貴方は神を信じますか?
弥竹が聞いた「何処まで行かれたのです? 」俺は瞼を閉じたまま「死者の道ってのがある所」応えてから、ゆっくりと瞼を開いた「それで 、何方かに会われたのですか? 」弥竹は聞いた「あぁ、会ったよ… 舞と白いローブの男に… 」弥竹は興味津々な顔をして「それから?」俺は躰を起こして、今起きた事を大まかに話した。弥竹は神妙な顔をして「 谷口君、実はですね、私 … あの … お恥ずかしい話しなのですが、仏教だけ では無く、あらゆる宗教と教義を学ばなければと考えておりまして、仏教の教えに疑いを持った事は1度もありません!併し、霊の中には仏教を知らない霊も、余多いる事は事実なのです!先日も、お世話先の寺に、海外旅行中から幽霊が見えたと話され 、帰国後に体調を崩された女性が訪れましたが、昇って頂くのに難儀致しました。心を救う教えは元は一つですが、人々の生まれた国 ・時代・風習等・様々な事柄が絡み合い、今日に至っています。私は大学を卒業後、世界を巡ろうと考えています。世界中に散らばる教えを 、私の人生をかけて学び、真に衆生を救える人間になりたいと考えているのです!」弥竹は空を見上げ熱く語った「それで … イエスが出て来たって訳か?」弥竹はブルブルと首を横に振り「とんでもありません!私は、不動明王様と天使様にお願いしたのです!洗面所の方から 、不穏な気配を感じましたから「安心なさい」そう伝えられましたので 、先に葬儀場へと向かったのです。でも何故イエス様が … イエス様は何か話されたのですか?」俺は頷き「あぁ 、手を貸せと言われたよ、何の事だか、サッパリ解んね ぇ…」弥竹はキラキラと目を輝かせて「でも 、光栄な事ですよ!もしかしたら 谷口君は、神職に就かれるのかも知れませんね!」弥竹は、何だか、とても嬉しそうに微笑んだ。貴方は、神を信じますか?俺が?嘘だろ?あんな歴史を見た後だ、人嫌いになりそうだ、弥竹には、言えなかったけれど…「直ちゃん ! 」叔母さんに呼ばれ、俺と弥竹は火葬場へ戻った。火葬を終え、拾骨、その名の通り 、骨を拾う… 嫌な風習だと思った。羞恥心とかではなくて、空虚過ぎて、涙も忘れてしまった。拾骨を終え、再び、バスに揺られ、葬儀場へと戻る、式場では、還骨法要と繰上初七日法要を行う、今は昔と違い、親が死んでも、会社に勤めていると、1週間程度の休みが精一杯で、後は、歯車の一部みたいに、働かなければならない世の中だから 、故人をゆっくり弔ってもいられないのだろうし、葬儀に参列して貰って、更に初七日じゃ、親戚に、面倒を掛け過ぎると言う考えなんだろうな 、人が死んでも、簡略化 … 思っても仕方がないんだろうけど 、全てが虚しくて、切ないよな。葬儀が全て終わり、母さんと二人、親戚を見送る「 気を落とさないで、元気だしてね」心優しい親戚の皆さんは、口々にそう言う… 無理でしょ!悪気の無い言葉だと言うのは解るけれど 、刺みたいに心に突き刺さる、何とも、反抗的な俺の思考が嫌になった。勿論 、差し支えの無い返事しか、しないけれど 。全ての親戚を、見送り終えると、住職が 、俺達を車で、自宅へ送 ってくれた「弥竹をお願いします」そう言い、俺達を降ろすと、住職は寺へと帰って行った 。自宅に入ると同時に、数日間の疲れがどっと出たのか、とにかく眠りたかった。俺は弥竹と母さんに「悪いけど、俺、寝るわ」声だけ掛けて2階の部屋へ向かった、弥竹に悪いとは思ったけれど 、眠気が強くて、どうしようも無かった。2階の部屋に、赤いドレスの女が現れた怖さもあり、万が一に備え、何時でも逃げ出せるように、部屋のドアは開けておいた。その他は何も考えられず、ベ ッドに倒れ込んだ。夢の中、案の定と言うべきか 、陽気なあの音楽が聞こえてくる「 もう、うんざりなんですけど!」俺は言葉を吐き捨てると頭を抱え、耳を塞ぎ、その場に踞 った。陽気な音楽がピタリと止まる、暫くそのままで居たけれど、余りの静けさに戸惑い、恐る恐る辺りを見渡した 。ふわふわと、真綿のように柔らかそうな光が俺を取り巻く、赤、青、黄色に緑「綺麗な光だな …」色とりどりの光達に誘われるまま 、俺の足が動き出す「待ってくれよ~何処行くんだ~?」意識はあるけれどハッキリしているとは言えない、とにかく 、光を見ていたら頭がボーっとして、だけど、気分は最高!とにかく気持ちいいんだ「お~い !待 ってよ~待ってくれよ~ ハハハ!」何故か とても楽しくて嫌な事全部忘れそうだ 。光達が俺を導いたのは、馬車や白馬が楽しそうに廻るメリーゴ ーランド、俺が近付くと廻るのを止め、乗 ってくれよと言わんばかりに一斉に正面を向いた「そうかぁ~俺に乗って欲しいのかぁ~じゃぁ、君にするよぉ~」俺が茶色の馬の背に股がると、メリ ーゴーランドはゆっくりと廻り始めた 。よくスケートリンクで耳にする優雅なワルツが 流れ、王族にでもなったかのような気分になり、とにかく笑っていた「アハハ !楽しいなぁ~!ハハハ!」5週目を過ぎると、音楽が変わった 。始めは、気に止めもしかった、ゆったりした始まりだったし、けれど、曲に合わせ茶色の馬がクルリと1回転をして、他の乗り物も同じように、クルリと回転した「あれ~?この曲~なんだ っけ~?」曲に合わせ、クルンと回転を始めて3週目、俺の躰が吐き気を催した「 ち ょっ!止めて!」吐き気と伴に、俺の正気が戻る「う っ…」クルンと乗り物が回転する度に、骸骨が1人、又1人と、空間を引き裂くように現れ、ストンと乗り物に座 っていた「あわわわ … 今度は骸骨ですか!もぉ~いい加減、恐ろしいよ!」骸骨はガタカタ 、ガチガチと歯や関節を鳴らし、威嚇しているのか、笑っているのか、耳障りな音を聴かせた「 もぉー!怖いだろう普通に!何で俺なの ? 俺が何したの?」またか …と思う気持ちで、全身、脱力感に包まれた。 俺は、半ばヤケクソになり、茶色の馬の背に突っ伏し、頭を抱えた「アハハハ!クスクス…」聞き覚えのある高笑い、あいつだ!あの赤いドレスの女 … 何度か聞いたあの女の声だ…「 ダーリン 、耳ガイインダネェ~♪」俺の心が読めるのか?艶めいた声が響く「今度は何だよ…つか、何で、俺がダーリンで、お前のターゲ ットなんだよ !」ストンと俺の前の白馬に、何かが座った 。嫌な予感を抱きながらも、顔を上げると、やはり予感通り、赤いドレスの女が、白馬に後ろ向きに座り、ニタニタと俺を見て笑っていた「答えろよ !何で俺に衝き纏う!」女はニタァ~っと笑い「 惚 ・レ・タ ・カ・ラ♪」精一杯の可愛いらしさなのだろうが、肉片パ ッチワークの頬と、ぶら下がる眼球では、強烈な悪寒が、走るだけだ「ふざけるなよ!俺に何して欲しいんだよ !どうしろって?知りもしない女を弔えってか ?」女はじぃっと俺を見つめ「永遠ニ …苦シンデ… 私ノヨウニ …」その言葉は、凍りつく程悲しくて、女が泣いているようにさえ感じた「こんな所で、あんた相手に何だけれど、先ずはこの 、クルンクルン回るの止めてくれない?」俺は試しに言ってみた。女はアッサリ「コノ曲ノ題名ハ ? 」俺にそう聞いた「この曲は… 確か … 魔笛!モ ーツァルトだろ? 」答えると、女が指をパチンッと鳴らした「うわっ!」女の指先は 、千切れて飛んだが、茶馬のクルンと回る動きは止まった。女は、悲しそうに俯いたのだが、プラプラと遊ぶ肉片が生々しくて 、尚更怖い… 併し 、チャンスかも知れないと 、俺は女と話す決心をした「何で…死んだんだ… 病気?」女は俯いたまま「 覚エテイルノハ、硫酸ヲ顔ニ…ソレカラ殺サレタ … 」もっと詳しく聞かなければと「誰に?硫酸?医療関係者か?科学者?」女は首を横に振り「 知ラナイ… 人魚好キノ変態…」ドキンと心臓が波打つ、その言葉と同じ事を舞が言っていた「そいつに、殺されたんだな 、じゃ 、列車への投身自殺は ?」女はモジモジしながら「アレハ…ハプニング… 単ナル事故 …」何故、重なる?俺は更に女に聞いた「 何故、俺の所に?何故、俺を知 っている ? 」女は血の涙を流しながら「私ヲ見ツケテ … ソシタラ … 話シテアゲル」悲しそうに笑いフッと消えた。女が消えると 、メリーゴ ーランドは、ガラガラと崩れ落ち、俺は 、暗闇へ吸い込まれた、心臓が浮き、墜ちるという感覚が全身に伝わる「… … シ…テ」「 ダ…カ…」暗闇を滑りながら、誰かの言葉の欠片が聞こえた。その声は、とても悲しそうで、俺の心が抉られるように、傷んだ。堕ちて行く、暗闇の先に箱 ? 箱形の何かが浮かび、血の涙が箱を覆った「私ヲ …見ツケテ …」赤いドレスの女の言葉が響き、血で覆われた箱は消えた「そこは、何処なんだ?な ぁ… 教えてくれよ …」暗闇をどれだけ堕ちただろう、突然 、白く眩しい光に包まれ、意識が消えた。どれ程過ぎたのか 、ボヤケて良く見えないが、人影が揺れ声が聞こえる「谷口君!」「直也 !直也 !」 あぁ… 弥竹と母さんの声だ … 二人して 、何を騒いでいるんだか … 俺はゆ っくりと瞼を開いた「 闇…ここ何処 ?」自分の居場所が全く解らない「もぉ~何しているの直也 !隠れんぼする年じゃないでし ょ ! 人騒がせね、出て来なさい! 」母さんが、何時になくキレていた。弥竹は、苦笑いを浮かべていた 、えっ?何で2人とも顔だけなんだ ?一瞬、心臓が踊るが 、直ぐに2人正座していると気づいた 。何でっ?キョロキ ョロと辺りを確認すると、どうやら俺は、四角い隙間に居るようで、何処かは解らないけれど 、取り敢えず脱出しなければと、母さんと弥竹の方へ、躰をずらしながら進み、窮屈な中 、何とか脱出に成功すると、母さんが呆れ顔で「直也、心配させないでよ、何でベッドの下に居るの? 捜索願い出しちゃったわよ~この2日間ずっと其処にいたの ? 」俺には解らず応えられなかった 「まぁいいわ 、取り敢えず警察に電話して来るわね 、弥竹君ごめんね …」母さんは1階へと降りて行 った 。俺が弥竹を見ると、弥竹はゴクンッと生唾を飲み「随分と窶れていますが 、今度はどちらへ?」弥竹は手鏡をスッと差し出した。手鏡で自分を映すとまるで別人のようで、ゲ ッソリと頬は痩けて目は窪み、顔は血の気を失ったように青白い、まるでゾンビだ「 誰これ?はぁ…もう嫌だ !今度はメリーゴ ーランドに乗 ってきたよ、骸骨だらけの、ホネホネロック、でっ、赤いドレスの女が現れたよ … 弥竹、俺、何時から 此処に?」弥竹は顔を引き吊らせ「はい、葬儀後、この部屋で眠られてから行方不明でした。実はこの場所、何度か探したのですが … その時は居ませんでした… 今度は、ホネホネですか… 」弥竹は冷や汗を流した「 あ ぁ…ホネホネ… 」弥竹と話しながら、そう言えば 、葬儀の時に塚田が渡してくれた情報の事を思い出し 、目を通していなかったと、ペラペラと読み始めた「どうしたのです?」俺が真剣に読み始めたので、弥竹も覗き込んで言った「うん ?あぁ…思いだして…」塚田を含め 、オカ研の皆には頭が下がる、守谷総合病院の周辺や駅で、見掛けた不審者の情報だけでは無くて、きちんと調べて書いてある。何していたとか 、何処へ行ったか、見掛けただけでは終らない、塚田からのプレゼントに涙が込み上げ「ありがとう、塚田 、オカ研の皆さん … 」感極まる俺に、弥竹が「谷口君 !この人 … 」俺は、弥竹が指差した箇所を目で追った。雨も降っていないのに 、ポンチョの雨合羽を来た男を見た!駅のトイレで用をたしていると、後ろを通り洋式トイレへ入る、トイレの中で、ゴソゴソ何かしていて、時々「 ヒッヒ ッ ! 」と笑っていた、気味が悪くなった目撃者は 、用を終えサッサとトイレを出た。時間は22時過ぎだ った 。弥竹は「すみません…何故か気にな ってしまって …」俺は「この人とすれ違ったよ、電車降りて病院に向かう途中で肩ぶつけたんだ、顔とか見えなかったけれど 、確かに変だな って思ったよ、でも、警察じ ゃないし職質も出来ないだろ… 」嫌な予感がして、直ぐに携帯を取り、塚田に電話を掛けた「はい … あっ、谷口君 ! 」俺は、塚田を友達だと思ってる、ちょっとオカルト好きだけれど 、優しくて良い奴だ 、だから 、もし、犯人なんか追っていて逆恨みされ、被害に合いでもしたらと思い「塚田、葬儀来てくれて 、ありがとう 、今、目を通したよ … あのさ 、有難いって思うんだけど 、頼むから妹の事、深入りしないで欲しい 、相手は人殺しだぜ!塚田や皆に、何かあ ったら … 」塚田は「解っているよ、谷口君 、僕達だって考えているよ、危険な真似はしない、安心して、只ですね、 気になる事があって … うちのサークルの佐久田さんが 、渡した情報の112pに書いてある、雨合羽のポンチョ男を 、小学生の時、見たって言 っているんですよ、聞いたら小6の頃で、同級生と面白半分、探検気分で、裏野ドリ ームランドに行 ったそうなんですよ 、其所で見たらしいのですが、7年位前だし、同一人物とは言えないけれど … その人、生臭かったらしいです 、あ っ、余計な事言って、すみません。谷口君、僕達もう少し調べたら 、警察に、僕達の集めた情報を、提出するつもりだから 、でも、絶対!捕まえようよね !」塚田は 、そう話してくれた。




