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退屈だからと不自由のなさに憂いたら、異世界に落とされた件  作者: カフェラテ
序章 その者、異世界に立つ
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第00話 その者、異世界に立つ

初めまして、今回から小説を投稿させて頂きますカフェラテと申す者で御座います。

一身上の都合、投稿ペースが不定期になりますが、何卒宜しくお願い致します。

それと、此処の文章可笑しいよ、や、もう少し表現が、こういう女の子、魔法とかどうよ、と言う指摘やご鞭撻があればどうぞ。出来る限りご返答致そうかと思います。

それでは、長々と申し訳御座いませんでした。

どうぞ。

 何もない。


 そう、何もないのだ。


 同じ事を繰り返すだけ、淡々と。

 唯々、宛もなく同じ事を繰り返すだけ。

 夢もなければ、理想もない。

 兎角、金を稼ぐ。

 それしか頭になかった。

 まぁ、稼いだところで使い道がないのだからどうしようもないのだが。

 その内欲しい物が、やりたい事が現れるだろう。

 その時に使えば良い。

 そうして、そんな事を考えていたら、三年が経った。

 今も猶、何もない。


 あるのは、虚無感だけだ。


 空っぽの自分を満たすものなんてない。

 

 幼い頃に抱いた夢は、理想は、泡沫に消えた。

 中学に上がり、高校生となって、普通の生活が、何不自由ない生活が出来ればそれで良いだなんて語ったが、今にして思えば、どうしようもない。

 正に、後悔先に立たず、だ。

 

 ぐるぐるとした、自分自身ですらどう形容したら良いのか分からない情が蟠り、ヘドロのように心に溜まる。

 いつ頃だったのだろうか、ぬかるみにハマってしまったのは――。


 ***


 落ちていた。


 唐突だが、今、俺は落ちていた。

 ひたすらに。

 どうしてこうなったのか、自分ですら分からない。

 理解が及ばない。

 確か、先頭で自らの悔みを胸中で明かし語り、ベッドで横たわっていたところ、唐突に丁度自分が寝ていた部分に大穴が開いたのだ。

 そうして浮遊感を全身に感じながら暗中を突き抜け、今俺は空を飛んでいた。

 ああいや、落ちていた。

 何不自由ない生活をしている癖に不満を漏らしたからだろうか。

 その不満を聞いてしまった仏様か神様かが、俺を殺そうとしているのかもしれない。

 だとするなら、私情極まりないじゃないか。

(そも、仏だの神だのってのは人の願いを聞き届けるもんだろうが。何人の愚痴に聞き耳立ててんだよド畜生)

 胸中で怒りを募らせながら、そこでふと考える。


(――にしては、うーん……、なんで俺こんなに冷静なんだ?)


 そう、現在進行形で落ち続けているというのに、妙に俺は落ち着いていた。

 まるで、潰れた蛙のように地に叩き付けられるのではなく、助かる事が解っているかのように……。


 ***


(……本当に助かると思わなかったわ)


 落ち続け、ついに地面との距離が三メートルを切った途端の事、落下速度が急激に遅くなったのだ。

 パラシュートでも装備しているかのように緩やかな落下速度となった俺は、無事街の路地裏に降り立つ事に成功した。

 が、

「ここどこだ……?」

 東京? と口にして、思わず笑ってしまった。

(な訳ねえよな)

 何故なら――画像でしか見た事はないのだが――高さで言えば劣るかも知れないが、その荘厳さと横の広さならば優に東京タワーを超えるだろう建造物が見えたからである。

(外観がサン・ピエトロ大聖堂なんだよなぁ)

 凄えな、とわずかに見上げるようにして息を漏らす。

 半分が他の建物で隠れてしまっているものの、逆に半分であの大きさだ。もっと近くに寄って見たら、どれだけ大きく、壮観なのだろうか。

 期待に胸を膨らませながら、俺はふと考えた。

 落ち着けている原因や、こんなところで落とした理由などどうせ分からないのだ。ならば思う存分観光でもしようじゃないか、と。

(ここが地球じゃない事なんて、なんとなく察せてるしな)

 あの建物とか、歩いてる人とかで、と付け足し、苦笑する。

 羽織っているのがパーカーで本当に良かったと思う。

 何故なら、フードで頭や顔を隠す事が出来るからだ。

(俺以外に〝人〟が居るなら外そうかね)

 そう結論を出し、パーカーのフードを目元深くまで被った俺は、弾む心に歩調を合わせ、いざ街の中へと踏み込んで行くのだった。

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