聖獣と狂った男とその母親
※胸糞表現があります。残酷な描写が多々あります。苦手な方はバック推奨
少女が15歳ほどになった時だろうか、手に火と刃物を持った人間の男たちが現れた。
男たちのリーダーと思われる若者はおかしなやつだった。
紅葉狩りだと言いながら、村人たちを殺そうとし始めたのだ。
俺は急いで、村人たちを守る。
すると男たちのリーダー以外が彼を守るために俺を術で拘束した。
おれは叫んだ。
「やめてくれ!なんでこんなことをするんだ!」
と。
リーダーは変な狂ったような笑い声で笑いながら
「紅葉狩りだよ?ほら、土地が真っ赤に染まったろ?」
と。
彼はおかしい。
狂っている。
そう感じて、軽蔑した視線を彼にやる。
俺を拘束している術者を見れば、彼らも同じようにリーダーであるはずの彼を軽蔑した視線で見ている。
が、彼らはリーダーを止めはしないようだ。
彼はおもむろに近くにいた村人の首を刎ねた。
「やめろ!!!」
と言ったが、リーダーは止めない。
どんどん村人を殺し始める。
その魔の手がいつもおれのそばにいる彼女にまで届きそうになった時、傷つくのも承知で彼女の前に飛び出した。
結果は、俺が血を吹き出し、彼女には傷は無い。
俺の血を浴びた若者は嬉しそうに笑い始めた。
「この血はなんだ、すばらしい。すばらしいぞ!!!」
と言って、俺の体を何度も切りつけ、血をすする。
彼女に逃げるように言い、必死に術者を退け、傷を負う。
彼女は逃がせたが、俺はだいぶ弱ってしまった。
噴出した血を術者は集め始める。
その間も若者は俺の血を俺自身の肌からすする。
なんだ、若者にみえたこいつは、もう、人間じゃなくなっていたのか。
と認識を改める。
若者は私の血で若返っていた。
既に狂っていたから、人間性さえ元々ない。
動けなくなったおれを拘束したまま、彼らの地所に連れて行かれた。
小さくなった私はその後、壺に閉じ込められ、何年も眠りにつくことになった。
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壺からでられたのは、若者の母親が壺を開けたからだった。
壺からフラフラになりながら、出た私は、彼女から大まかのことを聞いた。
若者は、彼女の第一子で、王になるはずの子供だったらしい。
しかし、我儘し放題で育ったあの子は、城の外に出ては残酷なことばかりを繰り返し、どうしようかと思っていたところに村ひとつ丸ごと滅ぼしたと連絡が入ったらしい。
すぐに対処しようとしたが、彼は人間と思えないような力を発揮し、それらを退けてしまっていたと。
遠方にいた第二王子を第一王子にし、狂った人間として、実の息子(本当の第一王子)を処理し、やっと壺を開けることができたそうだ。
「人間はわけがわからないな。」
とおれが呟くと彼女は
「すまない。本当に申し訳なく思う。」
と悲しそうに言った。
おれは、フラフラではあるがスッと立ち上がり
「私は戻る。」
というと彼女は術者に、指示を送った。
途端にまた、拘束される。
「な、なんでだ?お前は、一体何をしたいんだ?」
と言うと彼女はすまないすまないと何度もつぶやきながら、手を合わせてくる。
「だから、なんで?なにがそうさせる?」
封じていた壺のふたが開き、また俺は封印されそうになっている。
「貴方の血も肉も人間にとって、魅力あるものだ。浴びたものは力が湧き、無尽蔵の魔力と体力を手に入れられる。だから、駄目だ。戻ったところで貴方は人間にとっての害になる。」
「だから、俺を封じるのか?自分勝手すぎないか?」
「すまない。すまない。すまない。」
彼女は何度も謝ってくる。
「もういい。もう、いいよ。しばらくは封じられてやる。お前とお前の子孫が、俺のことを壺ごと守るなら、別にいい。でも、たまに話しかけてくれ。壺越しで聞こえないかもしれないが。」
というと彼女は目一杯に涙を溜めて、一気に流し始めた。
「本当に申し訳ない。ごめん。。すまない。そして、ありがとう。」