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かろりに会いに  作者: かろりんぺ
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本来の自分

「いらっしゃいませ」

 feelingの店内。あたしはお客様に声をかけ、また店内を歩いて洋服をチェックした。

 男女のカップルが話しながら女性の服を選んでいる。

「これどうかな?」

「え? いいんじゃない?」

 そんな会話が聞こえてくる。最近彼と出かけたのはいつだろう。ご飯くらいか。牛丼が食べたいと言ってあたしも一緒に行ったときか。洋服の買い物はめっきり友達とばっかり行っている。

「俺ちょっとその辺ブラブラしてるから」

 5分もしないうちに男性のほうがそう言って店を出ていった。女性はなにも言わず洋服を選んでいる。

 あたしは思い出して小さく笑った。ラーンの村でターバンを買ったときのことを。

 あたしはかろりのかぶっているターバンが欲しいと、一緒に防具屋に行った。かろりはたまにこっちを見てウロウロしていた。あたしはどの色がいいか選ぶのにけっこう時間がかかっちゃったけど、つかず離れずでなんかやっていた。

 迷惑かけちゃったかな。

 仕事中にそんなことを思い出した。


 帰宅し、今日もいつものルーティンをこなす。食事を作り、お風呂を入れ、彼ともそんなに会話することもなく過ごす。

 でも、なんだか少しだけ楽しみがある。トラあな。

 彼もソファに寝ころんで目をつぶり、トラあなをしている。あたしは彼と一緒にプレイはしない。しようとも言ってこなかったし。

 スマホに右手をかざす。


 ラーンの村であたしは教会に行くか迷っていた。21:00を過ぎてもまだかろりはログインしていなかった。

 ポケットに手をつっこみ、ササラの塩が入った瓶を見つめる。

 かろりは現実ではなにをしている人なんだろう。本当に25歳だったりして。仕事が忙しいのかな?

「こんにちは」

 かろりの声だった。いきなりでびっくりしたけど、少し安心もした。

「こんにちは」

 元気な自分の声に驚いた。かろりはササラ海岸にいる。あたしは走った。


 いたいた。

 白い砂浜の向こうにかろりが立っている。

「お~い」

 走るのを早めた。砂にもつれて転びそうになるけどそんなことはどうでもいい。ま~たあんな顔で突っ立って。とかろりを見てると笑っちゃう。

 かろりの前であたしは特異な顔をして言った。

「では、ササラの塩はどこにあるでしょう?」

 そしたらかろりは困った顔をした。そんなかろりの顔を見るのも好き。

「降参です」

「早いね。少しは考えなさいよ。まったく。正解はジャガジャガジャガージャン。この砂全部がササラの塩なんです。残念でした」

 勝った、と思った。さて、かろりはこのあとどうするかな?


 ササラタコがかろりに無理難題を押し付けてきた。あたしは黙って彼を見ていた。彼の性格が分かるかもしれない。血気盛んに戦いを挑むのか?

 でも、かろりはその場に突っ立っていた。

 やるじゃん。

 ササラタコに戦いを挑んだプレイヤーたちは、何人もその場に倒れ消えていったのに。

 かろり戦わずにササラの塩を手に入れた。そしてあたしは、そんな彼の行動に安堵したし安心もした。

 一緒に村に歩きながら、自分のことじゃないのにうれしくなっていた。なんでだろ。いろいろ考えるのはやめよっと。

「お腹空いた」

 と言ってみた。

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