酒と魚の美味い店で、妻と冷酒を楽しんだ。


縁のあった「心」たちが警視庁警察官採用試験に合格する事を祈って、予祝も兼ねて乾杯する事にした。

「警視庁警察官採用試験最終合格おめでとう!乾杯!」

クイッと一杯目を飲み干した。

「あー美味い!最高!」

その時、妻が一点を見つめている。

(誰かと話してるな)こういう時は必ず目に見えない誰かと会話をしているのだ。


「兄さん警察官か?って言ってる」

厳しい顔をした60前後の男性のようだ。

「よく間違われるんですけど、警察官ではないですが、他官庁の公安職に就いてます」

「そうか 俺と同じ匂いがしたんだよ。やっぱりな」

「警察官をされていたんですか?」

「そう。警視庁警察官だったんだ。

生安の刑事を長年勤めたよ」


彼は 高橋武文 山形県出身。59歳

5年前に他界。

「そうだったんですか!私の息子も警視庁警察官採用試験に合格して、来年警視庁に入庁するんですよ」

「おお!そうか!それはおめでとう。大卒の卒業見込み?」

「そうです。」

「俺は高卒で3回目で合格したんだ。3回目は絶対受かる!と覚悟を決めたら受かったんだ。あの時の喜びは忘れられないよ」

(やはり覚悟を決めるんだな)

「警視庁は厳しい世界だったが、志しの高い仲間が多くて幸せだった。俺はこの仕事が心底好きだったよ」

警部まで昇進したが、退職を目前にして病に倒れたようだ。

「もっと体をいたわっていればと思うよ。遅いけどな」

時々、この新橋に出没して楽しい酒を酌み交わす人達を見ているそうだ。


「幽霊だから話しかけても当然無視されるんだけど、だれか話せる人がいるんじゃないかって根気よく話しかけててさ、やっと話せる人に出会ったよ。いやぁ たまげた!」とうれしそうだ。

「時々見える人も極たまにいるんだけどね、びっくりして逃げてしまうんだ。奥さんは平気で話せるからたまげたよ。」

本当に、たまげたらしい。

「これがうちの日常なんで、私ももうすっかり慣れました。それに亡くなられた方から学ぶことが多くて楽しいくらいなんです」

「それなら良かった」厳しい顔をほころばせて優しい笑みを浮かべた。


刑事時代のエピソード等が聞けて楽しい時間となった。


「夫婦水入らずの所を長居して悪かったな。そろそろおいとまするわ」


「息子さんに言って欲しい事があるんだ。警察学校は厳しいと言う人もいるが、大丈夫。お前ならやり遂げられると言って送り出してやってくれ」

「そして、誰が何と言おうと、警視庁警察官に選ばれた息子を育てたんだと言う事を2人には誇りに思って欲しい」

「はい。ありがとうこざいます」

妻は涙してうなづいている。

私もジーンと胸が熱くなった。


そして彼は「じゃあ」と敬礼をして店の外へと消えて行った。


偶然出会った見えない元警視庁警察官。息子の大先輩にあたる方だ。

最後に残して下さった言葉を必ず息子にかけて送り出してやろう。

そして、警視庁警察官に選ばれた息子を育てたという誇りを胸に。

これからの人生を歩んでいこうと思った。



つづく。。。










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