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エピローグ

「…思えばあのときがお父さんの事を初めて『男の人』として意識したときだったかもしれないわね」

 由紀子が美由に言う。

「ふーん。で、それからどうなったの?」

「どう、って…。お父さんが卒業したあともお母さんは高校に通いながら、PBを続けて行ったのよ。でもお父さんと知り合ってからだいぶ変わったわね」

「変わったって?」

「高校を卒業しても、お父さんは何かと言うとお母さんと組むようになったのよ。もしかしたらお父さん、お母さんのことを信頼するようになったのかもね」

「じゃあお母さんは?」

「…お母さんの場合はちょっと違っていたかもしれないわね」

「違っていた?」

「うん。お父さんと一緒に二人でPBを続けていって、お母さんが高校を卒業した頃には、お父さんのことを単なるパートナーじゃなくて、それを超える存在に思えてきたのよ」

「…もしかして、お父さんに恋をするようになったの?」

「そうかもね」

 美由の問いに由紀子はあっさりと答えた。

「それで、二十歳を過ぎた頃にはだんだんとお父さんと結婚したいな、って思うようになったの。実はね、お母さんの両親、特に父親なんかその頃になると、いつお父さんと結婚するんだ、って事あるごとに聞いてくるようになったのよ」

 それを聞いた美由が思わず苦笑する。

「…あのお祖父ちゃん、そういう気の早いところがあるから。もうお母さんがお父さんと結婚するんだ、と思い込んでたのね」

「かもしれないわね。でも、お父さんはお母さんの気持ちを知ってたのか知らなかったのかわからなかったけれど、なかなか言い出さなくて」

「お父さんのほうの両親が反対でもしてたの?」

「それはないと思うわ。お父さんと知り合ってまもなくの頃にお父さんの両親に挨拶に行ったし、お父さんと組むようになってからは、時々お父さんの家に行ってたから。結婚して間もなくの頃にお父さんの両親がお母さんに言ったんだけれど、向こうの両親もお父さんとお母さんが結婚するんじゃないか、と感じていたんだけれど、お父さんがなかなか言い出さないからどうしたのか、って思っていたんだって」

「…じゃあ、お父さん、なかなかその気にならなかったのかな?」

「さあ、それはどうかしらね。それで、結局結婚したのって、お父さんと知り合ってから9年も後の話だったのよ」

 そう、義和と由紀子が結婚したのは時代が昭和から平成に変わった1989年の6月だから、最初に知り合った1980年5月から9年ちょっとかかっていたのだった。

「逆に言うと9年もよく待てたんじゃない?」

「まあ、お父さんと高校からずっとやっていたからね。だから正直言って、お父さんと結婚したときも余り結婚したんだ、って実感がわかなかったのも事実だったわね」

「ふーん…」

「でもお母さん、お父さんと結婚してよかったと思う」

「どうして?」

「だって、美由や和也が生まれたんですもの。お母さん、二人のような子供ができてよかったと思うし、二人の母親になることができてよかったと思うわ」

「…そうだよね。あたしもお母さんのような母親がいてよかったと思うわ」

 そう言うと美由は由紀子に微笑みかけた。


(おわり)


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