第2話:合体ロボット!
「なぁ、俺ずっと思ってた事があるんだよ。ちょっと聞いてくれる?」
「なんだい、藪から棒に。一つ目小僧は何を言いたいんだい?」
「シャー。まぁ聞いてやるから言ってみろよ」
一つ目小僧がろくろ首(女性)とみずち(蛇の妖怪)に何やら言いたい事がある様です。
「俺さ、いつも思うのは、『鵺』さんって、絶対!どう考えても合体ロボットだと思うんだよね!」
「……」
「……」
「そう思わない?」
ブチッ!×2
「「アホかぁぁぁ!!!」」(ろくろ首&みずち)
「ヒッ!」
「シャー!何が『そう思わない?(`・ω・´)キリッ』…だよ!脳みそ腐ってんじゃねーの?」
「そうだよ、あんた…!鵺さんは私らよりも有名な大妖だよ?なのに、何でいきなり合体ロボットなんて言い出すんだい!」
変な事を言い出した一つ目小僧に対して、みずちとろくろ首が窘めています。
「急に怒るなよー。びっくりしたじゃねーかよ」
「そりゃあんたが急にアホな事を言うからだよ…」
ろくろ首はあきれ顔です。
「でもよ?よく考えて欲しいんだよ。みずち、鵺さんの特徴言ってみ?」
「シャー。そりゃあ、夜に不気味な声で鳴いて、人間を病気にさせる能力を持った大妖怪だろ?」
「ちっげぇよ!見た目の方だよ!」
「シャー。そりゃあ、猿の顔で」
「うんうん」
「狸の体で」
「そうそう」
「虎の手足で」
「良いよー」
「尻尾が蛇の大妖怪だろ?」
「それ!」
「うん?」
「いやいや、顔が猿で胴体が狸で手足が虎で尻尾が蛇って色々混ざり過ぎじゃねえかよ!」
「「いや…だって妖怪だし…」」
「だから、俺は多分合体した姿がそれで、実は猿と狸と虎と蛇がそれぞれバラバラで独立してるんじゃないかと思うんだよ!」
「「……はぁ?」」
「猿の妖怪がリーダーで、狸の妖怪と虎の妖怪と蛇の妖怪がいて、真の力を出す時は合体するんだよ!」
熱く語る一つ目小僧に、冷めた目で見るろくろ首とみずち。
「ほら!そう考えたら合体ロボットみたいに思えてくるだろ?」
「あんた…本物のアホな子だねぇ…」
「シャー…バカだバカだとは思っていたけど、ここまで残念なヤツだったとは…」
可哀想なモノを見る目で一つ目小僧を見るろくろ首とみずち。
「な!なんだよ?何がダメなんだよ?」
「「全部」」
「ええー…?」
「あんたさぁ、そもそも妖怪にロボットって言う方がおかしいんだよ…」
「シャー。妖怪の中にはもっと変なのいっぱいいるだろ?アレくらい普通じゃん」
確かに、妖怪には提灯お化けとか、人面犬とかいますから、鵺が特筆して変わっている訳ではない…のでしょうかね?
「でも、俺の親戚ののっぺらぼうも似たような事を言ってたし」
「シャー。お前の親戚、目が足りないだけじゃなくて顔のパーツが全部無いのか…」
「俺の親戚の顔のことは別にいいだろ!?そこじゃなくて、のっぺらぼうが『最近、不動明王がSFに思える』って言ってたんだよ」
「ん?SFってサイエンス・フィクションのことかい?一体どういうことだい?」
ろくろ首が食いついた様ですね。
「確か…『不動明王って魔と煩悩を断ち切る役割を持ってるやろ?だから、普段から俺達妖怪がやり過ぎたら取り締まる仕事もしてるやん?憤怒をもって迷える衆生を救うと言われているだけあって、めちゃくちゃ怖いねん』とか言ってて…」
「まぁ、確かに怖いけど…でもそれとSFに何の関係があるんだい?」
「で、その後に『なんか怒った顔が怖いって気にしてるみたいでなぁ。この前不動明王に怒られた時に、怖い顔にならないように真顔だったんやで?威圧感半端ないのに真顔で俺をシバきにくるのってどんだけ怖いか想像できるか?』って」
「それでそれで?(ドキドキ)」
「シャー。早く続きを言えよ!(ドキドキ)」
「で、『真顔で俺を追い詰めるガタイの良いムキムキの不動明王。俺が暴れても無表情で俺を追い詰める不動明王。…コレって、まさにター◯ネーターじゃね?』って」
「「あっはっは!確かに!」」
「だろ?俺もそう思ったんだよ!」
「シャー。俺、頭の中であの音楽が流れながら真顔で佇むの不動明王が目に浮かぶんだけどw」
全員が大爆笑です。
「だから、鵺さんも合体ロボットでも良いんじゃないかなぁって」
「「それは無い!」」
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とあるお寺で。
「へぇーっくしょい!!!くそっ!もしかして誰かがまた俺の顔が怖いとか噂してんじゃねーのか?」
と言うぼやきがあったとかなかったとか。
おしまい




