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プロローグ

 2007年のある日の夜。

「ただいま」

 玄関のドアが開き、右手に剣を持ち、胸からペンダントのように鏡をぶら下げた少女が入ってきた。

「おかえり、美由」

 リビングルームにいた女性が少女に声を掛ける。

 少女は靴を脱いで家に上がるとリビングルームに入る。

「…? 何見てるの、お母さん」

 少女がリビングルームのテーブルに座っている女性に声を掛ける。

 そう、その女性はなにやらアルバムのようなものを見ていたのだった。

「ん? お母さんが高校のころのアルバムが見つかったから懐かしくて見てたの」

「え、お母さんの高校のころの写真? あたしも見てみたいな」

 そう言うとその少女――瀬川美由――は女性――彼女の母親である瀬川由紀子――の隣に座った。

 テーブルの上には数冊のアルバムが乗っていた。

「でもお母さん、どうして高校のころのアルバムなんか持ってたの?」

「お父さんと結婚したときに実家から持ってきていたのよ」

「ふーん…」

 そう言うと美由は彼女の一番近くにあったアルバムをとると、その表紙をめくる。

「これ、お母さん?」

 美由が一番初めのページにある一枚の写真を指差す。

「1980(昭和55)年4月 高校入学」と余白に書かれたその写真は、家の玄関の前でセーラー服を着た一人の少女が写っていた。

「そう、お母さんよ。確か高校の入学式があった日に家の前でお父さん――美由のお祖父ちゃんね――に写真を撮ってもらったのよ。…それにしても、こうして見ると本当に美由ってお母さんの高校生のころにそっくりね」

 美由は小さいころからずっと髪を両方でお団子にまとめた所謂「ツインシニヨン」と言う髪型にしているのだが(そのため美由が通っている高校の男子の一部からはゲーム「ストリートファイター」シリーズのキャラに似ている、ということで彼女は「春麗」と呼ばれることがあるらしい)、確かにそのお団子頭を解いておろし、セーラー服を着れば自分の母親である由紀子に似ているであろうことは美由も想像できた。

「それにしても、スカート長いわね…」

 写真の由紀子が穿いているセーラー服のスカートがひざが隠れるくらいの長さだったのを見て美由が呟いた。

「…あら、お母さんのころはこれが普通だったのよ。それにお母さんが高校生だったころは、所謂不良、っていうのは制服の裾やスカートをそれ以上に長くするものだったのよ。だから、今の美由みたく制服のスカートを膝上まで短くする、なんていうのは想像すらできなかったんだから」

 由紀子の言葉を聞いて思わず苦笑する美由。

 そう、美由は「ある一点」を除けば、着ている制服のスカートを膝上(というよりも股下)十数センチ、というくらいに短くし、紺のハイソックスを履いて登校している、といういまどきのその辺にいる普通の女子高校生だったのだ。


 それからは由紀子の学校行事のたびに、クラスメイトや教師にでも撮ってもらったのか、彼女の高校生時代の写真がアルバムに飾られていた。

 そして何ページか進んだときだった。

「…これ、お父さんと写ってるの?」

 美由が一枚の写真を指差す。

「1981(昭和56)年1月 二人で校門の前で」と書かれた写真は校門の前で学ランを着た一人の少年――美由の父親であり、由紀子の夫である瀬川義和の高校生だった頃だが――とセーラー服姿の由紀子が並んで写っていた写真だった。

 よく見ると義和が由紀子の肩に手を回している。

「ああ、そうだ。確かお父さん、この年の3月に卒業控えていたから『高校生活最後の思い出に』ってことで二人で校門の前で写真撮ったんだ。そう言えば、もうこの頃には二人で組んでファントムバスターやっていたのよね…」

 そう、かつて由紀子は義和と二人で高校生だった頃から「ファントムバスター(PB)」と呼ばれる妖魔退治をしていたのだった。

 やがて二人は結婚し、美由と和也という二人の子宝に恵まれ、由紀子は和也が小学校に入学するのに合わせて息子の世話をするため、そしてその3年後に義和は美由のPBとしての成長を見届けると、彼女に後を継がせるために相次いでPBを引退したのだった。

 そして美由はそういう二人の間に生まれた子ということでPBとしての能力を二人から受け継いでおり、父親から受け継いだ神剣と母親から受け継いだ神鏡を使い、16歳という年齢で現役のPBとして日々妖魔たちとの戦いを続けている少女であり、そしてまた美由の弟の和也も10歳と言う年齢ながらPBとしての力に目覚めつつある時期だったのだ。


「…ねえ、お母さん」

「なに?」

「お母さんとお父さんが高校の頃からPBやってて、結局それがきっかけとなって結婚したのは知ってるけど、何でお父さんと知り合って、二人でPBやろう、って決めたの?」

「そうね。あれはお母さんが高校に入学してしばらく経ったある日のことだったわね…」


(本編に続く)


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